コードレスで光る!泳ぐ!音楽を奏でる? 不思議な「電磁誘導」実験(大人の科学マガジン)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
スマホを充電器に置くだけで充電できる。改札でICカードをかざすだけで通り抜けられる。不思議だと思いませんか?
これらはすべて、コードがなくても電気や情報を送る技術が使われています。その多くは「電磁誘導(でんじゆうどう)」という、19世紀にファラデーが発見した科学の原理に基づいています。
今日は、その「見えない力のバトンタッチ」を目に見える形で体験できる、とても面白い実験道具「大人の科学マガジンプラス 電磁実験スピーカー」を紹介してもらいました。
浮かぶ球体に光を灯す「見えない力」
これがその実験道具です。緑色の輪っかと、水に浮かぶ不思議な球体。

水に浮いて光っている球体の中には、LED・コイル・コンデンサ回路が入っています。

しくみはこうです。 まず、まわりにある緑色の輪っかの中に入っているコイル(電気を送る側)に、電池から電流が流れます。すると、緑の輪のまわりに「磁場(じば)」(磁石の力がはたらく空間)が発生します。
この磁場が、空間を越えて、水に浮かぶ球体の中にあるコイル(電気を受け取る側)を通り抜けます。
ここで使われる電気は「交流」といって、流れる向きや強さが常に変化しています。そのため、発生する磁場も刻一刻と変化します。
そして、ここが科学のクライマックスです。コイルを通り抜ける磁場が変化すると、なんとそのコイルに電気が流れるのです! これこそが「電磁誘導」です。 この電磁誘導によって球体の中のLEDに電流がながれて、コードもないのに光る、というわけです。
目に見えない磁場が、まるで魔法のように電気を届けているみたいで、面白いですよね!ぜひ動画で御覧ください。
水の中を泳ぐ魚のひみつ
磁場が空間を越えて光を灯すなんて、本当に不思議です。 とくに面白いのが、この魚型の物体。

この魚には2つのコイルが入っていて、電磁誘導で受け取った電気を使ってヒレをピコピコと動かします。その力で、水の中をゆっくりと泳ぐんです。電磁誘導は、光だけでなく「動き(動力)」も生み出せるんですね。
「キョリ」と「周波数」がカギ
もちろん、この力は万能ではありません。電磁誘導で光っているので、緑色のコイルからそれぞれの物体を遠ざけると、届く磁場が弱くなるため、光らなくなってしまいます。

遠ざけると光らない

近づけると光る
スマートフォンのワイヤレス充電器も、スマホを特定の位置にきちんと置かなければ充電できないのは、これと同じ理由なんですね。
さらに、この実験道具のすごいところは、つまみを回して周波数が変えられるようになっていることです。 周波数とは、電気や磁場が変化する「速さ(1秒間に繰り返す波の数)」のこと。 これを変えていくと、ある特定の周波数で、ボールが一番強く光る瞬間があります。これは「共振(きょうしん)」と呼ばれる現象です。
ブランコを想像してみてください。ブランコが揺れるタイミング(固有の周波数)に合わせて、タイミングよく背中を押してあげると、小さな力でも揺れがどんどん大きくなりますよね。 それと同じで、送る側の磁場の変化(周波数)と、受け取る側の球体の回路(コイルとコンデンサ)の「得意なタイミング」がピッタリ合うと、効率よくエネルギーが伝わって、LEDが明るく光るのです。 この共振周波数も確認できるなんて、本当によくできた教材です。
音楽が「光」に変わる!
そして、一番驚いたのがこちら。 外部からコイルに音楽などを流すと、その音楽に合わせて、LEDがチカチカと光ります。

音楽は、音の強弱や高低が「電気信号の変化」になっています。その音楽の信号を緑のコイルに流すと、音楽のリズムや強さに合わせて、発生する磁場もリアルタイムで変化します。 その磁場の変化が、そのまま電磁誘導で球体に伝わり、LEDの光の強弱として現れるのです。

まるで、球体が音楽を聞いて歌っているかのようで、とても幻想的です。これは面白い!
生徒に見せたところ、大喜びでした! 目に見えない「電磁誘導」という現象が、光や動き、さらには音楽と連動する様子を目の当たりにして、科学の不思議さと面白さを実感してくれたようです。
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