データがキレイに出て感動!レールとビー玉で解き明かす位置エネルギーと仕事の関係
サイエンストレーナーの桑子研です。
「高いところにある物体は、エネルギーを持っている」——。理科の授業でそう習っても、いまいちピンとこない…。そんな経験はありませんか?中学理科で登場する「位置エネルギー」や「仕事」という言葉は、目に見えないからこそ、どうやって実感させるか、教える側も毎年悩ましいところです。教科書には杭打ち装置を使った実験が載っていますが、準備や片付けが大変だったり、安全に扱うのにコツが要ったりしますよね。
今回は、そんな「難しいけど大事」な単元を、驚くほどシンプルに「見える化」してしまう実験をご紹介します。使うのは、レールとボールだけ。手軽なのに、データが美しく揃うので、生徒たちの納得感が違います!
準備するもの・実験のセット方法
- 滑らかな傾斜レール・配線ケーブルなどを使って作成できます。
(ポイント:できるだけ摩擦が少ない=滑らかなものを選ぶことで、エネルギーの損失を減らし、純粋な位置エネルギーと仕事の関係が見やすくなります!) - 質量の異なる3種類のボール(ビー玉、小さな鉄球、鉛球など)
- 電池(単1または単2)(ボールが動かす「荷物」として使用します)
- 包含紙(位置エネルギーの測定基準として使用)
- ものさし、テープ、記録用紙(ワークシート)
実験の手順と成功のポイント
- スタートの高さを正確に測る
転がす前に、球の中心の高さを測定します。包含紙などを垂直に立てておき、斜面上でボールの位置が正確にわかるようにしましょう。 - 高さを変えて転がす
高さの設定は、例えば 5cm・10cm・15cm・20cm の4段階で行います。
このとき、生徒が「目線を下げて」「腰を屈めて」「そっと手を離す」ことがとても大事です。なぜなら、位置エネルギーの大きさは「高さ」で決まるから。スタートの高さを正確にしないと、信頼できるデータが得られません。


- 「仕事」の大きさを測定する
電池を斜面下に置いて「荷物」として使います。ボールが持つエネルギーが、この電池をどれだけ押し出せたか? その移動距離を測ることで「ボールがした仕事の大きさ」を捉えることができます。まさに、目に見えないエネルギーが「移動距離」という目に見える結果に変換される瞬間です!

実験の様子はこちらの動画をご覧ください。
驚くほどキレイ!実験結果と考察
こちらが、生徒たちが実際に取り組んだ実験結果の例です。

これらの結果をもとに、2種類のグラフを描かせてみました。
- グラフ1:高さと電池の移動距離の関係(質量は一定)
- グラフ2:ボールの質量と電池の移動距離の関係(高さは一定)
すると、どうでしょう?

左のグラフ(高さと仕事) 右のグラフ(質量と仕事)
グラフにしてみると、高さが大きいほど仕事(移動距離)が大きくなり、質量が大きいほど同様に仕事が大きくなるという、傾向が見られました。つまり、「高さを2倍にしたら、仕事もほぼ2倍」「質量を2倍にしたら、仕事もほぼ2倍」ということが、データからハッキリと読み取れたのです。
生徒たちも、教科書の中の「位置エネルギーは、高さと質量に比例する」という言葉が、自分たちの手で作り出したグラフに現れたことで、深く納得した様子でした。
実験をもっと深めるワークシート
生徒用の記録・考察用ワークシートも用意しています。ぜひご活用ください。
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