透明な板が色を作る?偏光板の性質と、科学技術館で出会った「光の魔法」

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

私たちの身の回りには、目に見えているのに気づかない「光の秘密」が隠されているのをご存知でしょうか? 例えば、目の前にある景色が、たった1枚の板を通すだけでドラマチックに姿を変えるとしたら……。 今回は、そんな魔法のような道具「偏光(へんこう)板」が作り出す、不思議で美しい科学の世界をご紹介します。

光の進み方を変える「魔法の柵」

そもそも光は、波のように振動しながら進んでいきます。太陽や電球の光は、上下左右、あらゆる方向にバラバラに振動しています。 そこに偏光板を通すとどうなるでしょうか。偏光板には、目に見えないほど細かな「スリット(隙間)」が一定の方向に並んでいます。

これは例えるなら、縦に並んだ「柵」のようなものです。バラバラな方向に振動していた光も、この柵を通ることで、特定の方向に振動する光だけが通り抜けられるようになります。この特定の方向にだけ振動する光のことを「偏光」と呼びます。

重なりが生む「光のシャッター」

偏光板の面白さは、2枚重ねたときに本領を発揮します。 1枚目の偏光板で光を特定の方向に整え、2枚目の偏光板をそれに対して「垂直」に重ねるとどうなるでしょう?縦の柵を通り抜けた光は、横向きの柵に阻まれて、外に出ることができなくなります。

つまり、板を回転させるだけで、光を通したり、真っ暗に遮ったりすることができるのです。こちらの動画で、その不思議な現象を確かめてみてください。

科学技術館で見つけた!色鮮やかな「光の万華鏡」

この偏光板の性質を応用すると、さらに驚くような光景に出会えます。先日、科学技術館を訪れた際、非常に興味深い展示物がありました。

それは、回転する偏光板を通して液晶画面を覗き込むというものです。 ただの白い画面に見える場所を偏光板越しに覗くと、まるで魔法がかかったように世界が鮮やかに色づいて見えるのです!

なぜ色が現れるのか?「複屈折」の秘密

なぜ、透明なはずの板を通すと色がつくのでしょうか? 実は、液晶画面から出ている光もすでに偏光しています。そこにプラスチックなどの材料が置かれると、光がその中を通る際に、色(波長)によって進むスピードや向きが微妙に変化します。これを「複屈折」といいます。

偏光板を回転させることで、特定の色の光だけを強調して目に届けることができるため、あのように万華鏡のような美しい色彩が生まれるのです。

私たちの暮らしの中でも、スマートフォンの画面や釣りの時に使う偏光サングラスなど、この技術はあちこちで使われています。 「当たり前」だと思っている光の中に、こんなに豊かな表情が隠れているなんて、科学の力は本当にワクワクさせてくれますね。 皆さんもぜひ、身近な偏光を探してみてください!

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