見えない放射線を“見る”方法 霧箱でα線の軌跡を追え!(放射線の観察)

桑子研
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α線の足跡を追え!手作り霧箱で放射線観察に挑戦

理科室で、放射線が「見える」体験をしてみませんか?今回は、手作りの 霧箱 を使って、自然放射性鉱物である 閃ウラン鉱(せんウランこう) から放出される α線(アルファ線) の足跡を観察する授業実践をご紹介します。

霧箱は、科学館などでの展示でも人気の実験装置。とはいえ、実際に自分で材料を集めて組み立てると、展示を見るのとはまったく違う“科学する感覚”が得られます。今回は「原子力エンジニアリング株式会社」の霧箱キットを活用しました。市販のものですが、学校でも扱いやすく、安全面にも配慮された設計です。

【準備物一覧】

理科室や学校にあるものに加えて、以下の材料が必要になります:

• タオル(保温用・滑り止め)
• パット(ドライアイスの保温用)
• ドライアイス(1kg程度、700円前後)
• 放射線源(今回は閃ウラン鉱を使用)
• ペンライトまたはLEDライト
• 軍手(保護のため)
• 無水エタノール
• スポイト
• 暗室または暗幕で暗くできる部屋

※ドライアイスは氷屋さんなどで購入可能です。例:千葉駅近くだと岩川氷室があります。 https://maps.app.goo.gl/QMHKJdppKhRhKTXK7?g_st=ic

【霧箱の仕組みと観察のポイント】

霧箱の中では、エタノールが蒸発し、冷却されたドライアイス面付近で過飽和状態のエタノール蒸気が作られます。ドライアイスによる温度勾配があるため、内部の気体が上下に流動し、わずかな刺激で気体が液体に変わる状態が維持されます。その中に 放射線源(閃ウラン鉱) を設置すると、α線が放たれたときに飛行機雲のような筋状の跡が浮かび上がります。

α線自体は紙一枚でも止まるほど弱く、数センチしか飛びませんが、通過した部分に 多くのイオンが発生し、それを核にしてエタノール蒸気が凝結。これが「放射線の足跡」として目視できるのです。LEDライトで横から照らすことで、白い筋がはっきり見えるようになります。子どもたちも「おおっ!」と声を上げる瞬間です。

【鉱物としての閃ウラン鉱】

使った放射線源は 閃ウラン鉱(uraninite)。ウランを多く含む鉱物で、組成は主に二酸化ウラン(UO₂)。結晶系は等軸晶系で、硬度は5〜6、比重は7.5〜10と非常に重い鉱物です。硫酸や硝酸などに溶けやすい性質もあります。

※放射線源の扱いには十分注意を。

【実験の流れ】

1. 土台づくり:ドライアイスの上にアルミ板を置き、タオルやパットで安定させます。

2. エタノール塗布:スポンジまたはフェルトに無水エタノールをしみ込ませ、アルミ板の上に設置。

3. 放射線源の設置:ゴム線の先に放射線源(閃ウラン鉱)をつけて挿し、フタを閉めます。

4. 暗室で観察:暗くした部屋で横からLEDライトを当て、飛行機雲のような筋を観察します。

この実験は、放射線という「目に見えない存在」を視覚的にとらえる貴重な体験になります。「放射線=怖いもの」ではなく、正しい知識と安全な環境があれば、科学的な好奇心を大きく刺激する題材です。ぜひ授業で扱ってみてください。

説明スライド例)

#ウラン #放射線 #α線 #霧箱

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