巨人が広げた扇のナゾ!?滋賀・百瀬川扇状地で紐解く「水と暮らし」のミステリー
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
空から地上を見下ろしたとき、まるで巨人が大きな「扇(おうぎ)」を広げたかのような、見事な地形に出会ったことはありませんか?大自然が長い年月をかけて作り上げた芸術、それが「扇状地」です。今回は、滋賀県高島市北部にある、日本でも屈指の美しさを誇る百瀬川(ももせがわ)扇状地を舞台に、地形と私たちの暮らしがどのように繋がっているのか、そのミステリーを解き明かしていきましょう。理科の教科書を開くよりも、ずっとワクワクする発見が待っていますよ!
こちらは滋賀県にある「百瀬川」の扇状地の様子です。GoogleEarthを使って観察しました。

引用:GoogleEarth「百瀬川扇状地」
大自然が描いた扇のキャンバス:百瀬川の秘密
百瀬川扇状地は、山から流れ出た川が平地に出た瞬間、勢いを失って砂や石を「パッ」と広げるように積もらせてできた地形です。こちらのサイトでも紹介されていますが、この扇のような形には、実は驚くべき秘密が隠されています。

引用:GoogleEarth「百瀬川扇状地」
なぜそこに村があるの?地形から読み解く先人の知恵
扇状地をよく見てみると、集落(家々)が特定の場所に集まっていることに気づきます。それは、扇の端っこ、扇端と呼ばれる場所です。なぜ、昔の人はここに家を建てたのでしょうか?その理由は湧き水にあります。山から流れてきた水は、一度扇状地の砂利の中に潜り込み、地下水となって旅をします。そして、扇状地が終わる平地との境目で、再び地表にコンコンと湧き出してくるのです。水は命の源。人々は美味しい水を求めて、この場所に集落を作ったのですね。
また、面白いことに、この地域の国道は綺麗な弧を描く等高線にそって作られています。地形に逆らわず、最も効率的なルートを人間が選んだ結果が、この美しい地図の模様に現れているのです。

引用:GoogleEarth「百瀬川扇状地」
少し角度を変えて立体的に見てみると、扇のように土地が盛り上がっている様子がより鮮明にわかります。まるで生きている地形のようですね。
色塗りで発見!水はけが生んだ「美味しい」土地利用
扇状地は場所によって、土の性質が全く異なります。 授業では、生徒たちと一緒に地理学習用のアナグリフ教材を使って、土地の使われ方を色分けしてみました。

オレンジ色:水はけの良い土地を好む果樹園や畑、そして針葉樹林。
水色:水が溜まりやすい場所を利用した水田(ライスフィールド)。
グレー:湧き水ポイントを狙った住宅街。
実際に色を塗ってみると、驚くほどはっきりと「住み分け」ができていることが分かります。

扇状地の断面図をここから生徒に推測させていきます。
「天然のフィルター」ができる仕組み
山から流れてきた急流が平地に出た瞬間、それまで運んでいた土砂を勢いよくぶちまけます。これが扇状地のはじまりですが、積もるものには順番があります。
山に近い側(扇頂)には大きな岩や石が、遠く離れる(扇端)につれて砂や細かな泥が積もります。この粒の大きさのグラデーションが、断面図を理解する最大のポイントです。
扇状地の真ん中あたりの断面を見てみると、そこは大きな石や砂利がスカスカの状態で積み重なっています。まるで巨大な「ザル」のような構造です。そのため、川の水は地表を流れるのをやめて、石の隙間を通って地下へと潜り込んでしまいます。これを伏流水と呼びます。地上から川が消えてしまうため、断面図では水が地下を通る「二階建て構造」のような描き方になります。
だからこそ、水はけが良すぎて田んぼが作れない扇央では、果樹園や畑が広がっているのですね。
では、地下に潜った水はどこへ行くのでしょうか?断面図をさらに下流へ進めていくと、扇状地の終わり(扇端)にたどり着きます。このあたりは、上流から運ばれてきた細かな砂や泥がぎっしりと詰まっていて、水を通しにくい層になっています。地下を旅してきた水は、この「壁」に突き当たり、行き場を失って地上へと押し出されます。これが湧水(ゆうすい)です。断面図で見ると、地下水路の出口がちょうど扇端にあることがよくわかります。昔の人は、この「天然の蛇口」がある場所を正確に見抜き、そこに集落を作りました。
断面図から未来の暮らしを予測する
もしあなたが家を建てるなら、断面図のどこを選びますか? 「美味しい水が欲しいから扇端がいいな」「水害を避けたいから少し高い場所がいいな」といった選択は、すべてこの断面図の構造に基づいています。
滋賀県の百瀬川扇状地でも、この断面構造に合わせて見事に土地が使い分けられています。地図を眺めるとき、頭の中で**「地面をナイフでスパッと切った断面図」**を想像してみてください。今までただの景色だった場所が、壮大な大地の物語に見えてくるはずです。
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