静電気は10,000V!でも安全?手作りライデン瓶の静電容量を測ってみるとわかった「楽しい」の限界

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

プラスチックコップで作った #ライデン瓶 の電気容量を調べてみました

「バチッ!」 冬、乾燥した日にドアノブに触れると、指先に走る鋭い痛み。あの「静電気」です。 一瞬で消えてしまう、あの「バチッ!」を、もし瓶の中に捕まえて、貯めておくことができたら…?

そんな夢のような装置が、今から250年以上前に発明された「ライデン瓶」です。 今回は、プラスチックコップとアルミホイルで簡単に作れるこの「ライデン瓶」に、一体どれくらいの静電気を貯められるのか? そして、貯めた電気は触っても安全なのか? その「電気容量」と「エネルギー」を本気で調べてみました!

1 比べてみよう!「古いライデン瓶」

まずは、数年前に作った古いライデン瓶の登場です。見た目からして、ちょっとくたびれていますね。アルミホイルも少しボロボロ。年月の重みを感じます。この古いライデン瓶の「電気容量」を測ってみます。電気容量とは、どれだけ電気を溜め込めるか、という「器の大きさ」を示す数値です。

測定結果は…182pF(ピコファラド)でした。

2 ピカピカの「新しいライデン瓶」の実力は?

続いて、新しく作ったピカピカのライデン瓶!見た目は古いものとほぼ同じサイズです。さあ、結果はどうでしょうか?

なんと電気容量は419pF! 古いものと比べて、2倍以上の数値を記録しました!

なぜ、同じ材料・同じサイズなのに、こんなに違うのでしょうか?ライデン瓶の性能は、内側と外側のアルミホイルが、プラスチックコップ(絶縁体)を挟んでどれだけ「近く」に「広く」対面しているかで決まります。おそらく、古い瓶はアルミホイルが浮いたり、シワが寄ったりして、効率が悪くなっていたのですね。アルミホイルの貼り方の丁寧さや、コップ表面の状態が、性能を大きく左右するようです。ものづくりって、こういうところに面白さがあります!

「バチッ!」の強さを計算!どれくらいのエネルギー?

さて、静電気の電圧は、ときに10,000ボルト(V)にも達します。家庭用のコンセントが100Vですから、とんでもない高電圧です。(ただし、流れる電流が極めて少ないので、すぐに放電されてしまいます)。

この電圧を使って、先ほどの「電気容量(pF)」から、ライデン瓶にどれくらいの電気エネルギー(J:ジュール)がたまるのか、計算してみました。
(※計算式: エネルギー(J) = 1/2 × 電気容量(F) × 電圧(V)² )

ライデン瓶(古)

およそ9mJ(ミリジュール)

ライデン瓶(新)

およそ20mJ(ミリジュール)

やはり、新しく丁寧に作ったライデン瓶は、古いものの2倍以上のエネルギーを蓄えられることがわかりました!

【重要】「20mJ」は安全なエネルギーなのか?

計算上、最大20mJのエネルギーがたまることがわかりました。では、この「20mJ」というエネルギーは、実験として体験しても安全なのでしょうか?

実は、「楽しい実験で終わらせるための安全な静電エネルギー」は、だいたい20mJ程度とされています。(※1) つまり、古いライデン瓶も新しいライデン瓶も、どちらも実験にはちょうどいいエネルギー量だということがわかりました!これなら「バチッ!」と来ても、驚きはしますが安全に楽しめそうですね。

「商用交流で2mA、1秒程度なら絶対安全」を1つの拠り所として教育的なパルス電撃のエネルギー限界を求めてみると、

人体の抵抗を5kΩとすると、

W=Pt=(2×10^(-3))^2×5000=0.02J=20mJ

となる。

左巻健男、滝川洋二『たのしくわかる物理実験辞典』(東京書籍,1988)

(引用の通り、この20mJという値は、人体に流れてもチクチクする程度で絶対安全とされる「2mA(ミリアンペア)」を基準に計算されたものです。)

ただし、実際に人体に電流が流れた時の感じ方(「チクチクする」のか「痛い!」のか)は、大人と子供、男子と女子でも違いますし、その日の湿度などのコンディションにも大きく左右されます。 必ず教員など、知識のある大人の監督のもとで実験し、安全なレベルを確かめてから行うのが良いですね。

田中隆二・市川健二『産業安全研究所安全資料RIIS-SD-70-1』(労働省産業安全研究所)(※1)より

#感電体験 をする実験をするときには、ペースメーカーをいれている生徒や外傷などの怪我をしている生徒を除くなどの注意の他、このように電気容量にも気をつけたいものです。

静電気発生マシーン(バンデグラフ)を使うと、こんな面白い実験が!!

手作りのライデン瓶も楽しいですが、もっとパワフルな静電気を安全に発生させる「バンデグラフ」という装置を使うと、さらに面白い実験ができます!

バンデグラフを使った面白実験も公開しています。この実験は、広瀬すずさん・鈴木亮平さん・やす子さん・チョコレートプラネッツの長田さん・松尾さん等とテレビ番組にて行った実験も含まれます。詳しくはこちらをどうぞ

※ なお、静電気発生装置(バンデグラフ)を用いた実験については、必ず専門家の方の立ち合いのもと行ってください。お気をつけてお試しください。また静電気実験に関するご依頼(実験教室やTV監修・出演等)についてはこちらからお願いします

【特集】やめられなくなる!静電気実験

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