ひげの数だけ粒がある?!トウモロコシの驚きサイエンス体験!
家族と一緒に、カゴメ株式会社が運営する「野菜生活ファーム」へ足を運びました。ただ野菜を食べるだけでなく、その生命の営みに触れることができる、素晴らしい場所です。ここでは、新鮮な野菜をふんだんに使った美味しい食事が楽しめるだけでなく、実際に自分の手で野菜を収穫する体験もできるんです。今回は特に、畑の恵みを五感で感じられる「食事」と「トウモロコシの収穫体験」に心を惹かれ、参加することにしました。
広々とした農園に足を踏み入れると、そこにはどこまでも続く緑のじゅうたんが広がっていました。特に圧巻だったのは、私たちの背丈をはるかに超えるトウモロコシ畑!見渡す限りのトウモロコシが、太陽の光を浴びてすくすくと育つ姿は、生命の力強さを感じさせます。
しかし、皆さんはご存知でしたか?この立派なトウモロコシ、実は1本の茎から2つほどしか実がならないんです。私はもっとたくさん実るイメージを持っていたので、この事実を知った時、農家の方々がどれほどの労力と愛情を注いでいるのかを痛感しました。スーパーで手軽に買えるトウモロコシ一つにも、計り知れない努力が詰まっているのですね。
いよいよ収穫の時間。子どもたちは、どれにしようかと目を輝かせながら、ずらりと並んだトウモロコシの中からお気に入りの一本を探していました。私も一緒に、茎の下の方を「パキッ」と折る感触を楽しみながら収穫。自分の手で収穫したトウモロコシは、スーパーで買うものとは一味も二味も違います。重みがあり、何よりその場で食べる新鮮な味わいは格別でした。この体験を通して、私たちは食べ物への感謝の気持ちを改めて抱くことができました。
トウモロコシは「ひげ」が命!驚きの受粉メカニズム
さて、収穫したトウモロコシをじっくり観察していると、ある不思議な構造に気づきます。トウモロコシのてっぺんには、「雄花(おばな)」と呼ばれる部分があり、そこから黄色い花粉がパラパラと落ちてきます。そして、茎の中間や下の方には、トウモロコシの粒を包むように生えている、あのフサフサとした「ひげ」のような部分がありますよね?これが実は「雌花(めばな)」なんです!この雌花に、雄花から落ちてきた花粉が付着して受粉(じゅぶん)が行われると、私たちが普段食べているトウモロコシの粒ができるのです。実に神秘的な仕組みだと思いませんか?
雄花
雌花
絹糸の数と粒の数、驚きの対応関係
このトウモロコシの「ひげ」は、植物学的には**「絹糸(けんし)」と呼ばれています。さらに驚くべきことに、この絹糸の一本一本が、トウモロコシの「粒」**とそれぞれ一本ずつ繋がっているのです!雄花から風に乗って飛んできた花粉が絹糸に付着すると、その絹糸の内部を花粉管が伸びていき、**受精(じゅせい)**が行われます。この受精が成功すると、子房(しぼう)が膨らんで、私たちが食べるトウモロコシの粒になるというわけです。つまり、この絹糸の数とトウモロコシの粒の数は、ぴったりと一致しているんですね!
確かによく見ると、この写真のように、トウモロコシの先端にたくさんの絹糸があり、末端いくに従って、絹糸の数が減っていくのがわかります。
よく見ると、収穫したばかりのトウモロコシの先端にはたくさんの絹糸がついていますが、根元に近づくにつれて、その数が減っていくのがわかります。まるで、お祭りの「ヒモくじ」のようにも見えますね!
風に運ばれる命のバトン!トウモロコシの賢い戦略
また、トウモロコシは、一つの株に雄花と雌花が咲く**「雌雄同株(しゆうどうしゅ)」という植物です。しかし、面白いことに、雄花と雌花で花粉を出す時期や受粉できる時期が少しずれており、雄花が先に成熟する傾向にあります。これは、自分の花粉で受粉する「自家受粉(じかじゅぶん)」よりも、他の株の花粉で受粉する「他家受粉(たかじゅぶん)」**を促すための植物の賢い戦略なのです。他家受粉によって、遺伝的な多様性が高まり、より丈夫な子孫を残すことができるのですね。
さらに、トウモロコシは風によって花粉が運ばれる**「風媒花(ふうばいか)」**に分類されます。そのため、畑では風通しの良い場所に植えなければならず、密集させて植えるのは良くないのだそうです。これもまた、トウモロコシが効率的に子孫を残すための工夫なのです。
今回の野菜生活ファームでのトウモロコシ収穫体験は、単に美味しいトウモロコシを味わうだけでなく、植物の奥深い生命の営みや、私たちが普段何気なく口にしている食べ物の裏側にある科学の面白さに気づかせてくれる貴重な体験となりました。
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