【簡単おうち実験】壁に「逆さまの世界」を映し出そう!レンズと光のふしぎ
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
理科の授業で、ロウソクと虫眼鏡、スクリーンを使った実験、覚えていますか? 暗い部屋で、スクリーンにぼんやりと、でもはっきりと逆さまのロウソクが映し出された瞬間、ちょっとワクワクしませんでしたか?
でも、ここで一つの疑問が生まれます。「なぜ、いつもロウソクなの?」
もしかすると、あの実験のせいで「ロウソクや電球みたいな、自分で光る特別なものしか映せないんだ」と思い込んでいないでしょうか。「じゃあ、目の前にある鉛筆や、窓の外に広がる青い空は映らないの?」…いえいえ、そんなことはありません!
実は、虫眼鏡(凸レンズ)は、私たちの目に見えているものなら、何でも映し出す力を持っています。なぜなら、私たちが見ているすべてのモノは、光を「反射」しているからです。レンズは、その反射した光を集めることができるのです。
今日は、その証拠をお見せする、とても簡単で美しい実験をご紹介します。ロウソクの火は使いません。使うのは「窓の外の景色」です!
科学のレシピ
用意するもの:カラーセロハン、虫めがね(100円ショップで買うことができます)
実験の方法:
① 日中に実験をすることをおすすめします。部屋の電気を消して、窓の近くでカラーセロハンを持ってもらいましょう。
② 虫眼鏡をもって、窓とは反対側にある壁の近くに移動します。
③ 壁の近くに虫眼鏡をかざして、虫眼鏡を前後に動かしてみましょう。

結果:
どうでしょうか。このようにすると、次の写真のようにきれいに窓の様子がうつります。

虫眼鏡の数だけ像がうつります!きれい!拡大してみると、
わかりますか?セロハンをもった人がひっくり返って映っていますよね。 また風景全体が映っています。
なぜ、逆さまに映るの?これは、あのロウソクの実験とまったく同じ原理です。窓の外の景色やセロハンは、太陽の光を反射しています。その光が、虫眼鏡(凸レンズ)を通るときに屈折(くっせつ)します。レンズを通った光は、ある一点で再び集まります(焦点が合う)。光が「実際に集まって」できたこの像のことを、理科では「実像(じつぞう)」と呼びます。この「実像」は、スクリーンや壁にはっきりと映し出すことができ、そして必ず 「上下左右が逆さま」 になる性質があるんです。
虫眼鏡そのものに反射して見える像はひっくり返っていません! 虫眼鏡を通してできた像だけがひっくり返ります。
これは素晴らしい観察ですね! 虫眼鏡のガラス表面に「反射」して映る姿は、レンズの「屈折」の力とは無関係の、鏡と同じもの。でも、レンズを「通過」した光が作る「実像」だけがひっくり返る。まさに、レンズの働きの証拠です。
「目」も「カメラ」も同じ仕組み!
実は、この実験、カメラの原理と全く同じです。虫眼鏡が「レンズ」で、壁が「フィルム」や「イメージセンサー」の役割をしています。そして、もっと驚くべきことに、私たちの「目」も同じ仕組みで世界を見ています。目の「水晶体(すいしょうたい)」というレンズが、目の一番奥にある「網膜(もうまく)」というスクリーンに、景色を逆さまの実像として映しているのです。
「え、じゃあなんで世界は逆さまに見えないの?」と思いますよね。それは、私たちの「脳」が、網膜に映った逆さまの映像を、瞬時にひっくり返して「正しい向き」に直してくれているからなんです。私たちの体って、本当にすごいですよね!
セロハンがなくてもこの実験はできますが、きれいなカラーの色が映るとまた感動もひとしおですよね。また、この実験をやったときにある生徒は面白いことをしていたので紹介します。 次のように、プリントに移していました。
これなら、もし白い壁がなくても、きれいに映すことができますね。ぼくはここまで考えていませんでした。生徒はすごい!ぜひご家庭でもお試しください。
授業で実験を行うときのコツ!
最後に、授業でこのような演示実験をおこなうときのコツについてご紹介します。 コツは、
1 生徒一人一人に実験器具がいくようにする 2 生徒全員が参加できるようにする
の2つにあります。例えば40名の生徒の場合には、虫眼鏡を20個用意して、半分の20人の生徒に20個の虫眼鏡を配りもう半分の生徒には、セロハンをもって窓際にたってもらい、セロハンを動かしました。このようにすることで、生徒全員が何かしらの活動に関わっています。こうすると授業がしまりますので、おすすめです。光の分野については、特にいろいろな実験を生徒に見せながら、授業をすすめていきたいものですね。
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