普通の電池と何が違う? アフリカで活躍する「液漏れゼロ」の不思議な電源装置
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
久しぶりに引き出しの奥から懐中電灯を取り出したら、電池が液漏れをしていてベトベトになっていた……なんて経験はありませんか? 「電池」につきものの、あの厄介な液漏れトラブル。もしも、その心配が全くない夢のような電池があるとしたら、見てみたいと思いませんか?
先日、理科機器メーカーの「ナリカ」さんへ打ち合わせに行った際、まさにそんな「液もれの起こらない電池」を見せていただきました。その正体がこちらです。

30秒でわかる! 不思議な電池の仕組み
一見すると、少し大きな乾電池のように見えます。しかし、よく観察してみてください。普通の乾電池にはない特徴があります。 そう、接続端子が4つもついているのです。使い方もユニークです。 まず、上の2箇所の端子に「手回し発電機」をつないで、ハンドルを回して電気を送り込みます(充電)。

十分に電気がたまったら、今度は両脇にある端子を使います。ここへ豆電球やモーターなどをつなぐと、安定した1.5Vの電圧が供給され、実験に使うことができるのです。

電池であって電池じゃない? その正体は「コンデンサー」
面白いですよね。でも、なぜ「液漏れしない」と言い切れるのでしょうか。 その秘密は、本体の表示をよく見てみるとわかります。

そこには「コンデンサー」という文字が書かれています。
私たちが普段使う乾電池は、内部で「化学反応」を起こして電気を作っています。そのため、長く放置すると化学物質が変化して、液漏れを起こすリスクがあります。 一方でコンデンサーは、電気を「そのまま蓄える」装置です。化学反応を使わないため、原理的に液漏れが起こりません。
この装置の中には「電気二重層コンデンサー」という、大容量の電気がためられる特別なコンデンサーが入っています。 ただ、コンデンサーには「電気が減ると電圧も下がってしまう」という弱点があります。そこで、この装置は内部の回路で「常に1.5Vが出力されるように変換」しているのです。
この工夫のおかげで、普通の乾電池と同じ感覚で理科の実験に使えるというわけですね。
ケニアの理科教育を救うテクノロジー
「でも、わざわざこんな装置を使わなくても……」と思った方もいるかもしれません。 実はこの製品には、ある弱点があります。1.5Vに変換する回路自体が電気を使うため、一度充電してから30分程度しか使えないのです。
では、一体どこで活躍しているのでしょうか? 担当の方に伺うと、なんと「アフリカのケニアで、理科教育のために使われている」のだそうです。

ケニアのような環境では、普通の乾電池は温度変化や品質の問題ですぐに液漏れを起こし、使い物にならなくなってしまうことが多いのだとか。また、そもそも学校に電池を買い続ける予算がないという事情もあります。
そんなとき、この「コンデンサー電池」なら、手回し発電機さえあれば何度でも充電して使えます。液漏れで壊れることもありません。 「いつでも、どこでも、何度でも実験ができる」というタフさが、海を越えて子供たちの学びを支えているのです。
最先端の技術が、意外な場所で意外な形で役に立っている。科学の面白さは、こんなところにも隠れています。
お問い合わせ・ご依頼について
科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・科学のネタ帳の内容が本になりました。詳しくはこちら
・運営者の桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中!
科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!


