裏ワザ発見!iPhoneであることをすると赤外線が見える!
赤外線が見えた!
今日は、目には見えない赤外線を「見える化」する方法(実験)をご紹介します。実は、ある方法を使えば、iPhoneなどのスマホで赤外線を見ることができちゃうんです!高価な赤外線カメラを買う必要なんてありませんよ。こちらの動画をご覧ください。
これを使えば、理科の実験でも赤外線が可視化して見えるので使えるほか、赤外線を使っている家の防犯カメラを暗闇の中で発見することができるかもしれません。
赤外線って何?
私達がものを見て認識するときには、物体から出る #電磁波 という光の波を目で捉えています。この電磁波の中で、波長が380nm~750nmの電磁波を人間の目は捉えて、それぞれの波長を色として感じ取っています。
※n(ナノ)は10のマイナス9乗を表す
図のように、電磁波の中で波長が長いものを赤、波長の短いものを紫というように、人間は認識します(赤橙黄緑青藍紫(せき とう おう りょく せい らん し )という覚え方があります)。この領域の電磁波を目で捉えることができるということから、 #可視光 といいます。
また人間の目にはみえない、可視光以外の領域の電磁波もあります。例えば、紫よりも波長が短い領域にある #紫外線 (紫の外の線)、また赤よりも波長が長い領域には赤外線(赤の外の線)という電磁波があります。これらの電磁波は、人間の目で捉えることができないだけで、他の生物は捉えることができる場合があります。例えばモンシロチョウは紫外線を見ることができるそうです。
赤外線をみてみよう!
赤外線には可視光と同じような性質を持った近赤外線と、波長がより長い中赤外線・遠赤外線があります。ここでは、近赤外線について扱います。
リモコンのボタンを押すと #赤外線 という電波が先端から出ています。赤外線は可視光ではないので、リモコンのボタンを押しても赤外線が出ているということを目で感じ取ることができません。この「人間の目には見えない」ということを逆手に取って、テレビなどのリモコンの送信部には、生活のじゃまにならないように赤外線が利用されています。技術的には可視光を使っての通信も可能ですが、リモコンの送信部がチカチカ光ると逆に邪魔になってしまいます。
この赤外線ですが、一昔前のデジタルカメラに向けて、リモコンのボタンを押してみると、デジタルカメラの画面を通して赤外線を見ることができました。
デジタルカメラのイメージセンサーは私達の目ではとらえることのできない波長の光、近赤外線も捉えることができるためです(捉えることができてしまう)。ただし赤外線をとらえてしまうと、リモコンの赤外線が見えるように、撮った写真が人間の目でみているものとは違った写り方や、色合いになってしまいます。なお古いiPhoneも、カメラごしに赤外線を見ることができましたが、最近のスマホは改良されて、赤外線が写らなくなりました。これは #赤外線カットフィルター ( #IRフィルター )というものがレンズにつけられた(つけられてしまった!)ためです。赤外線カットフィルターを通すことにより、750nmよりも波長の長い電磁波をカットして、可視光領域の電磁波をイメージセンサーにあて、より人間の目で見たままの色合いの写真になるように、改良されたからです。赤外線カットフィルターは近年はほとんどのデジタルカメラに搭載されています。
iPhoneのカメラで撮影をしてみましたが、
赤外線が見えない〜!(泣)
しかたがないので、教室で赤外線を見る実験をする場合には、古いデジタルカメラなどを持ってきて実験していました。しかし、それが「あること」をすることによって、iPhone(スマホ)でも電磁波を見ることができたのです!それが上の動画です。
どうでしょうか。しっかりと見えていますよね。実はアレをすることが大切なんですね。他のスマホでも試しましたが、やっぱりアレをすると(アレがあるスマホであれば)、見ることができるみたいです。今日はそんな赤外線を見るためのアレ(一工夫)についてご紹介します。
科学のレシピ
用意するもの
※ リモコンはどんなものでも構いません。ただ光り方が色々と異なるので、色々なリモコンを用意するとおもろいです。
方法
1 スマホのカメラをリアカメラ(通常のカメラ)から、フロントカメラ(前のカメラ)に切り替えましょう。フロントカメラとは自分を映し出す自撮り用のカメラです。
2 スマホを机の上において、フロントカメラに向かって、適当にリモコンのボタンを押してみましょう。その様子をスマホの画面ごしに見てみましょう。
光りました!
そう、フロントカメラにすることがポイントだったのです。普通のカメラ(リアカメラ)だと写りません。
フロントカメラだと、写ります!
ポチッとな!
写った!
照明のリモコンはもっとよく見えました!
ポチッとな
眩しい〜!これはいいですね!
暗闇の中で撮った映像はこちら。より明るく光って見えます。
これに気がついた時、うれしくて飛び上がりそうになりました。これは面白いですよね。部屋を暗くしてからこのカメラをいろいろなところに向けてみると、思いもしない家電が赤外線をだして光っていることも!?
例えばトイレのセンサー部、防犯カメラ、または顔認証機能付きのiPhoneを立ち上げるときに、別のiPhoneで見てみると…。実用面としてはリモコンの故障チェックや、隠しカメラなどから出る赤外線を発見することもできますね。
なぜフロントカメラだけ赤外線が見えるの?
なぜフロントカメラだけは赤外線が見えるのでしょうか。フロントカメラはリアカメラとは違い、写真の色を人間が見ている色に近づけるようにすることが目的のカメラではありません。フロントカメラの用途としては、テレビ電話などで、自分の顔を写すためにあります。そのため、フロントカメラには赤外線が多少入ったとしても、写り方を追求していないため、つければ物理的な厚みも当然出るでしょうし、赤外線カットフィルターを取り付けるまではしていないのでしょう。また画素数もフロントカメラはリアカメラよりも普通少なくなっています。
赤外線を出すもので、その色の具合に変化があるはずなので、フロントカメラとリアカメラには、太陽や白熱電球の光をとると、若干違いが見られるはずです。実際にとってみたのがこちらです。左がリアカメラ(赤外線カットフィルター無し)。右がフロントカメラ(赤外線カットフィルターあり)。なお後ろの背景にあわせて、AF・AEロック(フォーカスと露出のロック)をかけて撮影をしました。若干ですが、右のフロントカメラのほうが明るく写っているような気がしますし、また赤外線もとらえているためか、フィラメントの部分が明るく見えます。
ただ写真として大きな違いがあるのかというとそうでもないことがわかります。MacBookのフロントカメラでも赤外線が写りました。
顔認証技術(FaceID)について
また別件ですがスマホの顔認証技術では、近接センサーで赤外線ビームを出して顔とスマホとの距離を測定、顔が近づくと、赤外線をドットプロジェクターという部分から、顔にむかって数万個の点を照射、フロントカメラとは別の赤外線を感知するカメラで、顔に反射したドットパターンを読んで、目・鼻・口の位置、立体的な様子を解析して、数学的な処理をかけて本人かどうかの区別を行っているとのことです。赤外線が顔認証にも利用されているなんて驚きですね。
参考 Appleのサイトより
左から 赤外線カメラ 投光イルミネーター 近接センサー 照度センサー スピーカー マイク フロントカメラ ドットプロジェクター
実際に撮影をしてみると…!たしかに!!
赤外線を音で感じる!?
赤外線を音として感じる方法についても、紹介します。
科学のレシピ
準備するもの
オーディオケーブル、ミノムシ導線(ワニ口)、太陽電池(私は1000円くらいの安いもので行いました)、リモコン、鏡
手順
① ラジカセなどのオーディオ機器の外部端子に、オーディオケーブルをつなぎ、ミノムシ導線(ワニ口)でソーラーパネルとつなぐ。
② 音量を最大にして、ソーラーパネルにむけて、リモコンのボタンを押して見る。
結果:
こちらの動画を御覧ください。
リモコンのボタンを押すとビビビっと音が聞こえるのがわかりますね。赤外線に反応して、太陽電池から微弱な電流が流れるためです。
リモコンを遠ざけると、音が小さくなり、近づけると音が大きくなります。また鏡をたてかけて、鏡にリモコンを向けると、
赤外線が反射して、ソーラーパネルが反応します。面白いですね!
中・遠赤外線の利用
近赤外線はカシ王と同じような性質を持ちますが、中〜遠赤外線がことなる性質を持ちます。熱は分子や原子の振動現象です。この振動がそのまま中~遠赤外線(2500nm以上)として放出されます。またこれらの赤外線が他の物質に伝わると、その物質を温めることができます。このように中〜遠赤外線は、熱を伝える性質があります。物質から出るこれらの中~遠赤外線をとらえるカメラが、中・遠赤外線カメラ(サーモグラフィー(amazon))です。
楽天( FLIR ONE PRO iPhone/iPad対応 スマホ赤外線サーモグラフィーカメラ )
例えば消しゴムで机をこすってサーモグラフィーで見てみると…、
ゴシゴシと机をこすると…
面白いですよね。5万円くらいで買える時代になったので、家族に内緒でこっそり買ってみました。詳しくはこちらを御覧ください。
光についてもっと知りたくなった人に動画授業を作りました
「科学のネタ帳」の内容が本や電子書籍になりました。こちら。
実験付き、プリント付きのオンライン授業を公開しています。光について興味をもった方は、以下のオンライン授業も参考にしてみてくださいね。光の性質のところが面白いかもしれません。
・光の性質
・レンズ |
光の波の性質について学びます。 |
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