キッチンは実験室だ! 固いフタを簡単に開ける「シリコンオープナー」の秘密(摩擦力・力のモーメントの利用)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
キッチンという場所は、毎日料理を作る場所であると同時に、実はもっとも身近な「科学の実験室」でもあります。先日、我が家のキッチンで不思議な物体を見つけました。 さて、これは一体何でしょうか?

長らくキッチンに置かれていて、家族は当たり前のように使っているようなのですが、僕は最初、これが何なのかよくわかりませんでした。クラゲのような、スライムのような……。いったい、何に使うんだろう? みなさんは、これが何につかうものかわかりますか??
正解はこちらです。
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朝の食卓での「開かない」事件
ある日の朝、トーストにジャムを塗って食べようとしていたときのことです。 「フタが固くて開かない!」という、誰もが経験したことのあるあの状況になりました。
いつもなら「ちょっと開けて」と頼まれるのですが、そのときは僕が別の作業をしていて手が離せませんでした。 すると家族は、例の「謎の物体」をサッと取り出し、ジャムのフタにかぶせたのです。

物体はフタにぴたりと密着しました。そして……

軽く回すと、あれほど固かったフタが見事に開きました。 ああ! こういう道具だったのか、と感心して眺めてしまいました。
固いフタを開ける「摩擦」の科学
気になってすぐにどんな商品なのか調べましたが、実店舗では見かけず、通販サイトで見つかりました。シリコン製のオープナーという商品なのですね。

では、なぜこれを使うと簡単にフタが開くのでしょうか? ここには理科で習う「摩擦力(まさつりょく)」が大きく関係しています。素手で固いフタを開けようとすると、どうしても手が滑ってしまいますよね。これは、手とフタの間の摩擦力が小さい(滑りやすい)ため、回そうとする力が逃げてしまうからです。
ここで登場するのがシリコンです。シリコンという素材は、非常に摩擦係数(まさつけいすう)が高い、つまり「滑りにくい」性質を持っています。 これをフタと手の間に挟むことで、手の力を無駄なくフタに伝えることができるようになります。
さらに、このオープナーには少し厚みがあります。 理科では、回転させる力の働きを「力のモーメント」と呼びますが、回転の中心(フタの中心)から力を加える点(フタの縁)までの距離が遠くなるほど、小さな力で回せるようになります。 シリコンの厚みの分だけフタの直径がわずかに大きくなるため、「偶力(ぐうりょく)」の効率もアップし、より回しやすくなっているのかもしれませんね。
何気なく置かれているキッチングッズですが、見渡せばいろいろなところに科学の原理が隠れています。
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