まるで生き物!磁石に反応して変幻自在に動く「磁性流体」の神秘

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

まるで生き物のように動き、姿を変える不思議な黒い液体。皆さんは見たことがありますか? 一見するとただのインクや油のように見えますが、磁石を近づけると驚くべき変化を見せるこの物質。

今回は、科学の力で「見えない力」を可視化する、驚きの実験装置をご紹介します。先日の浜松講演にいったときに、K先生から磁性流体を見せていただきました。それがこちらです。

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右上の小瓶に磁性流体が入っていて、下の装置はK先生が手作りしたとのことです。 手作りとは思えないほど精巧な装置に、実験前から期待が高まります。

NASAも研究した不思議な液体「磁性流体」

磁性流体はドロっとした油のような感じの液体でした。これをこの下の小瓶の中に注ぎます。実はこの磁性流体、もともとはNASA(アメリカ航空宇宙局)が、無重力の宇宙空間で燃料を移動させるために開発した技術が元になっています。液体の中に、ナノレベル(ものすごく小さい!)の磁性微粒子が、界面活性剤のおかげで沈殿せずに均一に混ざっているのです。つまり、「液体なのに磁石にくっつく」という矛盾した性質を持った、非常にユニークな物質なのです。

まるで魔法!「スパイク現象」の発生

小瓶の中央に尖った金属があり、下に設置されたコイルに電流を流して、磁場を作ると、磁性流体がみるみると規則的な形に変わっていきます。何もないツルッとした液面から、突如としてトゲトゲが生えてくる様子は、まるでSF映画のワンシーンのようです。 こちらを御覧ください。

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もう大感動でした。

なぜトゲトゲの形になるの?

なぜこのような形になるのか?については、その場ではわからなかったのですが、これは物理学で「スパイク現象」(またはローゼンツワイグ不安定性)と呼ばれる現象です。

磁石の力が液体を「引っ張り上げようとする力」と、液体の表面張力や重力が「丸くまとまろうとする力」がせめぎ合い、釣り合った結果、このような美しいトゲ(スパイク)の形が生まれます。このトゲの形は、まさに磁力線(磁石の力の流れ)に沿って形成されています。普段は見ることのできない「磁場」という空間の歪みを、こうして目に見える形で可視化できるのは、教育的にも非常に価値がありますね。

実際に授業でみせると、生徒たちは「うわっ!」「生きてる!」と大盛り上がりするそうです。 教科書の図を見るだけでは伝わらない感動が、この小さな瓶の中には詰まっていました。

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