【衝撃映像】マシュマロが膨張し、シワシワに!? 実験でわかる「気圧」の正体
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
皆さんは、ふわふわのお菓子、マシュマロが「風船のように膨らんだり」「レーズンのようにしぼんだり」する姿を想像できるでしょうか?先日、選択授業の一環で、生徒たちがまさにそんな面白い実験をしているところに遭遇しました。思わず「面白い!」と声を上げ、その様子を動画に撮らせてもらいました。
実験はとてもシンプルです。 減圧装置(中の空気を抜くことができる機械)にマシュマロを入れ、スイッチオン。
すると、どうでしょう。装置の中の空気が抜かれていくにつれて、マシュマロが徐々に大きく膨らんでいきます。まるで魔法のようです。1.5倍くらいの大きさになったでしょうか。


「おおー!」と生徒たちから歓声が上がります。
そして今度は、空気を装置の中に戻していきます(元の気圧に戻します)。 膨らんだマシュマロは、元通りになるのでしょうか?
…と思いきや、なんと! マシュマロは元の大きさ以上に小さく、シワシワにしぼんでしまいました。

一体、マシュマロに何が起こったのでしょうか?

なぜマシュマロは膨らんだの?
「マシュマロの構造が関係しているのでしょうか」と生徒の一人がつぶやきました。まさにその通りです!
皆さんが普段食べているマシュマロは、砂糖やゼラチンなどを泡立てて固めたものです。 つまり、そのふわふわした食感の正体は、マシュマロの内部に閉じ込められた、無数の「空気の泡」なのです。
私たちが普段生活している地上では、空気の重さによる力(気圧)が、常にマシュマロを外側から押しています。マシュマロの中の空気も、それと同じ力で内側から押し返しているので、形が保たれています。
しかし、減圧装置で周りの空気を抜くと、マシュマロを外から押す力が弱くなります。 すると、中に閉じ込められていた空気の泡は「今だ!」とばかりに膨張し、マシュマロ全体を風船のように膨らませたのです。気体は、周りの圧力が低くなると体積が大きくなる性質があるのです。
なぜシワシワにしぼんだの?
では、なぜ元に戻らず、シワシワになってしまったのでしょう?

一度膨らんだマシュマロは、パンパンに膨らみすぎた風船と同じ状態です。 マシュマロの構造、つまり空気の泡を支えていた壁(ゼラチンの骨組み)が、膨張の力によって伸びきったり、一部が壊れてしまったりしたのです。そこに一気に空気を戻す(元の気圧に戻す)と、今度は外側から強い力でギュッと押しつぶされます。 しかし、中の骨組みはすでに壊れかけています。体を支える骨が折れてしまったようなものですから、外からの力に耐えられません。
結果として、中の空気も抜けてしまい、元の大きさよりも小さく、シワシワの姿になってしまったのです。
ポテトチップスの袋と宇宙服
この「圧力が下がると膨らむ」という現象は、実は私たちの身近なところでも見られます。
例えば、ポテトチップスの袋。 これを持って高い山(富士山など)に登ると、袋がパンパンに膨らみます。これも、山の上は気圧が低いため、袋の中の空気が膨張するからなのです。
さらにスケールを大きくすると、この実験は宇宙服の重要性にもつながります。 宇宙空間は、空気がほとんどない「超・減圧状態」です。もし宇宙服を着ずに生身で宇宙に出たら…。マシュマロが膨らんだように、私たちの体内の空気や血液中の水分が膨張し、大変なことになってしまいます。
たった一つのマシュマロの実験が、山登りから宇宙開発まで、いろいろな科学につながっていると考えると、ワクワクしませんか? 生徒たちの好奇心のおかげで、面白い科学のストーリーを発見できた一日でした。
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