折り紙カエルが物理学教材に!?「ぴょん!」に隠されたエネルギー変換の秘密
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
一枚の紙が、まるで命を吹き込まれたかのように「ぴょこん!」と跳びはねる。 子供の頃、誰もが一度は作ったかもしれない、あの「折り紙のカエル」。先日、久しぶりに子供と一緒に作ってみました。

作り方は意外と簡単ですが、侮れません。こちらのサイトに詳しく紹介されています。特に最後の「お尻」の部分。ここをしっかり折りたたんで「バネ」を作るところが、カエルのジャンプ力を決める最大のポイントです。
子供の小さな指ではなかなか力が入りきらず、「うまく飛ばない!」と悪戦苦闘。大人が少し手伝って、紙の弾力を最大限に活かせるよう、ぐっと力を込めて折り目をつけます。小学4年生くらい(高学年)になれば、一人でも立派な「アスリートガエル」を作れるようになるかもしれませんね。
さあ、完成です!
指でカエルのお尻を押さえて、そっと離す。


ぴょこん! 思わず「おおー!」と声が上がります。この単純な動きが、子供にとっては最高の遊び道具になります。そして、理科教師の血が騒ぐのもこの瞬間です。この「ぴょこん!」には、物理学のとても大切な概念が詰まっているんですよ。
カエルが跳ねる力はどこから? 魔法の正体「弾性エネルギー」
カエルが跳ねる仕組みは、お尻に仕込まれた「バネ」です。 指でカエルのお尻をぐっと押さえつける。このとき、私たちは紙(バネ)に対して「仕事」をしています。紙は「元に戻りたい!」と強く反発しようとしますよね。この、変形した物体が元に戻ろうとするときに蓄えているエネルギーのことを、物理の世界では「弾性エネルギー(だんせいエネルギー)」と呼びます。弓矢で弓を引いた状態や、縮めたバネが持っているエネルギーと同じものです。
そして、押さえていた指をスライドさせながら離すと……解放の瞬間です!
蓄えられていた「弾性エネルギー」は、カエルを前へ、上へと突き動かす力に変わります。つまり、動きのエネルギーである「運動エネルギー」に一気に変換されるのです!
エネルギーは七変化! カエルのジャンプを追いかけてみよう
カエルが飛び出してから着地するまで、エネルギーは次々と姿を変えていきます。まるでリレーのバトンパスのようです。このエネルギーの旅を一緒に追いかけてみましょう。
スタート前(指で押す) 指で押さえつけられたカエルは、「弾性エネルギー」を最大まで溜め込んでいます。(位置エネルギーも少しありますが、ここでは弾性エネルギーが主役です)
ジャンプの瞬間(手を離す) 「弾性エネルギー」が一気に解放され、カエルを動かす「運動エネルギー」に変換されます! カエルは最も速く飛び出します。
上昇中(空中へ) カエルは上へ上へと登っていきますが、だんだんスピードが落ちていきますね。これは、地球の重力に逆らっているためです。このとき、「運動エネルギー」は、高い場所にある物体が持つ「位置エネルギー」へと姿を変えています。
最高点 ジャンプのてっぺん。カエルが一瞬だけ止まる(ように見える)瞬間です。ここでは速さ(運動エネルギー)が小さくなり、溜め込んだエネルギーのほとんどが「位置エネルギー」になっています。
落下中 今度は「位置エネルギー」を「運動エネルギー」に再び変換しながら、重力に従って落ちていきます。だんだん速くなりますね。
着地(ゴール) 「ペチッ!」という音と共に着地。持っていた運動エネルギーは、最終的に「音エネルギー」や、床やカエル自身との摩擦による「熱エネルギー」へと変わり、今回のエネルギーの旅は終わりを迎えます。
このように、エネルギーは「弾性エネルギー」→「運動エネルギー」→「位置エネルギー」→「運動エネルギー」→「音・熱エネルギー」というように、次々と姿を変えていきます。でも、その総量は(空気抵抗などを無視すれば)変わらない。これが「エネルギー保存の法則」の考え方です。
たった一枚の折り紙が教えてくれる、壮大なエネルギーの物語。 皆さんもカエルを飛ばすとき、ぜひこの「エネルギーの移り変わり」を感じてみてください。いつもの遊びが、もっと面白く見えてくるはずですよ!
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