【監修】霜が果物を壊すメカニズムと、水で守る逆転の科学「突破ファイル」(日本テレビ)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
日本テレビ「突破ファイル」の監修をしました――霜・氷・ロウソクに隠された科学のドラマ
「なぜ、氷を作ると温度が下がらないのか?」「なぜ、扇風機で果物を守れるのか?」――身近な疑問の裏側に、まるでミステリーのような科学の仕掛けが潜んでいます。2026年4月30日に放送された「突破ファイル」(日本テレビ)で、再び監修を担当しました。今回監修したのは「田中教授のフシギ事件簿」と「その手があったか!ひらめきトッパーマン!!」という2つのコーナーです。

最後のテロップで「千葉大学教育学部附属中学校 桑子研」と名前も載りました。
まだTverで見られるので是非ご覧ください。「田中教授のフシギ事件簿」については、以前にも担当したことがあります。
「凍霜害」とは何か――春の夜に忍び寄る、見えない凶器
今回のテーマは凍霜害(とうそうがい)です。気温が氷点下まで下がり、霜が降りて果物や農作物がダメになってしまうという被害を、どうすれば防げるのか――田中教授がミステリーを解くように解決策を探っていくコーナーの監修を行いました。
春は北から冷たい空気が流れ込みやすく、夜に空が晴れ渡ると一気に冷え込みます。このとき、凝華(ぎょうか)という現象が起きます。空気中の水蒸気が、液体(露)になるステップを飛ばして、直接氷の結晶(霜)に変わるのです。ちなみに結露は、水蒸気が水になる現象です。霜はそれよりもさらに劇的な変化といえます。
果樹園の新芽は、成長のために水分をたっぷりと含んでいます。気温が下がり、細胞内の水分が凍ると、大変なことが起こります。水は凍ると体積が増えるという珍しい性質を持っています。そのため、鋭い氷の結晶が細胞壁を内側から突き破ってしまうのです。日が昇って氷が溶けたとき、壊れた細胞からは水分が漏れ出し、新芽は茶色く変色して枯れてしまいます。農家さんが手塩にかけて育てたお茶が、一夜にしてダメになってしまう……これが凍霜害の恐ろしさです。
番組のヒントになった「ドライアイスとスプーン」の実験
番組の冒頭では、ドライアイスの上にスプーンを乗せると細かく振動する現象が紹介され、一つのヒントになるという演出が施されていました。

これは、ドライアイスが固体から直接気体へと状態変化(昇華)する際にガスが発生するため、スプーンが持ち上がっては落ちてを繰り返し、音が鳴るというものです。ドライアイスについては、私も実際に実験をしたことがありますが、とても不思議な現象ですよね。
筑波山の知恵から生まれた「防霜ファン」のアイデア
続いて田中教授が目を向けたのが、筑波山の斜面温暖帯という現象です。山の斜面では、放射冷却によって冷やされた重い空気が斜面を下へと流れ落ち、そこへ上空の暖かい空気が補填されることで、中腹の気温がある一定以下に下がらないという仕組みがあります。筑波山の「福来(ふくれ)ミカン」が中腹で栽培できるのも、まさにこの仕組みのおかげです。

実は私自身、筑波山でこの斜面温暖帯の研究を手伝っていたことがあり、その経験からこのアイデアを発案してお伝えしました。身近な自然現象の観察が、農業の問題を解決するヒントになるというのは、科学の醍醐味だと感じています。紹介されてとても嬉しかったです。

この「冷たい空気を追い出す」という自然の仕組みを、扇風機(防霜ファン)で人工的に再現しようというのが発想の核心です。実際に果樹園や茶畑では防霜ファンが取り付けられており、凍霜害対策として広く使われています。
「水をかけて凍らせる」という逆転の発想――散水法の謎
そして最後に紹介された解決策が、最も驚きに満ちたものでした。それが散水法(さんすいほう)です。凍らせたくないのに、あえて水をかける――一見すると矛盾しているように思えますが、ここに巧みな物理の仕掛けがあります。水が氷に変わるとき、潜熱(せんねつ)と呼ばれる熱を周囲に放出します。この熱のおかげで、樹木の温度が0度より下には下がらないのです。

氷ができているのに、温度は0度のまま――これは「状態変化が起きている間は温度が変わらない」という物理の基本法則そのものです。農家さんたちは、この科学の原理を経験の中から学び、長年にわたって作物を守ってきたのです。
「その手があったか!」――冷凍ロウソクの不思議
もう一つのコーナー「その手があったか!ひらめきトッパーマン!!」については、以前にも担当したことがあります。
今回のテーマは、ロウソクを冷凍庫に入れると長持ちするというものでした。

実際に実験をしてみたところ、5分以上長持ちしました。面白い裏技です。こちらの記事をご覧ください。
ポイントはロウ(パラフィン)の融点にあります。ロウは60度前後で溶けはじめますが、冷凍庫で冷やしておくと、炎の熱で溶けたロウが芯の周囲の冷えた部分に触れた瞬間にすぐ固まります。つまり、溶けたロウが横に垂れる前に固体に戻ってしまうため、無駄な消費が抑えられるというわけです。「温める」のではなく「先に冷やしておく」という逆転の発想が、日常の小さな不便を解決してくれるのは、科学の面白さの一つですね。
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テレビ番組監修・イベント等のお知らせ
- 4月30日(木)「THE突破ファイル」(日本テレビ)の科学監修を担当しました。
- 5月8日(金)理科教育ニュースを担当しました。
- 6月14日(日) 千葉大学インスタレーション「探究」にて講師を務めます
- 6月26日(金) 千葉大学の公開研究会(中学理科について授業公開予定)
- 7月18日(土) 教員向け実験講習会「ナリカカサイエンスアカデミー」の講師をします。お会いしましょう。
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