目の前で見るから面白い!中高生を夢中にさせる「慣性」のダイナミックな実験「大型台車」
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「新幹線の中でジャンプをしたら、時速300kmで迫ってくる後ろの壁に激突してしまうんじゃないか?」
皆さんはそんな想像をしたことはありませんか? あるいは生徒からそんな素朴な疑問を投げかけられたことはないでしょうか。頭では「ぶつからない」とわかっていても、実際に目の前で確かめるまでは、どこか腑に落ちないのが人間の感覚というものです。そんな疑問をスッキリ解消できる素晴らしい実験器具を導入しました。ナリカから発売された、力学台車の下にひく力学台車「大型台車」を買いました。これが演示実験に最高に役立つのです。


百聞は一見にしかず!まずは動画をご覧ください
言葉で説明するよりも、実際の動きを見ていただくのが一番です。この台車を使って、いろいろなパターンを試してみました。(なんと、この動画がナリカさんの公式サイトにも掲載されました!)
私たちの直感を裏切る「慣性の法則」の不思議
動画はいかがでしたか? 台車が動いているのに、真上に打ち上げられた球が、見事に元の位置(台車の上)にストンと戻ってくる様子は、何度見ても不思議な感覚に襲われます。このように、物体がその運動状態(止まっているものは止まり続け、動いているものは動き続けようとする性質)を保とうとする働きを「慣性の法則」といいます。中学理科の物理分野における最大の山場の一つですね。


実は、私たち人間は本能的に「アリストテレス的な自然観」(力がないと物は止まるという感覚)を持っています。だからこそ、ガリレオやニュートンが発見したこの「慣性」という概念は、日常の感覚と少しズレていて、理解するのが難しいのです。
例えば、新幹線の中で飛んでいるハエを想像してみてください。あの小さなハエも、実は新幹線と同じ時速数100kmで移動しながら飛んでいるのです。窓の外から見れば猛スピードで移動しているハエが、車内では止まっているように見える。この「相対速度」と「慣性」のマジックこそが、物理学の面白さです。
斜面を使った実験などは高校入試でも頻出ですが、紙の上だけで考えるのではなく、こうして実物を見ると記憶に鮮烈に残ります。
「大人のピタゴラスイッチ」の世界を教室で
実は、動く台車の上でさらに別の動きをさせるという装置は、NHKの教育番組「大人のピタゴラスイッチ」でも紹介されていて、個人的に憧れの実験でした。


前々から再現してみたいと思い、これまでは小型のものを自作していました。しかし、やはり既製品の「大型台車」は安定感が違います。 サイズが大きいと教室の後ろの席の生徒まで動きがはっきり見えますし、「おおっ!」という感動の声も大きくなります。
まさか、従来からある力学台車を「乗せる側」に使うという発想はありませんでした。既存の実験器具を活かす、素晴らしいアイデア製品だと思います。これは大型台車でも同様に行うことができます。

中学から高校まで、長く使える実験教材
この実験は、中学生には「慣性の法則」の導入として最適ですが、実は高校物理でも活躍します。 台車の上にカメラを載せて動画を撮れば、動いている観測者から見た力、つまり「慣性力(見かけの力)」の理解へとつなげることもできます。
中学・高校を問わず、物理の授業のいろいろなシーンで、生徒たちの知的好奇心を刺激してくれそうです。
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