微積分でスッキリ!コンデンサーの電気のたまり方を深掘り(高校物理と微積分)
高校物理の「なぜ?」を深掘り!微積分でスッキリわかるコンデンサーの電気のたまり方
こんにちは、理科教師の皆さん!日々の授業、お疲れ様です。高校物理の教科書では、数学の進度を考慮して微積分を使わずに説明がなされている単元が多くありますよね。しかし、中には「ここで微積分を使えば、もっと本質が見えてくるのに!」と感じる現象も少なくないのではないでしょうか。
このブログでは、そんなモヤモヤをスッキリさせるべく、微積分を用いることで理解が深まる高校物理のトピックを深掘りしていきます。今回は、多くの先生方が授業で扱われるであろう**コンデンサーの電気のたまり方**について、微積分を使って考えてみましょう。この内容は、生徒に直接教える機会は少ないかもしれませんが、先生方の深い理解が、きっと授業の質を高めることに繋がります。
未知のコンデンサーの電気容量を電流から探る!
皆さんは、未知のコンデンサーの電気容量を調べる際、どのような方法を思い浮かべるでしょうか? 実は、微積分を用いると、コンデンサーの放電時の電流変化から、その電気容量を導き出すことができます。
具体的な手順としては、まずコンデンサーを充電し、その後放電させながら、各時間でどれだけの電流が流れたかを測定します。そして、その電流値に測定間隔の時間をかけて足し合わせること(**積分**すること)によって、コンデンサーに蓄えられていた電気量を求め、おおよその電気容量を調べることが可能になるのです。
こちらの実験もぜひ参考にしてみてください。
なぜこのような方法で電気容量がわかるのか、今回はその背後にある物理法則と微積分の力を紐解いていきましょう。
まず次の図のように、コンデンサーに電荷をある電圧Vでためたあとに、放電させた様子を考えてみましょう。
コンデンサーの両端の電圧をV、抵抗の大きさをRとすると、キルヒホッフの第二法則から、
となります。コンデンサーの電気容量をC、あるときのコンデンサーにたまっていた電気量をQとすると、Q=CVより、
となります。ここで電流の定義式I=dQ/dtを使います。抵抗に流れる電流は減少をしていることに注意をすると、このときの電流はコンデンサーから回路に流れた電流dQを使って、I=−dQ/dtとなります(マイナスがつくのは、減少をしているため)。
R、Cは定数なので、変数分離を行うと、
時間tで積分をすると、
Cは積分定数です。時刻0のとき、つまり初期状態でコンデンサーに電気量がQ0たまっていたとすると、積分定数eCはQ0となります。よって、
となります。この様子をグラフにすると、
これがコンデンサーにたまった電気量が減っていく様子です。電気量Qを直接測ることは難しいので、このときの電流変化を求めてみましょう。電流の定義式から、電気量の式を時間で微分してみましょう。
電流の大きさのみをグラフにすると、
ここで電流が囲む面積、t=0からt=∞まで積分して、求めてみます。
このことからもわかるように、各時間に流れた電流と、測定時間とで囲まれた面積を積み上げていくと、コンデンサーにたまっていた電気量Q0を求めることができることがわかりました。充電していたときの電圧V0を使えば、Q0=CV0からコンデンサーの電気容量を求めることができるというわけです。
実際に実験をやると、入れる抵抗によっては、電荷の放出時間が短すぎて、電流値の測定が困難なときがあります。そのようなときには抵抗値の大きさを大きくしてみると、放出時間が長くなります。数式をつかってたしかめてみましょう。例えば抵抗値Rの大きさを例えば2倍にしてみると、流れた電流の大きさは、
グラフをかいて、Rの場合と2Rの場合を比較してみましょう。
2Rの場合のほうが、変化がゆるやかになり、長い時間をかけて放出することがわかりますね。このため実験をしたときに電流を測りやすくなります。このときの面積は当たり前ですが、充電した量は変えていないので、先ほどの面積と同じQ0になっているはずです。計算をしてみましょう。
同じになりました(^^)。
以上、微積分を使ったコンデンサーの電気量の変化のお話でした。
高校物理では、コンデンサーの充電や放電の「前後」の状態は扱われますが、その「途中」の変化を微積分で追うことはなかなかありません。しかし、このように微積分を用いることで、コンデンサーの電気量の変化や電流の変化がどのような法則に従っているのかがスッキリと理解できます。
動画による解説について
コンデンサーについて動画で解説しました。プリントをダウンロードしてご覧ください。
3章 コンデンサー |
小学生のころにさわったことのある素子が再び登場!コンデンサーの性質とそれを組み込んだ回路について学びます。 |
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