松ぼっくりはどこから来る?マツの花と種の秘密を探る観察授業!(中1 生物)

桑子研
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中学校理科「マツの観察授業」実践レポート

中学1年生の生物分野「マツ」の単元では、裸子植物の特徴を学ぶことが主な目的となります。同僚のY先生が、校庭にあるマツの木をそのまま切り取って教室に持ち込むという豪快な実践をされていました。この方法なら、マツの花や葉、松ぼっくり(球果)まで間近で観察でき、生徒たちの興味を引きつけやすくなります。

しかし、今年は花の観察には少し時期が遅かったようで、雄花・雌花の状態があまり良くなかったとのこと。実際の授業では、適切な時期に採取することが重要です。授業準備として、マツの花の開花時期を事前に確認し、観察用のサンプルを確保しておくとより良い授業ができるでしょう。


授業準備と進め方

1. 事前準備

必要なもの

• 校庭または周辺で採取できる マツの枝(花付き)

ルーペ(花や球果の細部を観察)

スケッチ用紙・筆記用具(生徒が形態を記録)

松ぼっくり(成熟・未成熟)(果実の発達過程を比較)

採取のタイミング

雄花・雌花の観察 → 4月~5月(地域による差あり)

松ぼっくり(未成熟) → 6月~8月

成熟した松ぼっくり → 秋以降

2. 観察の流れ

① マツの基本的な特徴を確認

 まず、生徒に「マツはどんな植物か?」と問いかけ、双子葉類とは異なる裸子植物の特徴を考えさせます。

マツの特徴

裸子植物(子房がなく、胚珠がむき出し)

針状の葉(乾燥に強い)

球果(松ぼっくり)で種子を作る

この後、実物のマツの枝や花を手に取って観察しながら学習を進めます。

② 雄花・雌花の観察

大きく育つと、マツは花をつけるようになります。マツの花はちょっと変わっていて…

雄花(おばな):花粉をつくる。春、枝の先にたくさんつく。

雌花(めばな):将来マツボックリになる部分。最初は小さくて目立たない。

• マツの雄花は、枝の下部に多数つく小さな黄色っぽい花。 雄花が花粉を出す。

 花粉は風に乗って雌花へ届く。虫じゃなく風に頼る「風媒花」です。 雌花の先には粘液があり、そこに花粉がくっつく。

 花粉が雌花についたあと、実はすぐに受精しません!なんと受粉から約1年後に、やっと花粉管がのびて卵細胞と受精するんです。 受精した胚(はい)がゆっくり時間をかけて種になります

生徒にスケッチをさせながら、花の形や付き方を意識させると理解が深まります。頂上に松の雌花がさいているところで、雄花がこの下についていたものと思われます。

③ 松ぼっくりの発達過程を観察

 雌花は**固くなってマツボックリ(球果)**になります。

未成熟の松ぼっくり(緑色で柔らかい)

下の方についています。

成熟した松ぼっくり(茶色で鱗片が開いている)

中には種子が何枚も入っていて、羽根のような構造がついています。

・秋ごろになるとマツボックリが開き、種子が風に乗って飛び立つ

• ルーペで見ると、りん片1つに2つの種子がついていることが確認できる。

マツの種の飛ぶ様子について、NHKでまとめられています

若い松(直島のベネッセハウス ミュージアム にて撮影)

 飛んでいった種子が地面に落ち、また条件がそろえば発芽 春になると、地面に落ちた種が水と温度を条件に発芽します。小さな根(主根)が伸びて土に入り、芽が地表に顔を出します。

 最初は**双葉(ふたば)**ではなく、針のような細長い葉が出ます。

 その後、**本葉(針葉)**が増えていき、少しずつ「マツっぽい見た目」になっていきます。

 根はまっすぐ下へ伸びる直根(ちょっこん)型で、乾いた土地でも水を吸えるようになっています。

④ 松の適応戦略と生育環境

関東ローム層に生えるマツ → 砂質で水はけが良くても生きられる。

崖の上に生えることが多い → 栄養の少ない土地でも成長可能。

「一本松」「二本松」の地名の由来 → 遠くからでも松が目立つことに由来する。

社会科の先生とコラボすると、地名の由来や植生との関連が学べて面白くなります。

授業のポイントと発展学習

マツの生態に関する発展的な問いかけ

• なぜマツの葉は細いのか?

• なぜ松ぼっくりは乾燥すると開き、湿ると閉じるのか?

• どのようにしてマツの種は広がるのか?

NHKの動画などを活用して、マツの種子散布の様子を紹介すると、より興味を引きやすくなります。

「マツ」の単元を活かしたSTEAM的アプローチ

アート(美術)との連携 → 松ぼっくりを使った工作やスケッチ

社会との関連 → 松の植生と地名の関係を調べる

環境問題との関連 → マツ林の減少や松くい虫被害について調べる

まとめ

中学1年生の「マツ」の単元では、実物を用いた観察がとても効果的です。時期に合わせてマツの枝や花を採取し、スケッチやルーペ観察を取り入れることで、生徒の興味関心を引き出すことができます。また、社会科とのコラボや、発展的な学びにつなげるとより深い理解が得られるでしょう。

授業準備の際は、適切な採取時期の確認と、観察道具(ルーペ・スケッチ用紙)の用意が重要です。生徒の「なぜ?」を引き出しながら、実践的な観察を楽しんでください!

参考

葉山の海沿いに植えられていたマツを観察しました。松林の中を歩いていると、ちょうどマツの花が咲いているところに出会いました。マツの花といえば、地味なイメージがあるかもしれませんが、実はとても面白い特徴を持っています。

試しに雄花を触ってみると、たくさんの花粉が舞い上がりました。花粉の量が多く、動画にもバッチリ映るほどでした。風で遠くまで運ばれるように、大量の花粉を放出するのがマツの特徴のひとつです。ぜひこちらの動画をご覧ください。

さらに、たくさんのマツの花が咲いていたので、写真にも収めてきました。よく見ると、若い松ぼっくり(球果)もついていて、とてもかわいらしかったです。

マツの花には雄花と雌花があります。頂上についている2つの小さな赤い芽のようなものが「雌花」、下の方にたくさんぶら下がっている茶色の芋虫のようなものが「雄花」です。

雌花がよく見えるように拡大。

雌花は風に乗って飛んできた花粉を受け取り、受粉すると、やがて成長してマツカサ(松ぼっくり)になります。マツカサは一つ前のメバナが変化したもの。

つまり、私たちがよく見かけるマツカサは、もともとは前年の雌花が変化したものなのです。そう考えると、松ぼっくりの成長の過程も興味深く感じますね。マツについては、NHKforSchoolの動画教材もおすすめです。

 こちらは三溪園巡検で3月に撮った写真です。

こちらが松の幹です。ゴツゴツした感じですね。

 

こちらは4月に千葉市で撮った写真です。

 前年の雌花がマツカサ(マツボックリ)になること。

理科ネットより引用 https://rika-net.com/contents/cp0310/contents/library/pi-03/pi-03.html

閲覧日:2021-10-14

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