【感動】4日間回り続けたダニエル電池! 4日後の「キラキラ」と「ボロボロ」の訳

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

みなさんが毎日使っているスマートフォン。その中には「リチウムイオン電池」という、何度も充電できる高性能な電池が入っています。では、そのずっと昔、1836年に発明された「電池のご先祖様」とも言える電池を見たことはありますか?今日は、化学の力で電気を生み出し、その「化学変化」の瞬間を私たちにハッキリと見せてくれる「ダニエル電池」の感動的な実験の様子をご紹介します。

こちらが、今回実験で使ったダニエル電池です。

ダニエル電池は、「亜鉛(あえん)」「銅(どう)」という2種類の金属が、水溶液の中でイオンになろうとする力の差(イオン化傾向の差)を利用して電気を取り出す装置です。簡単に言うと、「亜鉛が溶けて電子(電気の粒)を放り出し、その電子が銅板に移動し、水溶液の中の銅イオンに電子を渡す」という化学反応で電気が流れます。

ダニエル電池の仕組み(動画)

この化学反応がどれだけ長く続くのか?同僚の先生が、このダニエル電池に小さなプロペラをつないだところ、なんと4日間くらいプロペラを回し続けたのです! まだまだ回る勢いでした。化学の力が、ゆっくりと、しかし確実に電気エネルギーを生み出し続けている証拠ですね。

4日後、金属板はどうなった?

さて、電気が流れた(=化学反応が進んだ)ということは、金属板に変化が起きているはずです。4日後の金属板の様子を観察してみました。

【+極:銅板】キラキラと輝く「感動」の結晶

まずはプラス極の銅板です。

これは感動しました。もともとツルツルだった銅板の表面に、何かがびっしりと付着しています。拡大してみると…

キラキラとラメのように銅がついています!これは、水溶液の中にいた「銅イオン(Cu^{2+})」が、亜鉛板から流れてきた電子(e^-)を受け取って、金属の「銅(Cu)」に戻った姿です。目に見えない電子のやり取りが、目に見える「金属の結晶」として現れる。これぞ化学の醍醐味です。

【-極:亜鉛板】ボロボロになった「犠牲」の姿

次にマイナス極の亜鉛板です。こちらは銅板とは対照的に、ボロボロになっていました。さわると手が黒くなります。拡大すると、そのすさまじさが分かります。

これは、金属の「亜鉛(Zn)」が電子(e^-)を放り出して、「亜鉛イオン(Zn^{2+})」として水溶液に溶け出していった結果です。亜鉛が自ら(ある意味、犠牲になって)溶けることで、電気が生み出されていたわけですね。下にも、溶け落ちた亜鉛や不純物でしょうか、黒い粉がボトボトと落ちています。

面白いですね。なお、生徒が1人1人で実験をおこなうダニエル電池については、こちらにまとめました。これは100円ショップで買ってきたセロハンで行うというものです。もしよろしければお試しください。

準備が楽々「ハンバーガー式ダニエル電池」で生徒の探究心を刺激!

ダニエル電池は「充電」できるのか?

さて、この実験を見て、次のような鋭いコメントをいただきました。

何回かの充電が可能かもしれませんね。昔は二次電池って習いました。ダニエル電池の負極側が硫酸亜鉛液になってるのは、もともと充電も考えてのことですよね。

なるほど!スマホのように「充電」できれば、ボロボロになった亜鉛板も元通りになるかもしれません。「充電」とは、外部から電気エネルギーを与えて、起きた化学反応を「逆再生」させることです。(硫酸亜鉛水溶液は、飽和食塩水と取り替えても電池になるのですが、もしかしてダニエルさんが充電もできるようにと考えて、わざわざ硫酸亜鉛水溶液を選んだのでは?という指摘ですね。)気になって調べてみると、まさに「ダニエル電池を充電するとどうなるか」という論文をみつけました。

充電を始めると、最初は狙い通り「逆反応」が起きて、亜鉛が元に戻ろうとする。しかし、充電を続けると銅イオンが亜鉛板の近くまで来てしまう。そして「銅樹(どうじゅ)」と呼ばれる、木の枝のような鋭い銅の結晶ができてしまい、これが仕切り(セロハン)を突き破ってショート! 異常発熱が起きて危険!ということが分かりました。

なるほど。ダニエル電池は「充電(二次電池)」としては不十分だったのですね。だから「使い切り(一次電池)」として歴史に名を刻んだわけです。目に見える変化から、電池の仕組み、さらには「なぜ充電池になれなかったのか」という歴史まで繋がっていく。ダニエル電池は本当に奥が深いですね!

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