CDのキラキラは物理だった!身近なモノで学ぶ光の干渉(回折格子)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

回折格子、ヤングの実験、ニュートンリング…。物理の教科書に並ぶこれらの言葉を聞くと、なんだか難しくて、日常生活とは縁遠いものに感じてしまうかもしれません。でも実は、その不思議な現象は、みんなの身の回りにある「ある物」に隠されているんです。

それは、CDのキラキラ!📀

💿光の干渉という現象は、複数の光の波が重なり合って強めあったり、弱めあったりすることで起こります。CDの表面は、データを記録するためにミクロのスケールで細かく溝が刻まれていて、この溝が「回折格子」と同じ役割を果たします。回折格子とは、光を特定の方向に曲げる(回折させる)役割を持つ、細かいスリット(溝)が規則的に並んだ構造のことです。CDの溝は、このスリットの代わりとなり、光を反射させながら、わずかに進む道のりを変えます。

このわずかな道のりの違い(光路差)が、特定の波長(色)の光を強め、私達の目に鮮やかな色として届けてくれるのです。

この現象、実はCDに限ったことではありません。シャボン玉の表面が虹色に輝くのも、濡れたアスファルトに油が垂れて七色に見えるのも、すべて光の干渉が原因です。CDは、私たちの身の回りにある干渉現象の教科書のような存在なんです。さあ、この不思議を実際に見てみましょう!

科学のレシピ

用意するもの:CD(空のCD−Rがおすすめ)、紙

手順:

1 光源の下にCDをおき、紙を折って、近くに立てる。

2 ある一点をみながら、目線を真上から徐々に下げていく。

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こちらの動画を御覧ください。

目線を真上から少しずつ下げていくと、はじめに青が、続いて赤が、そして無色があらわれます。

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いかがでしょうか。目線をさげていくと、様々な色が現れていくことが確認できますよね。CD自体に特定の色が付いているわけではないことは、表面を手に持ってみればわかります。紙を立てておくと、他の場所からきた光が入りにくくなるために、干渉縞がよく見えるという工夫です。ざっくり観察することができるのでぜひやってみてくださいね(^^)

理論から日常へ、CDが語る光の干渉

なぜ、目線を下げるだけで色が変わるのでしょうか?それは、光の色によって波長(波の長さ)が違うからです。青い光は波長が短く、赤い光は波長が長いという特徴があります。特定の色の光が強めあうためには、その光路差が波長の整数倍になる必要があります。

dsinθ=mλ

上の式は、物理で習う回折格子の式です。ここでλは光の波長、θは見る角度を表します。この式が示すように、角度(θ)が変われば、強めあう波長(λ)も変わります。青い光(短い波長)はより小さい角度で干渉の条件を満たすため、真上から目線を下げていくと、まず青い光が見えるのです。そして、角度が大きくなるにつれて、緑、黄、そして赤い光(長い波長)が次々と現れるわけです。

今回の実験は、目線を動かすだけで、光の波長と干渉の仕組みを目で見て確認できる、驚くほど簡単な実験です。一見するとただのキラキラですが、その裏には物理の法則が隠されています。ぜひ、この小さな実験から、「なぜ?」という不思議な気持ちを育んで、科学の奥深さを感じてみてください。

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