魚にスダチは「理科の実験」!?おいしさの裏に隠れた中和の科学

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

皆さんは、焼き魚にスダチをギュッと絞ったり、お寿司を食べる際にお酢の効いたシャリを味わったりするとき、それが立派な「化学実験」の場であるということを意識したことはありますか?実は、美味しい食事の裏側には、中学校の理科で習う大切な法則が隠されているのです。

お皿の上で起こる「中和」の魔法

魚を調理した後に手に残る、あの独特な生臭いニオイ。その正体は、トリメチルアミンという物質です。この物質は、性質を調べるとアルカリ性を示します。このニオイを消すための知恵として、昔からお酢やすだち、レモンなどをかけることが行われてきました。これらの酸っぱい食べ物には、酸性の物質が含まれています。

アルカリ性の原因物質に、酸性の物質を合わせると、互いの性質を打ち消し合う中和(ちゅうわ)という反応が起こります。中和されることで、あのツンとしたニオイ成分が別の物質に変化し、ニオイをおさえることができるのですね。単に味をさっぱりさせるだけでなく、科学的な根拠に基づいた消臭技術だったのです。

参考サイト: https://hyogo-nourinsuisangc.jp/kenmin_minasama/mame/suisan_mame/02/18/956/

キッチンから大自然へ!川の健康を守る壮大な取り組み

私は群馬県出身なのですが、この「中和」という言葉を聞いて真っ先に思い浮かべるのは、実は地元の川のことでした。群馬県には火山が多く、そこから流れ出る水によって、川が非常に強い酸性になってしまう場所があります。酸性が強すぎると、魚が住めないだけでなく、コンクリートの橋さえもボロボロに溶かしてしまいます。

そこで、川を魚が住める環境に整えるために、大規模な中和が行われています。具体的には、中和するために石灰を川にいれて中和しているのです。

草津中和工場で湯川に石灰石粉を投入し、その先に建設された品木ダムに流れ入るまでに徐々に進んでいくという仕組みです。  現在、吾妻川には魚などの生物が棲むようになり、下流の人々も中和された河川の水の恵みを受けて生活しています。そして、草津中和工場はこれからも24時間365日、湯川の中和を行っていきます。

お皿の上でスダチを絞る「小さな中和」と、山の中で川に石灰を投入する「大きな中和」。スケールは全く違いますが、起きている現象は同じ化学のルールに基づいています。そう考えると、理科の教科書に載っている言葉が、急に身近に感じられませんか?勉強したことが毎日の生活や故郷の風景とつながる瞬間こそ、科学の醍醐味だと私は思います。

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