目では見えない“消灯”の瞬間!LED信号機の不思議(フリッカー現象)

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

【チカチカの正体】信号機をスローモーションで見てみたら…

ふと通学路で信号機を見ていて、「あれ?」と思ったこと、ありませんか?赤や青のランプがいつも光っているように見えるのに、スマホで動画を撮って再生すると、なぜかチカチカと点滅して見える。目では気づかなかった不思議な現象です。

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そこで、今回改めて信号機をビデオ撮影してみました。すると…やっぱり普段からチカチカと点滅しているように映る!目ではずっとつきっぱなしに見えるのに、カメラを通すとまるで瞬きしているようです。

これはいったい何が起きているのか?

この原因、実は電源の性質とLEDの仕組みに関係しています。日本では、電力会社によって交流の周波数が異なり、東日本では50Hz、西日本では60Hzの電気が使われています。つまり、1秒間に50回または60回、電気の流れる向きが変わっているということ。

LEDはこの交流に合わせて点滅しており、電気が流れていない瞬間には一瞬だけ消灯している状態になります。ただし、この点滅は非常に高速なので、人間の目には光が持続しているようにしか見えません(これを残像効果といいます)。

一方、スマートフォンのカメラは、人間の目のように連続的に光を捉えているわけではありません。動画を撮影する際には、1秒間に何十枚もの静止画(フレーム)を連続して撮影し、それらを繋ぎ合わせることで動画として見せています。この1秒間あたりのフレーム数を「フレームレート(fps)」と呼びます。

一般的なスマートフォンのカメラのフレームレートは、30fpsや60fpsが多いです。つまり、1秒間に30枚または60枚の静止画を撮影しているということです。

フリッカー現象

ここで、LED信号機の点滅周期とカメラのフレームレートの「ずれ」が問題になります。

  • LEDが点灯している瞬間にカメラがシャッターを切れば、光っているように映ります。
  • しかし、LEDが消灯している(光が弱まっている)瞬間にカメラがシャッターを切ってしまうと、そのフレームは暗く映ったり、完全に消えて映ったりします。

このように、LEDの点滅周期とカメラのシャッターが切れるタイミングが同期しないため、撮影された複数のフレームの中に、点灯しているコマと消灯しているコマが混在することになります。これを動画として再生すると、チカチカと点滅しているように見えてしまうのです。

特に、地域によって電力の周波数(東日本50Hz、西日本60Hz)が異なるため、カメラのフレームレートとの組み合わせによっては、より顕著にフリッカー現象が見られることがあります。例えば、西日本(60Hz)で点滅回数120回のLED信号機を30fpsのカメラで撮影した場合など、点滅周期とフレームレートが特定の倍数関係にあると、より規則的にチカチカと映ることがあります。

LED信号機がスマホのカメラでチカチカと点滅して見えるのは、**「人間の目には見えない高速なLEDの点滅」「カメラが一定のフレームレートで画像を捉える仕組み」との間に生じる「タイミングのずれ(フリッカー現象)」**が原因です。これは故障ではなく、光とカメラの物理的な特性による自然な現象なのです。

身のまわりのLEDも実は…

信号機に限らず、家庭や学校のLED照明、電光掲示板などでも、同じような現象が起きています。撮影すると「変な縞模様が出る」「画面がチカチカする」というのは、すべて交流電源とLEDの特性によるもの。

「普段見えているものは、実は見えていないものも多い」理科の世界ではよくある話ですが、こうして身近な不思議を掘り下げてみると、新しい発見がありますね。

実験にも応用できるかも?

この現象は、LEDと交流電源の関係を学ぶ授業の導入にもぴったり。スマホさえあれば実験可能なので、物理分野の授業や自由研究でも扱いやすいテーマです。「見える」こと、「見えないけれど起きている」ことの違いを考えるきっかけにもなるでしょう。

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