おもちゃが物理の先生に!プルバックカーとスマホで撮る「奇跡の軌跡」
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
おもちゃのミニカーがジャンプ! その「飛んでいく姿」をスマホで撮影するだけで、物理の教科書に出てくるような、美しい「運動の軌跡」が撮れてしまうとしたら、ワクワクしませんか?今日は、身近な「プルバックカー」とスマホアプリを使って、物が飛ぶときの「放物運動(ほうぶつうんどう)」を驚くほど簡単に見える化する実験をご紹介します!

実験の準備はとても簡単!
用意するものは、たったこれだけです。
プルバックカー(後ろに引いて手を離すと走る、あのおもちゃです)
ジャンプ台(厚紙や板などでOK)
ストロボ写真撮影アプリ(iPhoneアプリの「モーションショット」など、動きを連続で撮影できるもの)
スマホで激写!これが「放物運動」だ!
さっそく実験してみると…こんな写真が撮れました! プルバックカーが、まるで分身の術を使ったみたいです!面白い!!

別のアングルでもう一枚。こちらが、物が飛んでいくときの「放物運動」の様子です。キレイなアーチを描いていますね。

写真が語る「物理の法則」
さて、この写真から何がわかるでしょうか?
注目すべきは、プルバックカーの「横方向の間隔(かんかく)」です。 よーく見てください。写真に写った車と車の間隔が、ほぼ一定になっていることがわかりますね。
これは、物理学でとても大切なことを示しています。 物が飛んでいるとき、水平方向(横向き)には、ほとんど力が働いていない(※空気の抵抗は一旦無視します)ということです。力が働かないので、横に進むスピードは落ちずに、ずっと同じ速さ(等速直線運動)で進み続けます。だから、同じ時間で撮影すると、間隔が一定になるのです。
では、垂直方向(縦向き)はどうでしょう? こちらは間隔が一定ではありません。上っていくときはだんだん間隔が狭くなり、頂点を越えて落ちるときは、だんだん間隔が広がっていきます。 これは、車に常に「重力(じゅうりょく)」という下向きの力が働き続けている証拠です。重力がブレーキをかけたり(上り)、アクセルを踏んだり(下り)しているわけですね。
この「横方向は一定のスピード」と「縦方向は重力で変化するスピード」という2つの動きが合わさることで、あの美しい「放物線」が描かれるのです。
写真では、ジャンプ台の角度が浅かったためか、物が真横に飛び出す「水平投射」に近い形で飛んでいきました。ジャンプ台の角度を変えると、もっと高く飛んだり、遠くまで飛んだり、軌道が変わる様子も観察できて面白いですよ!
おもちゃのプルバックカーとスマホ一つで、こんなにもハッキリと物理の法則が見えてくるなんて、驚きですよね。ぜひ皆さんも、身近なもので「運動の可視化」に挑戦してみてください!
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