化学変化前後で質量を測る実験を行いました(炭酸水素ナトリウム+塩酸)

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

化学変化における質量の変化について、実験授業の準備と進め方をご紹介します。この実験は、特別な器具を必要とせず、身近な材料で手軽に実施できます。密閉された空間で化学変化が起こると、発生した気体も系内に留まり、質量が保存されることを視覚的かつ定量的に理解できます。そして、あえて開放系で実験を行うことで、気体の出入りが質量測定に与える影響を考察させ、より深い理解へと導くことができます。

実験の準備

 

1. 準備物(10班編成の場合)

  • ペットボトル(炭酸飲料用、500mL程度):10本(班の数)
    • 炭酸飲料用は、内圧に耐えられるため、安全に実験できます。
  • 試験管(10mLサイズの小さいもの):10本
    • ペットボトルの口からスムーズに入れられるサイズを選びましょう。
  • 塩酸(3%溶液):50mL(各班5mL使用)
    • 市販の希塩酸で十分です。濃度に注意し、安全メガネを着用して取り扱いましょう。
  • 炭酸水素ナトリウム:10g(各班1g使用)
    • 重曹として家庭でもおなじみです。
  • 電子天秤:数台(各班に1台あるとスムーズです)
  • 薬包紙または小さな皿:10枚
  • 保護メガネ:生徒全員分
  • 雑巾、バケツ(水入り):万が一の液漏れに備えて

2. 事前準備

  • 塩酸の希釈:必要に応じて、市販の濃塩酸を3%に希釈しておきましょう。
  • 炭酸水素ナトリウムの計量:各班に1gずつ配れるように、事前に小分けにしておくと、実験時間の短縮になります。薬包紙に包んでおくと便利です。
  • ペットボトルの洗浄・乾燥:使用済みのペットボトルを使う場合は、きれいに洗浄し、完全に乾燥させておきましょう。水分が残っていると、正確な質量測定の妨げになります。

実験の手順

1. 反応前の質量測定

  1. 各班にペットボトル、試験管、塩酸5mL、炭酸水素ナトリウム1gを配布します。
  2. ペットボトルの底に炭酸水素ナトリウム1gを入れます。
  3. 3%の塩酸5mLを入れた試験管を、ペットボトルを倒さないように注意しながら、ペットボトルの中にそっと立てて入れます。このとき、塩酸が炭酸水素ナトリウムに触れないように細心の注意を払わせましょう。

  4. ペットボトルの蓋をしっかりと閉めます。
  5. この状態(反応前)で、電子天秤を使って全体の質量を測定し、記録させます。

2. 化学変化と反応後の質量測定(密閉系)

  1. ペットボトルをゆっくりと横に倒し、試験管の中の塩酸とペットボトル底の炭酸水素ナトリウムを反応させます。
  2. 「シュワシュワ」という音とともに泡が発生し、二酸化炭素が発生する様子を観察させます。
  3. 反応が完全に終わったことを確認したら、再度、蓋を閉めたままのペットボトル全体の質量を測定し、記録させます。
  4. 反応前と反応後の質量を比較させ、考察させましょう。

3. 気体放出後の質量測定(開放系)

  1. 次に、ペットボトルの蓋をゆっくりと開け、発生した二酸化炭素を外に出します。
  2. 気体が出なくなったことを確認したら、もう一度ペットボトル全体の質量を測定し、記録させます。
  3. この質量と、密閉系での反応後の質量を比較させ、なぜ質量が変化したのかを考察させましょう。

考察のポイントと科学的知識

この実験を通して、生徒たちには以下の点を深く理解させることができます。

  • 質量保存の法則の確認: 密閉系での実験では、反応前と反応後の質量がほとんど変化しないことを確認できます。これは、化学変化の前後で物質を構成する原子の種類と数が変わらないため、全体の質量も保存されるという「質量保存の法則」を裏付けるものです。
  • 気体の質量: 開放系での実験では、二酸化炭素が外部に放出されたことで、わずかに質量が減少することを確認できます。このことから、気体も質量を持つこと、そして化学変化によって発生した気体が系外に出ると、その分だけ全体の質量が減少するということを理解させることができます。
  • 化学反応式: 今回の反応は、炭酸水素ナトリウムと塩酸が反応して、塩化ナトリウム、水、二酸化炭素が生成されるものです。 NaHCO₃ + HCl → NaCl + H₂O + CO₂ この反応式を通じて、原子の再配列によって新しい物質が生成されることを説明できます。

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