「バチッ!」の正体。静電気モンスター「バンデグラフ」で電気の力を可視化してみた

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

寒い冬の日、セーターを脱いだ瞬間に「バチッ!」と火花が散ったり、下敷きで髪をこすると髪の毛がフワッと逆立ったり。誰もが一度は経験したことがある、あの不思議な現象。「静電気」ですね。普段はちょっと厄介な静電気ですが、もし、その力をとてつもなく強力に、目に見える形で取り出す装置があるとしたら…?今日は、そんな静電気のモンスターマシン「バンデグラフ」と呼ばれる装置を使って、紙が驚くべき姿に変身する実験をご紹介します!

静電気のモンスターマシン?「バンデグラフ」とは?

皆さんが「静電気」と聞いて思い浮かべるのは、物と物がこすれ合うことで電気が移動し、「帯電」する現象だと思います。バンデグラフは、その「こする」という作業を、機械で超高速かつ連続的に行う装置です。中にはゴムベルトが入っていて、それが高速で回転し、下部のローラーとこすれ合います。そこで発生した静電気を、ベルトコンベアのように上部の大きな金属球にどんどん運び、蓄積していくのです。

仕組みは、風船を絹の布でこすって静電気をためるのと全く同じ原理なのですが、そのパワー(溜め込める電気の量)は桁違いです!では、このバンデグラフに紙を貼り付けた状態でスイッチを入れると、一体どのような現象が起こるのでしょうか?

実験スタート!紙が「もびゃーん!」

今回使用するのはケント紙です。半紙などの薄くて軽い紙も、変化が分かりやすくておすすめです。この紙を、バンデグラフの金属球に貼り付けた状態で、スイッチをオンにします!

もびゃーん!!

なぜ紙は放射状に逆立つのか?

すごい勢いで紙が逆立ち、まるで球から髪の毛が生えたように放射状に広がりました!面白いですね。これは、一体なぜでしょうか?まず、バンデグラフのスイッチを入れると、金属球に大量の静電気(例えばマイナスの電気)が溜まります。その電気は、貼り付けたケント紙にも流れ込みます。すると、ケント紙一本一本が、すべて同じ種類(マイナス)の電気を帯びることになります。

ここで重要なのが、「同じ種類の電気同士は、強く反発しあう」という性質です。磁石のN極とN極を近づけると反発するように、マイナス電気を帯びた紙同士も「あっち行け!」とばかりに強く反発しあいます。さらに、電気の発生源である金属球からも反発します。その結果、紙は「お互いから、そして球から、できるだけ遠くに離れたい!」という力の働くままに、あの美しい放射状に広がるのです。

これは、目には見えない電気の力の向き(電気力線)を、紙を使って「可視化」した実験とも言えます。

ビニールテープで、もっと激しく!

もっとお手軽に、そしてもっと激しくこの現象を見たい場合は、ビニールテープもおすすめです。このように貼り付けて…

スイッチON!ぜひ動画でご覧ください!

ひゃー!!

紙よりも軽いビニールテープだと、反発する力がよりダイレクトに伝わって大爆発のようになりますね!

電気が逃げると、力は消える

では、この逆立った紙やテープに、別の金属球(アース球)を近づけてみるとどうなるでしょうか?

バタっと落ちます。

指で触っても、同じことが起こります。

バタッと落ちます。

これは、バンデグラフに溜まっていた電気が、アース球や私たちの体(指)を通って一気に逃げていく「放電」という現象です。冬にドアノブを触って「バチッ!」と痛いのも、体に溜まった静電気が金属に放電している証拠。原理はまったく同じです。電気が逃げてしまうと、紙同士が反発しあう力も失われ、重力に従って元の位置にバタッと落ちてしまうのです。「バチッ」と痛いだけの厄介者だと思っていた静電気が、実はこんなにも強い「反発する力」を持っていたなんて、面白いですね!

静電気発生マシーン(バンデグラフ)を使うと、こんな面白い実験が!!

この他にもバンデグラフを使った面白実験も公開しています。この実験は、広瀬すずさん・鈴木亮平さん・やす子さん・チョコレートプラネッツの長田さん・松尾さん等とテレビ番組にて行った実験も含まれます。詳しくはこちらをどうぞ

※ なお、静電気発生装置(バンデグラフ)を用いた実験については、必ず専門家の方の立ち合いのもと行ってください。お気をつけてお試しください。また静電気実験に関するご依頼(実験教室やTV監修・出演等)についてはこちらからお願いします

【特集】やめられなくなる!静電気実験

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