抵抗を変えても、電気量は同じだった。リアルタイム計測が教えてくれた物理の真実(コンデンサーの充電・放電実験)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
充電されたコンデンサーのスイッチを入れた瞬間、画面の上でグラフがすうっと描かれていく。電流が急激に立ち上がり、なめらかに減衰していく曲線。それをリアルタイムで目の当たりにしたとき、生徒から思わず声が上がりました。「電気が流れている」という目に見えないはずの現象が、グラフという形で目の前に現れた瞬間です。今回は、センサー機器「イージーセンス」を使ったコンデンサーの充放電実験の様子をご紹介します。

バカロレア校の授業見学
群馬国際アカデミーの理科の授業を見学させていただきました。そこで目にしたのは、センサー機器を使った単振動の実験と、生徒が一人ひとりグラフ電卓を持ち込んでいる光景でした。「測定→即グラフ化→考察」という流れが当たり前になっている授業のスタイルに、大きな刺激を受けました。
センサー機器は決して安くありません。予算の都合で少しずつ買い集め、ようやく班の数だけそろったタイミングで、満を持して生徒実験に踏み切りました。

「コンデンサーの充放電」とは何か——電気を貯めて、一気に放つ
実験の前に、少しだけ予備知識を。コンデンサーとは、電気を一時的に蓄えることができる部品です。充電とは電気をためること、放電とはためた電気を一気に流すことです。
カメラのフラッシュや、自動販売機の硬貨選別機など、身近なところにも使われています。放電のとき、電流は最初に大きく流れ、その後なめらかに減っていきます。この変化の様子を「放電曲線」といい、今回の実験のメインテーマです。
従来の実験では、アナログの電流計を読みながら何度も値を記録し、手作業でグラフを描いていました。時間がかかる上に、曲線全体の形をつかむのが難しいという課題がありました。
センサーとiPadで、放電曲線がリアルタイムに現れる
今回使用したのは「イージーセンス」という電流センサーです。iPadとBluetoothで無線接続でき、測定値がリアルタイムでグラフとして画面に描かれていきます。

iPadとはBluetoothで無線接続ができます。
まずコンデンサーを充電し……

まずは充電をして…
放電時に電流センサーで回路に流れる電流を計測します。

放電時にイージーセンスの電流センサで、回路に流れた電流を計測します。
なお、センサーは無接続の状態でも最初から0mAを示すとは限らないため、測定前のゼロ補正(キャリブレーション)が必要です。この一手間が、精度の高いデータにつながります。

電流センサは無接続でもはじめに0mAになっていないので、補正が必要です。
抵抗を変えると、曲線の形が変わる
1時間の授業の中で、10Ω・5Ω・20Ωの3種類の抵抗を使って放電実験を繰り返しました。センサーを使えば測定がすばやくできるので、同じ時間内に複数の条件で実験を行えるのが大きな強みです。

放電曲線です。最大値がすぐにわかります。
抵抗が大きいほど電流の流れが抑えられ、曲線はゆるやかになります。逆に抵抗が小さいと、電流は勢いよく流れてすぐに収束します。グラフの「形の違い」が、抵抗の大きさの違いを視覚的に語ってくれます。

こちらは抵抗を20Ωにしたときの放電曲線
積分で「電気量」を求める
放電曲線の面積(グラフの下の部分)を計算すると、コンデンサーに蓄えられていた電気量(電荷量)を求めることができます。これを「領域積分」といいます。従来は、グラフ上に長方形をいくつも並べて手作業で面積を近似する「区分求積」という方法で計算していました。これはこれで数学的に意味のある作業ですが、時間がかかるのが難点でした。
イージーセンスでは、この積分が画面上で一発で計算できます。

積分も一発でできてすばらしい。今までは長方形をつくっての手計算でした。生徒もこの機能には驚いていました。
手計算もそれはそれで意味がある作業だとは思っています。が、時間がかかる…。
どの抵抗でも、電気量は同じになった
各班の実験結果がこちらです。

グラフの概形です。

これは別の班のグラフの概形。

それぞれのデータから電気容量を求めるとこのような結果に。

こちらは別の班の結果です。
領域積分の結果、どの抵抗を使っても電気量はおよそ4000mC(=4クーロン)に近い値になりました。これは非常に重要な発見です。抵抗が違うと電流の流れ方(曲線の形)は変わりますが、コンデンサーに蓄えられていた電気量の総量は変わらない——このことをデータで実感できたわけです。さらにそこから電気容量を計算すると、1Fに近い値が得られ、コンデンサーの定格値ともよく一致しました。誤差率も合わせて計算することで、実験の精度を自分たちで検証する経験にもなりました。
「見えない電気」を、グラフで「見える化」する意味
電気は目に見えません。だからこそ、グラフという形で可視化されたとき、生徒の理解は一段深まります。リアルタイムで曲線が描かれる体験は、「電気が流れている」という感覚を体で理解させてくれます。センサー機器は高価ですが、その価値は十分にあると感じた実験でした。こちらの理論についても合わせてご覧ください。
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