水素イオンの奪い合い!?重曹がアルカリ性になるミクロな理由
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

キッチンでおなじみの「重曹」(炭酸水素ナトリウム)。お菓子をふくらませたり、お掃除に使ったりと大活躍ですよね。実はこの白い粉、水に溶かすと「アルカリ性」という性質を示します。私は単に覚えているだけでした。
でも、一体なぜアルカリ性になるのでしょうか?
OHが含まれているようには思いませんよね。その秘密は、ミクロの世界で行われている「水素イオンの奪い合い」にありました。
水に溶けてイオンに分かれる(電離)
炭酸水素ナトリウムを水に入れると、まずナトリウムイオンと炭酸水素イオンという2つの仲間に分かれます。これを「電離」といいます。
2. 炭酸水素イオンが水と反応する(加水分解)
ここからが本番です。分かれた炭酸水素イオンは、実はちょっぴり「欲しがり屋」さん。水分子のそばに寄っていき、水素イオンをひとつ奪い取ってしまうのです。
この反応によって、水の中に水酸化物イオンが生まれます。液体の性質がアルカリ性になるのは、この「水酸化物イオン」が増えるからなのです。
なぜ「弱」アルカリ性なの?
上記の化学反応式の矢印が (逆向きもある)になっているのがポイントです。炭酸水素イオンは、水から水素を奪う力がそれほど強くありません。そのため、すべてのイオンが反応するわけではなく、出てくる 水酸化物イオン の量は控えめです。だから、私たちの肌にも優しい穏やかな弱アルカリ性を示すのですね。
炭酸ナトリウムはなぜ「強」アルカリ?
重曹はマイルドでしたが、熱すると出てくる兄弟分の炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)はもっとパワフルです。かなり強いアルカリ性を示しますが、その理由は重曹よりも「水酸化物イオンを放出する力が圧倒的に強いから」です。こちらもミクロの視点で紐解いてみましょう。
イオンへの電離
炭酸ナトリウムは水に溶けると、ナトリウムイオンと炭酸イオンに分かれます。
水との激しい反応(加水分解)
ここが重曹との大きな違いです。この炭酸イオンは、重曹の時の炭酸水素イオンよりもずっと不安定で、「水分子から水素イオンを奪いたい!」という力が非常に強い性質を持っています。
この「奪い取る力」の強さによって、水の中には大量の水酸化物イオンが放出されることになります。
どれくらい強さが違うの?
pHの違い:
炭酸水素ナトリウム(重曹):pH 8.3 前後(弱アルカリ性)
炭酸ナトリウム:pH 11 前後(強いアルカリ性)
驚くべきことに、pHが「3」違うということは、アルカリの強さの指標である 水酸化物イオンの濃度が1000倍近く違うことを意味します。重曹が「お料理」に使えるのに対し、炭酸ナトリウムが「強力な油汚れ落とし」に使われるのも、このパワーの差があるからなんですね。化学の世界は、たった一つの粒子のやり取りで、これほどまでに性質が変わる不思議に満ちています!
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