お寿司の「正体」知ってる?親子でハマる『おすしのずかん』が理科の教材として最高だった
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

これがうわさの「おすしのずかん」!赤身のページ
みなさんは、お寿司が好きですか? 回転寿司に行くと、ついつい手が伸びてしまうお気に入りのネタがあると思います。 でも、その美味しい「切り身」が、海を泳いでいるときどんな姿をしていたか、パッと思い浮かべることはできますか?
今日は、子供も大人も「えっ、君ってそんな姿だったの!?」と驚きながら楽しめる、素敵な理科の絵本をご紹介します。雑誌『コドモエ』の付録として話題になり、あまりの人気に単行本化されたという「おすしのずかん」です。

お寿司屋さんから始まる「生物学」
「図鑑」という響きだけで理科好きの血が騒ぐのですが、テーマが「おすし」というのはユニークですよね。 ページを開くと、まず目に飛び込んでくるのは、お皿に乗った美味しそうなお寿司の行列です。
最初は「赤身」のページ。マグロやカツオなど、赤色のネタがずらりと並んでいます。 この絵がまたリアルで、見ているだけでお腹が空いてきそうです。「僕はビントロが好きだな」「私はやっぱり中トロ!」なんて、まずは普段の食事の感覚で楽しめます。

ここまでは、ただの美味しそうな絵本。しかし、この本の真骨頂はページをめくった瞬間にあります。
切り身の「正体」とご対面!
さきほどの「ビントロマグロ」を頭に浮かべながら、次のページをめくると……なんと!

なんだこれは〜〜!!
そこには、切り身になる前の「生きている姿」が描かれているのです。 「ビントロ」の正体は、「ビンナガマグロ」という魚。「ビン」と呼ばれる長い胸ビレが特徴で、私たちが想像する巨大な黒マグロに比べると、意外と小ぶりな魚体であることなどが一目でわかります。
普段食べている「モノ」から興味を引きつけ、その裏側にある「イキモノ」の姿を見せる。この構成には感動しました。 「食」と「生物」がつながる瞬間こそ、最高の理科教育なんですよね。
サーモンは実は「白身魚」!?科学的な豆知識も
この本、ただ絵が面白いだけではありません。白身のにぎりや軍艦にぎりなど、様々なネタと元の生き物が紹介されていくのですが、巻末には大人も驚くような科学的な解説も載っています。
特に面白かったのが、「サーモンは、身は赤いけれど、実は白身魚の仲間である」という記述です。
これ、ご存知でしたか? 理科の知識で少し補足しましょう。魚の赤身と白身の違いは、筋肉に含まれる「色素タンパク質(ミオグロビン)」の量で決まります。 マグロやカツオのように、広大な海を休まず泳ぎ続ける回遊魚は、酸素をたくさん運ぶために筋肉が赤くなります。これが「赤身魚」です。 一方、タイやヒラメのように、普段はじっとしていて獲物を狙う瞬発力型の魚は、筋肉が白っぽくなります。これが「白身魚」です。
ではサーモンは? サーモン(サケ)は川を遡上するスタミナがあるように見えますが、分類上は「白身魚」なんです。あの身が赤いのは、エサとして食べているオキアミなどに含まれる「アスタキサンチン」という赤い色素が体にたまっているから。フラミンゴが赤いのと同じ理由なんですね。
こうした豆知識が、「本来は白身ですが、赤身のページに載せています」といった注意書きとして添えられているのがとても誠実で、勉強になります。
お寿司を食べながら「この魚、海ではどんな形か知ってる?」とクイズを出したくなる、学びの詰まった一冊。ぜひ親子で読んでみてくださいね。
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