エコで簡単、後片付けも楽々! 重ねるだけの「ハンバーガー式ダニエル電池」実験
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「ダニエル電池」は、電池の仕組みを理解する上で非常に重要なテーマですよね。しかし、準備が大変だったり、廃液の処理に手間がかかったりといった悩みを抱えている先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回ご紹介したいのが、その名も「🍔ハンバーガー式ダニエル電池」です!このユニークな名前の通り、まるでハンバーガーのように材料を重ねて作る、画期的な簡易版ダニエル電池です。見た目の面白さだけでなく、通常のダニエル電池に比べて廃液が格段に少なく、環境に優しいのが最大の魅力。さらに、身近な材料で手軽に作れるため、授業準備の負担を大幅に軽減できます。
もちろん、簡易版ゆえに溶液の様子を直接観察できないという弱点はあります。でもご安心ください!通常のダニエル電池(演示用)と組み合わせて実験することで、それぞれの利点を活かし、生徒たちの理解を深めることができます。
例えば、通常のダニエル電池でイオンの移動や金属の溶解・析出を視覚的に示し、その後、この後紹介するハンバーガー式で手軽に発電を体験させる、といった流れが考えられます。この組み合わせによって、生徒たちはダニエル電池の基本原理を多角的に捉え、より深い学びへと繋げることができるでしょう。この「ハンバーガー式ダニエル電池」を授業に取り入れて、生徒たちを「なるほど!」と唸らせる、楽しくてエコな化学実験を実践してみませんか?
必要な材料と作り方
このハンバーガー式ダニエル電池のキーとなるのが「セロハン」です。これは、通常のダニエル電池における「素焼き板」や「塩橋」と同じく、異なる電解液が混ざるのを防ぎつつ、イオンを通過させる「仕切り」の役割を果たします。驚くことに、100円ショップで手に入るカラーセロハンでも十分に機能しますので、準備の手間もコストも抑えられます。さらに、ろ紙(キッチンペーパーでも代用可能)を溶液の染み込ませる媒体として使うことで、廃液をほとんど出さずに済むため、後片付けも非常に簡単になります。

※なお驚くべきなかれ、セロハンを使わずにコピー用紙でも実践可能だと教えていただきました。硫酸亜鉛水溶液は飽和食塩水でも可能だそうです。
【準備するもの】
- 硫酸亜鉛水溶液:約5%(硫酸亜鉛七水和物9.8gを水100gに溶かす)
- 硫酸銅水溶液:約17%(硫酸銅(Ⅱ)五水和物35.7gを水100gに溶かす)
- ポリスポイト(こちらがおすすめです)2本 シャーレ 2つ 亜鉛版 銅板 ろ紙2枚(キッチンペーパーでも可能) セロハン1枚 ティッシュ1枚 プロペラ 電子メロディー( #ナリカ ) テスター(こちらがおすすめです) わに口 ピンセットセロハンは100円ショップで買いました。

こちらがそれら全てです。
実験方法
いよいよハンバーガー式ダニエル電池の組み立てです。手順は非常にシンプルで、まるでサンドイッチを作るように材料を重ねていくだけ!
1 シャーレの上にろ紙を置いて、硫酸銅、硫酸亜鉛をポリスポイトで溶液をとってひたす。

2 机の上にティッシュペーパーを机の上にひいて、その上に銅板を乗せる。このとき机の端で行う。重ね方は次の通りです。

ティッシュをひいて、銅板をおき、硫酸銅水溶液を染み込ませたろ紙を乗せて、その上にセロハンを乗せる。

その上に硫酸亜鉛を染み込ませたろ紙を乗せて、最後に亜鉛版を乗せる。

このときに銅板と亜鉛版が直接触れないように注意をする。そしてワニ口ではさんで電子オルゴールやモーターに繋いでみる。その後テスターで電圧を測る。

私が作った時は起電力は1V程度でした。1.1Vくらい出るといいのですが。
3 しばらく電流を流し続けるため、ワニ口の2つの端子をつないで(ショート回路の状態)、2分程度放置をする。その後、それぞれの金属版についたろ紙をはがして、色などを観察する。

銅板についていたろ紙。色が赤っぽくなっている。

亜鉛版についていたろ紙。なぜかこちらも茶色になっている。銅イオンがセロハンを通過したのだろうか。
ダニエル電池は、簡単に言うと「2種類の金属がイオン(水に溶けた状態)になろうとする力の差」を利用して電気を作る装置です。
ダニエル電池の仕組み
ダニエル電池で使われる主な材料を見てみましょう。
- 亜鉛(あえん)の板 (Zn):マイナス極(-極)になります。
- 銅(どう)の板 (Cu):プラス極(+極)になります。
- 硫酸亜鉛(りゅうさんあえん)水溶液 (ZnSO₄):亜鉛の板をひたす液体。
- 硫酸銅(りゅうさんどう)水溶液 (CuSO₄):銅の板をひたす液体。青色をしています。
- セロハン(または素焼きの板):2つの水溶液が混ざらないように仕切る壁です。
電気が流れる仕組み
電気が流れる(電流)とは、実は「電子」という小さな粒が移動することです。ダニエル電池では、この電子を無理やり押し出す「ある勝負」が行われています。それは、「金属がどれだけイオンになって水溶液に溶け出したいか」という勝負です。(これをイオン化傾向といいます)
- 亜鉛 (Zn):すごく溶けたい! 電子($e^-$)を捨ててでも、イオン(Zn^2+)になりたい。
- 銅 (Cu):亜鉛ほど溶けたくない。むしろ水溶液中の「銅イオン(Cu^2+)」は、電子(e-)をもらって金属の銅(Cu)に戻りたい。
この「電子を捨てたい亜鉛」と「電子がほしい銅イオン」が、電池の仕組みのすべてです!
ステップで見る電気の流れ
- 【-極:亜鉛側】亜鉛が溶けて電子を放り出す!
亜鉛の板(Zn)が、持っていた電子(e-)を2つ放り出して、「亜鉛イオン(Zn2+)」に変身し、硫酸亜鉛水溶液の中に溶け出していきます。
Zn → Zn²⁺ + 2e⁻ (電子を放出)
この結果、亜鉛の板はだんだん溶けてボロボロになります。放り出された電子($e^-$)は、導線(電線)を通って銅の板に向かって大移動します。これが電流の正体です!
- 【+極:銅側】銅イオンが電子を受け取る!
導線を通って、電子(e-)が銅の板に到着します。
すると、硫酸銅水溶液の中にいた「銅イオン(Cu2+)」(青色の正体)が、待ってました!とばかりに銅の板にやって来て、その電子(e-)を2つ受け取ります。
Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu (電子を受け取る)
電子を受け取った銅イオンは、ただの「銅(Cu)」の原子に戻ります。
この結果、銅の板にはどんどん銅が付着していく(太っていく)ことになります。水溶液の青色も薄くなっていきます。
セロハンの役割は?
セロハンは、2つの水溶液がすぐに混ざってしまうのを防ぐ「仕切り」です。でも、ただの壁ではありません。亜鉛側ではプラスのイオン(Zn2+)が増え、銅側ではプラスのイオン(Cu2+)が減っていきます。このままだと電気が偏ってしまうので、セロハンの小さな穴を「マイナスのイオン(SO_4^2-など)」が行き来して、電気的なバランスを保つ重要な役割もしています。
通常のダニエル電池については、こちらの記事も合わせてご覧ください。
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