ピカチューを超えろ!静電気の正体と1万ボルトの火花を観察するライデン瓶実験
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
冬の乾燥した日、ドアノブに手を伸ばした瞬間、「ビリッ!」と痛い思いをしたことはありませんか?あの小さな火花、実は指とドアノブの間を電気が飛び越える「放電」という現象なんです。驚くべきことに、あの瞬間に発生している電圧は、想像をはるかに超えています。
静電気の力は「万」ボルト級!
もし、指とドアノブの間にわずか 1cm のすき間があったとすると、放電が起こるにはなんと 約3万ボルト もの電圧が必要です。私たちの家庭に来ているコンセントが100Vですから、その 300倍 ものすさまじい電圧!静電気の力の強さがわかりますね。
「そんな高電圧で、なぜ感電死しないの?」と不思議に思いませんか? それは、電圧は高くても、流れる「電流」の量がごくわずかで、時間も一瞬だからなんです。たとえ勢いよく水が噴き出すホース(高電圧)でも、その量がコップ一杯分(少ない電流)なら、大したことにはならない、というイメージですね。
では、もし放電の距離が 3mm ほどだったらどうでしょう? この場合の電圧は 約1万ボルト になります。これでもコンセントの100倍です! (ちなみに、ピカチュウの技「10万ボルト」と比べると、やっと 10分の1 のエネルギーです。さすがですね!)
今回の実験では、この日常にあふれる 1万ボルト の静電気を、安全に発生させて放電させる様子を撮影しました。小さな「雷」が落ちる瞬間を、ぜひ動画でご覧ください!
おうちで挑戦!1万ボルトの放電観察
動画で見た放電を、自分でも観察してみましょう。ここでは「ライデン瓶」という装置を使います。これは、18世紀に発明された、世界で最初の「電気をためる装置(コンデンサ)」なんですよ。
用意するもの
ライデン瓶(作り方はこちらを参考)、アルミ箔つき鉛筆、セロテープ、風船、タオル
方法
1 ライデン瓶を作ります(作り方はこちらを参考)
2 ライデン瓶に風船とタオルで静電気をおこしてためましょう。ため方もこちらを参考にしてください。(風船でこすって集めた電気を、瓶の中に閉じ込めていくイメージです!)
3 アルミ箔を帯にして鉛筆にセロテープではりつけます。
4 内側のアルミ箔と外側のアルミ箔に、鉛筆についたアルミ箔を渡して回路を作ります。ゆっくりゆっくり近づけていくと・・・火花が見えます!


仕組み:なぜ電気がたまり、光るのか?
ライデン瓶は、内側と外側のアルミ箔で電気(マイナスの電気を持つ電子)を挟み込む「電気のサンドイッチ」のような構造をしています。風船でこすって集めた電子を、どんどん内側にためていくのです。

静電気をできるだけためて、1万ボルトくらいたまった状態にします。この状態で、鉛筆のアルミ箔を使って、たまった内側のアルミ箔と外側のアルミ箔を接続すると、「コロナ放電」がおきて、ピカッと光ります。

これは数万ボルトの高い電圧によって、電子が空気中に飛び出し、普段は電気を通さない空気を無理やり「イオン化」させる(電気を通す状態に変える)ことで起こります。一度道ができると、そこにさらに多くの電子がなだれ込む、まさに「雪崩のような現象」が発生し、強い光(火花)として私たちの目に見えるのです。
科学の歴史につながる実験
このライデン瓶、実は科学の歴史において非常に重要な役割を果たしました。 ライデンびんの歴史的な背景についてはこちらにまとめました。ご覧ください。
ライデンびんを使うと、こんな面白い実験が!!
このライデンびんを使うと、「百人脅し」(みんなで手をつないで静電気を体験する、昔ながらの科学実験です!)を始め、さまざまな面白実験ができます。これらの実験は、なんと広瀬すずさん・鈴木亮平さん・やす子さん・チョコレートプラネッツの長田さん・松尾さん等とテレビ番組にて行った実験も含まれます。今も昔も、電気の力は人々を驚かせ、楽しませてくれるんですね! 詳しくはこちらをどうぞ。
ドアノブの「ビリッ!」も、見方を変えれば1万ボルトの小さな雷。科学の目で見ると、日常は不思議と驚きに満ちていますよ!

※ なお、静電気発生装置(バンデグラフ)を用いた実験については、必ず専門家の方の立ち合いのもと行ってください。お気をつけてお試しください。また静電気実験に関するご依頼(実験教室やTV監修・出演等)についてはこちらからお願いします。
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