静電気の基礎知識と「ライデン瓶・エレキテル・百人おどし」の歴史

ケン博士
サイエンストレーナーの桑子研です。

ここでは静電気をもった皆さんに、静電気についての基礎知識や、ライデン瓶・エレキテル・百人おどしの歴史について紹介します。

静電気はなぜ起こるの?

物質にエネルギーが与えられたときに、目には見えませんがその物質から電子が飛び出すことがあります。その飛び出しやすさは、その物質のもつ仕事関数W[J]というものによります。電子1つを飛び出させるために必要な最も低いエネルギーを仕事関数Wといいます。

図 仕事関数

物質によって仕事関数Wは様々に異なります。

図 物質と仕事関数

同じエネルギーが与えられた場合に、仕事関数が大きい物質は、仕事関数の小さな物質よりも電子が飛び出しにくいという性質があります。

図 同じエネルギーを与えられた場合の物質と仕事関数

これらの仕事関数が大きい物質と小さい物質をお互いこすり合わせてエネルギーを与えるとと、仕事関数の小さな物質から大きな物質に向かって電子が移動します(接触させるだけで電荷の移動が起こるのですが(接触帯電)、こすると接触する面が大きくなるため、電荷がより多く移動します。)。

図 物質から物質への電子の移動

 電子はマイナスの電気をもっており、電子を失った物質は正の電気を、移動先の物質は負の電気を帯びます(帯電)。

図 物質と帯電

※1 なお摩擦による帯電現象は複雑で、接触帯電の他にも、圧力や熱などの効果による帯電などもある複雑な現象であることが知られています。より詳しくはこちらを御覧ください

この物質によって正に帯電しやすいもの、負に帯電しやすいものをまとめたのが帯電列です。

この表は左側は仕事関数の大きな物質、右側は仕事関数の小さな物質です。静電気を帯びた物体は、同種の電気は反発し、異種の電気は引き合うという性質があります。

図 静電気の種類

 普段何気なく生活をしていても、ウールとアクリルの服の組み合わせによる服と服のこすれ、絨毯と足の間の摩擦などで、私達は静電気を帯びていきます。夏のように湿度があれば、体にたまった電気はうまく逃げていきますが、乾燥した冬の間は、とくに静電気を持ちやすくなります。また現代人はゴム底の靴をはいており、ゴムは電気を流しにくい性質があるため、もともと体に電気がたまりやすいという特徴もあります。

そのようなきっかけで静電気を帯びてしまい、例えば体がマイナスの静電気を大量に帯びてしまった時に、ドアノブなどを触ろうとすると、

 

図 ドアノブを触ろうとする

ドアノブの表面にある電子が、手の電子から静電気力を受けて反対側に移動をして、体に近いドアノブの場所が正に帯電します。するとドアノブのプラスの電気にひかれて指先に電子が集まってきます。

図 指先にたまる電気

手を近づけていきドアノブと手の間の電場がある一定の値(1mあたり300万ボルト)を超えると、指先から電子が空気中に飛び出し、ドアノブに向かって移動します。

図 電子の移動

 このときに空気分子にも衝突し、分子から電子を弾き飛ばして帯電させてしまうことによって、一気にたくさんの電子がなだれを起こすように指から放出されます。これが放電現象です。

図 放電現象

パチっと音がなって、電気が体に流れて筋肉が収縮し、電流の量によりますが、痛みを伴うなど、不快な思いをします。

これは体に静電気を蓄えて、スイッチにさわろうとしたときの放電の様子
この距離の放電であれば10万ボルト(ピカチュー並)くらいであると考えられます。

 なお放電のさいにパチっと音がしますが、この音は電流が空気を極めて短い時間で熱するため、それが圧力の波、音となって、パチっと聞こえます。また火花が現れますが、この光は空気中で生まれたイオンが空気中の電子と結びつくときに、そのエネルギーの一部が放出されて光るとのことです。

参考 ウォルタールーウィン『これが物理学だ』(講談社)

 なおドアノブなどを触ったときに、痛みを感じるのは、神経に電気が流れて筋肉が収縮するため。電圧は髙いですが、電流はわずかなので、体に流れても問題はありません。

図 田中隆二・市川健二『産業安全研究所安全資料RIIS-SD-70-1』(労働省産業安全研究所)

 なおコンセントなどは電圧は100Vと今回に比べて小さいですが、漏電などの際に流れる電流は大きいため危険です。

このような急激な放電により不快感を感じないためには、壁など金属ではないものを一度触って自分にたまった電気を放電してから、ドアノブなどの金属に触れれば、大丈夫です。なお電気を逃がすときには、指などとがらせてふれないで、手のひら全体で触れると放電が起きにくくなります。静電気が苦手な人は覚えておくといいですね。

静電気が放電されるときの電圧は何ボルト?

なお私達がドアノブなどで嫌な思いをする静電気ですが、「電磁気学現象露論」(竹山説三著)によれば、1mあたり300万ボルトの電圧がかかると放電が起こるそうです。ドアノブに触ったときにビリ!っとくるとき、指とドアノブの間の1cmくらいの間で放電をしたとすると、電圧はおよそ3万ボルトです(3mmくらいの場合はおよそ1万ボルトくらいの電圧がかかっています)。日常生活では1mmの放電も多いので、その場合はだいたい3000Vくらいでしょう。

 なおドアノブの形状やその日の湿度によっても大きく変化するものと思われますが、基本的にはドアノブなどの物に静電気がたまるのではなく、私達が静電気をためてしまっています。ドアノブは悪くないのですね。

ライデン瓶・エレキテル・百人おどしの歴史的な経緯

江戸時代に電気をショートして見せていたのが、あの有名な江戸のレオナルド・ダ・ビンチと言われている平賀源内先生です。百人おどしをやっていた(解説したのは)、電気学の祖と言われる橋本宗吉(はしもとそうきち)先生。ライデン瓶・エレキテル・百人おどしについて興味をもったので、本やwikiなどでいろいろと調べていました。簡単にまとめたのでもし興味のある方は御覧ください。

ライデン瓶…電気をためることができる装置。仕組みはコンデンサーと同じで、2つの向かい合わせた金属の間に電気を溜める。手作りの方法はこちらにまとめました

エレキテル…オランダで発明されたもので、ハンドルを回すことによって静電気おこして、内部にあるライデン瓶にためる装置。江戸時代に平賀源内が復元して、ショーなどでつかったので一躍有名になりました。

『日本の伝記 平賀源内』(集英社)より引用

百人おどし…百人おどしは、手をつないだ複数の人の中に、ライデン瓶でためた電気を流すという実験です。江戸時代の蘭学者の橋本宗吉先生が、エレキテル用いて様々な電気に関する実験を行いましたが、この実験もその一つで、橋本宗吉著の『阿蘭陀始制エレキテル究理原』にて紹介されています。寺子屋で「百人おどし」という実験を行っていたと、に記されています。

図は橋本宗吉著の『阿蘭陀始制エレキテル究理原』
『大人の科学マガジンvol22』(学研)P24,25より引用

平賀源内先生は研究者というよりは発明家やプロデューサーという感じで、エレキテルを復元はしたものの、その仕組を詳しく調べたりするということはしなかったそうで、主に見世物として紹介していたようです。それに対して橋本宗吉先生は、研究者といった感じで、電気体験を奇術や見世物のような扱いをしてほしくないという思いがあって、
百人おどしの実験をしていたようです。しかし寺子屋で行っていた、手をつないだ生徒たちに電気ショックを与える実験(おそらく百人おどし?)を行ったさいに、親が妖術だと騒ぎ出してしまって、せっかく書いた本『阿蘭陀始制エレキテル究理原』は幕府が出版を禁止してしまったようです。

なお当時の平賀源内先生の作ったエレキテルの性能はおよそ3000ボルトくらいで、橋本宗吉先生のものは8000ボルトくらい出たのではないかとのこと。

※1 静電気のABC

 

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