汚れは「落とす」のではなく「変身」させる!?洗剤の驚異の化学(お掃除の化学)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「お掃除は、化学だ!」

そう思ったことはありませんか?お家のシンクの下や棚の中を覗いてみると、酸性、アルカリ性、中性……と、いろいろな種類の洗剤が並んでいますよね。「どれも同じ汚れ落としでしょ?」と思ったら大間違い。実は、洗剤のボトル一つひとつに、汚れという「敵」を攻略するための独自の「戦術」が詰め込まれているのです。

そもそもお掃除洗剤には酸やアルカリ・中性洗剤などいろいろな洗剤があります。これらは何がどう違うのでしょうか。科学的に分析をしていきたいとおもいます。

中性洗剤:新しい油汚れは界面活性剤で汚れを流す!

アルカリ性洗剤:しつこい古い油汚れを「石鹸」に変えて分解する!

酸性洗剤:水垢などの「岩石汚れ」を溶かして流す!

塩素系:漂白・酸化の力で色も菌もヌメリも「破壊」する!

中性洗剤(軽度な油汚れ)

Amazon 中性洗剤

中性洗剤など、多くの洗剤(界面活性剤)が得意とするのは、分子そのものは壊さず、「汚れがくっついている状態」を解除するパターンです。アルカリ性洗剤も油には聞きますが、中性洗剤の方が汚れを落とす力は強くありませんが、油汚れの中でも新しいものには特に効きますので、日々のお掃除に向いています。

中性洗剤については記事が長くなってしまったので、こちらに分離しました。ご参照ください。

中性洗剤の秘密!界面活性剤についてのまとめ(お掃除の化学)

アルカリ性の洗剤(頑固な油汚れ)

酸・アルカリという言葉を聞いたことがあると思いますが、アルカリは塩基の中で特に水溶液に限って用いられている用語です。お掃除に用いられる塩基性(アルカリ性)のものは、強アルカリのものに水酸化ナトリウム、安全性の高いものに、炭酸水素ナトリウム(pH8.2〜8.4)、炭酸ナトリウム(pH11〜12)、セスキ炭酸ナトリウム(pHおよそ9.8 炭酸水素ナトリウム+炭酸ナトリウムと考えるといいと思います) などがあります。

アルカリ性洗剤については記事が長くなってしまったのでこ、ちららをご覧ください。

アルカリ性の洗剤(頑固な油汚れ)に効く科学的な意味

酸性の洗剤(水垢汚れ)

amazon クエン酸

クエン酸

粉タイプの方がお得ですね。溶かして使いましょう。

多くの頑固な汚れは水に溶けにくい性質を持っています。例えば、お風呂場の鏡につく白い「水アカ」が代表的です。水アカは金属汚れと言いますが、金属汚れとは水に溶けにくいカルシウム塩、マグネシウム塩、鉄酸化物などを指します。専門業者は水アカをスケールと呼びます。

水道水には、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどのミネラル分がわずかに溶け込んでいます。水滴が蒸発すると、水だけが気体になって空気中へ逃げていき、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが析出します。これが白いウロコ状の水垢の正体です。家庭だとポットの中や、浴室に鏡、トイレの水が出るところなどに水アカが溜まりやすいですね。

こちらは鏡の水アカです。中性洗剤で拭いてもなかなか落ちません。

トイレの水アカ。カリカリ硬くて、なかなか取れません。

また鉄イオンは無色の第一鉄イオンFe2+として溶けていますが、酸化されると第二鉄イオンFe3+となり、茶褐色で、溶解生が低下します。そしてサビと呼ばれる酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3となると、水に溶けません。

酸にも「得意・不得意」がある!種類を知ることが大切です

汚れを落とすときによく使われるのが「酸」です。ここでの化学反応の核心は「酸とアルカリ性の炭酸塩との中和・分解反応」です。水垢の主成分である炭酸カルシウムは、化学的には弱アルカリ性の性質を持つ塩(えん)です。ここにクエン酸や酢酸などの酸性物質を加えると、次のような反応で分解されます。

炭酸カルシウムが酸と反応すると、水に溶けやすいカルシウムイオンと、水、そして二酸化炭素の泡に分解されます。固形物だった水垢が水に溶ける形に変わるため、洗い流せるようになるわけです。

この実験の有名なところで言うと、生卵をお酢に漬けるというものがあります。殻(炭酸カルシウム)が溶けて、プニプニと弾む透明な「スケルトン卵(酢卵)」ができます。

    1. 容器に生卵を入れ、お酢をたっぷり注ぎます。
    2. フタを軽く乗せるかラップをかけ、冷蔵庫や冷暗所に 2〜3日 置きます。
    3. 殻が溶けたら取り出し、水道の弱い水流で表面の薄皮の残り優しく洗い流します。

卵の殻の主成分である炭酸カルシウムとお酢の酢酸が化学反応を起こし、二酸化炭素の泡を出しながら殻が溶けていきます。

しかし、酸ならなんでも同じように汚れを溶かせるわけではありません。酸の種類によって、溶かせる汚れ・溶かせない汚れがあるので、それぞれの性質を知っておくことがとても大切です。

塩酸はオールラウンダー、酢酸・クエン酸は少し苦手なものも

たとえば塩酸は、水酸化鉄(Ⅲ)も、水回りの白い汚れの正体である炭酸カルシウムも、どちらもよく溶かすことができます。

クエン酸は安全な有機酸です。炭酸カルシウムを溶かすのは得意なのですが、水酸化鉄(Ⅲ)を溶かす力はあまり強くありません。また処理後にすぐに水ですすがないと、汚れが析出することがあります。これはクエン酸が、カルシウムイオンと反応して生じるクエン酸カルシウムやマグネシウムイオンと反応して生じるクエン酸マグネシウムが水溶性に乏しいためです。また、サビ汚れには不向きなので、注意が必要です。

また酢酸も安全な有機酸です。カルシウムの水アカには効果的ですが、鉄汚れには効果が低いので、クエン酸と同じような感じですね。ナチュラルクリーニングでは酢酸が使われることがあります。

また、硫酸とカルシウムが結びつくと硫酸カルシウムという物質ができますが、これは水に溶けにくい性質を持っています。そのため、硫酸はカルシウムの汚れやマグネシウムの汚れを落とすのには向いていません。汚れを溶かすどころか、逆に溶けにくい物質を新しく作ってしまう可能性があるのです。

クエン酸を使うときは「放置しすぎ」に注意!

クエン酸は炭酸カルシウムをよく溶かしてくれる、頼れる酸です。ただし一つだけ落とし穴があります。クエン酸を使って掃除したあと、そのまま長時間放置してしまうと、クエン酸カルシウムという不溶性の塩(水に溶けにくい物質)ができてしまうことがあるのです。こうなると、せっかく溶かした汚れよりもさらに除去しにくい汚れに変わってしまいます。クエン酸で掃除するときは、放置しすぎず、しっかり洗い流すことがポイントです。

参考:「洗浄・洗剤の基本と仕組み」(秀和システム)

炭酸カルシウムはどうやって落ちるのか?化学式を見てみよう!

水垢の主成分である炭酸カルシウムはアルカリ性寄りの性質を持っています。ここに酸性の洗剤(クエン酸)をかけることによって、次のような中和反応が起きます。

ここで注目してほしいのは、右側の「反応後」の姿です。

  • カルシウムイオンこれは水に溶ける状態です。

  • 水: もちろん液体です。

  • 二酸化炭素: シュワシュワとした泡(気体)になって逃げていきます。

つまり、「水に溶けない固形物」が、反応した瞬間に「水に溶ける成分」と「ガス」に作り変えられてしまうのです。化学反応式で書くとこのように書けます(例えば酢酸を使った場合)。

この反応の結果、カチカチだった炭酸カルシウムは、酢酸カルシウムという「水によく溶ける塩」に姿を変えます。「固まってこびりついていた物質」が「水に溶け込むイオン」にバラバラになるから、シャワーで流すだけでツルッと落ちるようになるわけです。

 炭酸カルシウムが酸で落ちるのは、酸が石の結合を化学的に切断し、別の物質に変えることで、結果的に水と一緒に流せるようにしているからです。ですから、水に溶けにくい性質を持っていても、酸さえあれば表面からどんどん削り取っていくことができるわけですね。コップについた白い水あかを落とす効果もあります。

非常に濃いクエン酸水溶液を作ります。キッチンペーパーに染み込ませて、ぐるぐる巻きにします。これで1時間おきました。

1時間後の様子です。

かなり石が落ちました。水アカを落とすためのスポンジで軽く擦っていきます。

綺麗に取れました!

電子レンジのお掃除にもクエン酸!

電子レンジのお掃除にクエン酸をつくかうと、匂い取りとしても効果があります。クエン酸には消臭効果もあり、生ものや魚を温めた後の庫内のニオイ取りにも向いています。方法は次のとおりです。

1 耐熱容器に水200ml程度と、クエン酸(レモン汁小さじ1〜2でも可)を入れる

2 500〜600Wで3〜5分加熱し、庫内を蒸気で満たす

3 加熱後すぐに開けず5〜10分放置(余熱で汚れをふやかす)

4 布で拭き取る

ただし、油汚れは酸性寄りの性質を持つため、同じ酸性のクエン酸では中和反応が起きにくく、分解力は以下の記事にある重曹(アルカリ性)よりは劣ります。レンジに頑固な油汚れが残る場合は、追加でアルカリ系でお掃除するといいですね。

塩酸のような強酸が皮膚に触れると、複数の化学反応が同時に進行して組織を傷つけます。仕組みを整理してご説明します。

強酸性の物質の怖さ→タンパク質の「変性」

水酸化ナトリウムなど強アルカリ性のものについては、脂質のケン化や、タンパク質を加水分解によて切って分解して溶かしていくという怖さがありますが、塩酸のように強酸性のものの怖さとは何でしょうか。

強酸は水素イオン(H⁺)を大量に放出するため、これがタンパク質分子の立体構造を保っている水素結合んど、電荷バランスを壊してしまいます。その結果、タンパク質は本来の構造(立体構造)を失ってしまい、変性します。

ポーチドエッグでお馴染みですが、卵を酢に漬けると白身が固まってくるのと似た現象が、皮膚のタンパク質でも起こるわけです。変性したタンパク質は本来の機能を失い、硬くなります。これが塩酸による化学熱傷の正体です。

参考:酸によるやけどは「凝固壊死」と呼ばれるタイプの損傷を起こします。タンパク質が変性して硬苦なり膜を作るため、この膜がある程度それ以上の酸の浸透にブレーキをかける働きをします。そのため、同じ強い薬品でもアルカリ性の物質(水酸化ナトリウムなど)によるやけどに比べると、比較的浅い範囲にとどまりやすいとされています(アルカリは脂肪やタンパク質を溶かしながらどんどん奥へ浸透していく「融解壊死」を起こすため、より深く進行しやすい傾向があります)。

もし触れてしまった場合には、「とにかく大量の流水で洗い流す」ことです。中和しようとして他の薬品(重曹水など)をかけるのは、中和反応自体が発熱を伴うためかえって熱傷を悪化させる恐れがあり、推奨されていません。流水で薬品を薄めながら物理的に洗い流し、できるだけ速やかに医療機関を受診することが重要です。

漂白剤

漂白剤には酸化漂白剤と還元漂白剤があります。家庭では主に酸化漂白剤が用いられます。なお、酸化とは「酸素を与える」「水素を奪う」「電子を放出させる」の3つのことを言います。例えば、

2Cu + O2 → 2CuO

銅は酸素を与えられたので、酸化反応です。

2CH3OH + O2 → 2HCHO + 2H2O

メタノールは水素原子を奪われたので、酸化反応です。

2Na + Cl2 → 2NaCl

ナトリウムは電子を放出したので、これも酸化反応です。

 酸化剤とは、相手から電子を受け取ることで(奪うことで)、相手を酸化させる物質のことです。例えば塩素は

Cl2 + 2e⁻ → 2Cl⁻

となり、電子を受け取ることができるので、酸化剤となります。

酸化漂白剤は、塩素系漂白剤(主に家庭で使われるのは次亜塩素酸ナトリウム NaClO)と酸素系漂白剤(主に家庭で使われるのは過炭酸ナトリウム 2Na2CO3・3H2O2、過酸化水素 H2O2)に分かれます。

塩素系漂白剤は、強力な酸化力を持っており、色物に使うと、その色ごと落ちてしまいますので、白物にしか使えません。また酸素系漂白剤は色物にも使うことができます。

塩素系漂白剤

 塩素系漂白剤の主成分は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)(wiki参考)と水酸化ナトリウムです(次亜塩素酸ソーダとも呼ばれる)。

例えばキッチンハイターが有名ですね。

キッチンハイターの成分表を見ると、

  • 水
  • 次亜塩素酸ナトリウム
  • 水酸化ナトリウム
  • 界面活性剤

 というように水酸化ナトリウムも入っていて、アルカリ性になっています。塩素系漂白剤は次亜塩素酸ナトリウムが分解しないようにアルカリ性に保たれています。アルカリ性という性質によって汚れに効くという効果も併せ持っていますが、主なポイントは次亜塩素酸(HClO)の酸化作用です。

次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)から生成される次亜塩素酸(HClO)の酸化力って漂白作用を示します。

次亜塩素酸ナトリウムを水に溶かすと、一部が水と反応して次亜塩素酸と水酸化ナトリウムに分解されます。

この反応は可逆反応(平衡状態)です。生成される水酸化ナトリウムによって溶液が強いアルカリ性になるため、通常の次亜塩素酸ナトリウム液中では次亜塩素酸の割合は低く、多くは次亜塩素酸イオンClO-の状態で存在しています。溶液のpHを下げて酸性に傾けると、次亜塩素酸が大量に生成されます。そのため、水酸化ナトリウムが加えられています。

酸を加えすぎて溶液が酸性(pH5以下)になると、次亜塩素酸がさらに分解して有毒な塩素ガスが発生します(いわゆる「混ぜるな危険」の反応です)。

画像引用 iwaki ポンプなるほど 用語編【遊離残留塩素と結合残留塩素】

 https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/33/

また次亜塩素酸は酸素系漂白剤の過酸化水素と反応して効力を失うので、塩素系漂白剤と酸素系漂白剤を一緒に使うことは意味をなしません。

参考『図解入門よくわかる最新洗浄・洗剤の基本と仕組み』(秀和システム)

1 色の分子を壊す(漂白)

 カビの黒ずみや茶渋などの「色」を作っている分子の構造を、酸化によって破壊します。構造が壊れると光を反射できなくなって、色が消えます。多くの色素は、炭素同士の二重結合(C=C)が長く連なった構造を持っています。この構造が特定の光を吸収して、それ以外を反射することで、私たちの目には色付いて見えます。

 次亜塩素酸が反応すると、二重結合が引き裂かれ、単結合(-C-C-)になります。結合が切れて単結合ばかりになると、光を吸収できなくなり、すべての光を通すか反射するようになります(白くなる・無色になる)。詰まるところ、塩素系漂白剤は「汚れをどこかへ運び去っている」のではなく、「色の正体である分子の形を、色を出せない形に作り変えている」のです。

「漂白」という言葉は「物質についている色を、化学反応などによって消して白くすること」を意味します。

塩素系洗剤は汚れを「化学的に破壊して真っ白にする」という技を使っています。

実際にやってみました。お風呂のゴムパッキンの黒いカビが消えるのでしょうか。これは中性洗剤で何度擦っても落ちない汚れでした。

Amazon カビキラーPRO

これにカビキラーのジェルタイプのものを塗ります。乾いていた方が良いとのことで、濡れている場合はタオルなどで表面を拭きましょう。

30分待って水で流します。すると…

消えてはいないものの、かなり薄くなりました。一度で消えない場合は繰り返すことによって徐々に目立たなくさせることができます。

2 タンパク質をバラバラにする(分解)

 排水溝のヌメリや髪の毛などはタンパク質でできています。塩素の力は、この強固なタンパク質の鎖を酸化によって細かく切断し、水に溶ける状態まで分解してしまいます。

 タンパク質の骨格であるペプチド結合(CONH)が、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)と反応すると、COとNHに切断されます。

ChatGPTを使って画像は作成

本来、ペプチド結合は水だけではなかなか切れませんが、強いアルカリ性と酸化力が触媒のような働きをし、巨大な鎖をアミノ酸や小さなペプチドへと「バラバラに断片化」します。これにより、固形だった髪の毛などが水に溶ける液体状へと変わっていくのです。

カビは糸状菌と呼ばれる微生物です。目に見える黒カビ・ピンク汚れなどがこれにあたります。カビが好む条件が浴室には整っています。

水分 入浴後の高い湿度、壁や床に残った水滴

温度 20〜30℃前後というカビが最も好む温度帯に、浴室の温度がちょうど当てはまる

栄養源 皮脂、垢、石けんカス、髪の毛など、人体由来の有機物が豊富

酸素 換気扇や隙間からの空気の出入り

この4つの条件が同時に満たされると、カビの胞子が菌糸を伸ばして繁殖します。浴室はカビにとって天国のような環境になってしまいます。またカビは表面だけでなく、ゴムパッキンの隙間やタイルの目地など、微細な凹凸に菌糸を食い込ませて根を張るようにして増えていきます。これが、一度生えると表面を拭くだけでは落ちにくい理由です。

細菌やウイルスの表面にあるタンパク質の膜や、内部の遺伝子(DNA/RNA)を酸化攻撃で破壊します。

3 アミノ基の酸化

画像はChatGPTを使って作成

塩素系洗剤(次亜塩素酸ナトリウム(NaClO))の攻撃は鎖を切るだけではありません。タンパク質を構成するアミノ基(-NH_2)に対しても、反応します。

ここで生成される R-NHCl(クロラミン)は、非常に不安定な物質です。さらに酸化が進むと、最終的に窒素ガスや水、二酸化炭素にまで分解されることもあります。

4 架橋構造の破壊

髪の毛がなぜあんなに丈夫なのか知っていますか?それは、タンパク質の鎖同士が「硫黄」を介してガッチリ握手している架橋構造があるためです。

塩素系洗剤はこの「握手」さえも酸化の力で引き剥がします。この強固な架橋構造を破壊されると、髪の毛は形を保てなくなり、トロトロに溶けてしまいます。

 「混ぜるな危険」とは?

 絶対に伝えておかなければならないのが、「混ぜるな危険」の理由です。家庭用の「塩素系漂白剤」の主成分は、一般に次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)です。製品中では、次亜塩素酸ナトリウムが分解しにくいようにアルカリ性に保たれています。

 ここに酸性の洗剤(クエン酸など)が混ざると、塩素ガスが発生する恐ろしい化学反応が起きます。

 この右端に出てくる 塩素ガスが猛毒です。第一次世界大戦で毒ガス兵器として使われたこともあるほど危険な気体で、吸い込むと肺の水分と反応して塩酸に変わり、呼吸器に致命的なダメージを与えます。

 ここで疑問が。一見、塩素と水が混ざるだけでなぜ強い酸である「塩酸」が生まれるのか、不思議ですよね。実はここでも、塩素の「自分は水素を奪う」(相手を酸化させる:酸化剤)という強烈な性質が働いています。

 塩素ガスが肺の粘膜などの水分に触れると、すぐに次のような反応が起こります。

 単なる水から塩酸ができるのかというと、塩素分子の結合が切れ、一方が水の水素を奪い取って HCl になり、もう一方が残りの OH とくっついてHClOになるためです。この反応は非常に素早く進みます。つまり、塩素ガスは水に溶けるだけで、「強力な酸(塩酸)」と「強力な酸化剤(次亜塩素酸)」の両方を同時に作り出してしまうのです。これによって肺の細胞が攻撃を受けることになります。お掃除の化学反応は素晴らしいものですが、「酸化剤(塩素系)」と「酸」は絶対に会わせてはいけない禁断の組み合わせなのです。

シンクの除菌は水分を残さないことが決めて!

塩素系漂白剤の殺菌効果はあくまで「そのとき菌を減らす」効果であり、翌日にはまた新しい菌が増殖を始めます。また金属を傷める可能性もあるため、使用後はしっかり水で洗い流すことも大切です。

また意外と見落とされがちですが、菌の繁殖に最も効果が高く、コストもかからない方法が水分を残さないことです。ほとんどの細菌は、湿った環境でなければ活発に増殖できません。シンクを使い終わったあとに、乾いた布やスクイージーで水気をしっかり拭き取っておくだけで、菌の増殖スピードを大幅に落とすことができます。乾燥こそが最高の除菌であると言えます。

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