魔法?科学?金槌で叩くだけで、ただの鉄の棒が磁石に変わる!

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

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もし、ただの「鉄の棒」を金槌で叩くだけで磁石に変えられるとしたら、まるで魔法だと思いませんか?以前、理化学学会から依頼をうけて長野県で講演をしてきました。

【講演】黒板とタブレットの素敵な出会い 〜ある理科教師が見つけた未来の授業のカタチ〜@長野

そのとき、他の研究発表でまさにこの「鉄の棒を叩くだけで!磁石になる」という実験を見せてもらい、本当に驚きました。さっそく帰ってから自分でやってみたところ、確かに磁石になるんです! 生徒たちの前で見せたときも、「ええーっ!」と驚きの声があがりました。 これは本当に面白くて学びのある実験だ!ということで、ご紹介します。

叩いて作る!「地磁気コンパス」実験

準備するもの

鉄の棒(50cmくらい)、コンパス(方位磁針)、金槌

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実験の手順

0 まず、鉄の棒をコンパスに近づけてみましょう。コンパスは(ほとんど)動かないはずです。磁石ではないことを確認します。

1 鉄の棒の端を持ち、反対の端を北に向けます。少し先を地面のほうに傾けるのがポイント。これは、地球の作る磁場(地磁気)の方向に合わせるためです。(コンパスで北を確認し、棒の先端を少しお辞儀させるように傾けると良いでしょう)

2 手に持っている方の端(南側)を、金槌で3回くらい強く叩きます。

3 鉄の棒の先端(北側に向けていた方)をコンパスに近づけます。どうでしょう? コンパスのS極が引きつけられ、先っぽがN極の磁石になっているはずです!

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4 (さらにすごい実験)今度は、N極になった先端を「南」に向け、手に持っていた方を「北」に向けて、再度叩きます。先ほどまでN極だった方をコンパスに近づけると…今度はコンパスのN極が引きつけられ、S極に変化している(もしくはN極と反発する)はずです!

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5 最後に、鉄の棒を東西方向(地磁気と関係ない方向)に向けて何回か同じように叩きます。すると、鉄の棒の磁場が弱くなる(磁石でなくなる)ことも確認できます。

以上です。

タネあかし:なぜ叩くと磁石になるのか?

金槌で叩く(振動を与える)と、なぜ磁石になるのでしょうか?

実は、鉄の中には目に見えないほど小さな「磁石のタネ」のようなもの(これを専門用語で「磁区(じく)」と呼びます)がたくさん詰まっています。 普段、この磁区たちはバラバラな方向を向いているため、お互いの力を打ち消し合って、鉄全体としては磁石の力を持っていません。(これが手順0の状態です)

ところが、鉄の棒を地球の磁場(地磁気)の方向に向けた状態で、金槌で「ガツン!」と強く叩く(振動を与える)と、バラバラだった磁区たちが動きやすくなり、地球の磁力に導かれるように一斉に同じ方向に整列するのです!

磁区の向きがそろうことで、鉄の棒全体が磁石の力を持つようになる、という仕組みです。

地球は巨大な磁石

私たちが住む地球は、それ自体が巨大な磁石になっています。(だからコンパスの針は北を向くんですね) この実験は、目に見えない地球の磁力(地磁気)を利用して、鉄の中の小さな磁石たちを整列させる実験だったのです。

だからこそ、手順5のように東西(地磁気と関係ない方向)に向けて叩くと、せっかくそろった磁区が再びバラバラになり、磁力が弱まってしまうのです。

「地球の磁場でそんなことが起きるの!?」と、にわかには信じがたいかもしれません。でも、本当にできるんです。 身近な鉄の棒が、地球という惑星規模の力とつながる、とてもロマンのある実験です。ぜひご自宅でも試してみてくださいね!

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