なぜ?シャボン玉は静電気に「寄ってくる」のに、紙のチョウチョは「逃げる」のか?
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
ふわふわと空中を漂うシャボン玉。いつもは風や重力に従って気ままに飛んでいますが、もし、あの「見えない力」を近づけたら、一体どうなると思いますか?そう、髪の毛を逆立てたり、セーターを脱ぐときにバチッとくる、静電気です。普段、シャボン玉は風に流されるだけですが、もし静電気の力が働いたら、その動きはどう変わるでしょう?下敷きで髪の毛が逆立つように、シャボン玉も反応するのでしょうか?想像するだけでワクワクしますね。さっそく実験してみました!
用意するもの
- 風船
- タオル(ウールや木綿のものが望ましいです)
- シャボン玉
方法
1 道具を用意して、まずは風船をタオルでしっかりこすり、静電気を起こしておきます。
2 シャボン玉を優しく飛ばします。
3 シャボン玉の近くに、静電気をまとった風船を持っていきます。
いかがでしたでしょうか。あら不思議!
シャボン玉が、まるで魔法にかかったかのように風船にフワ~ッと引き寄せられていきます。
「逃げる」実験と「寄ってくる」実験
ここで、同じ静電気を使った別の実験「静電気チョウチョ」と比べてみましょう。
動画を見ると、ティッシュなどで作ったチョウチョは、静電気を帯びた物体から「逃げて」いきます。シャボン玉は「引き寄せられ」、チョウチョは「逃げていく」…。まったく逆の動きですね。なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか?
仕組み:引き寄せる力の正体
まず、風船をタオルでこすると、静電気が発生します。実は、風船(ゴムやビニール)はタオル(綿や羊毛など)でこすると、電子(マイナスの電気)を受け取りやすく、マイナス(-)に帯電するのが一般的です。一方、シャボン玉は、石鹸と水でできていますね。この「水」こそが秘密の鍵を握っています。水分子(H_2O)は、少し変わった形をしています。全体としては電気的に中性(プラスでもマイナスでもない)ですが、分子の中では酸素(O)側がわずかにマイナス(-)、水素(H)側がわずかにプラス(+)の電気を帯びているのです。これを「極性(きょくせい)がある」といいます。次の動画のように、水は電気に反応します。
そこへ、マイナス(-)に帯電した風船を近づけると、どうなるでしょう?そうです!水分子のプラス(+)側(水素側)が、風船のマイナスの電気に引き寄せられて、風船のほうへ向きを変えます。
(※この図はプラスの電気を近づけた例ですが、マイナスの風船を近づけた場合は、水分子のプラス側が引き寄せられます)
シャボン玉の「風船に近い側」にプラスの電気が、「遠い側」にマイナスの電気が集まる(ように分子が並び変わる)のです。これを静電誘導(より正確には誘電分極)といいます。風船に引き寄せられるプラスの電気のほうが、反発するマイナスの電気よりも、風船にわずかに近いため、全体として引き合う力のほうが強くなります。これが、中性のはずのシャボン玉が風船に引き寄せられる理由です。
では、なぜ「静電気チョウチョ」は逃げるの?
これは、シャボン玉(水)とチョウチョ(紙)の性質の違いです。紙のチョウチョは、静電気を帯びた物体に触れる(あるいは非常に近づく)と、電気(電子)がぴょんと飛び移り、チョウチョ自体が風船と同じ(マイナス)の電気を帯びてしまいます。磁石の同じ極(N極とN極など)が反発するように、同じ種類の電気はしりぞけ合います。だから、チョウチョは「逃げて」いくのです。シャボン玉は電気が「移る」のではなく、水分子が「並び変わる」ことで引き寄せられていたのですね。面白い!
静電気発生マシーン(バンデグラフ)を使うと、こんな面白い実験が!!
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