江戸を揺るがした大ナマズ!安政江戸地震と「ナマズ絵」に隠された物語(@国立科学博物館)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

私たちの足元に広がる巨大な地面。それが突如として牙をむく「地震」は、今も昔も私たちにとって大きな脅威です。しかし、科学が発達していなかった江戸時代の人々は、この恐ろしい現象をどのように受け止めていたのでしょうか。

1855年、江戸を襲った未曾有の大地震

国立科学博物館の展示物を見学していた際、非常に興味深い資料に出会いました。それは、1855年(安政2年)に発生した安政江戸地震に関する資料です。この地震は、現在の東京23区の直下で発生したと推定されています。当時の江戸の中心部、現在の千代田区付近では震度6以上の猛烈な揺れに見舞われたそうです。

地震の発生は夜の22時頃。当時の明かりは火を使った行灯(あんどん)や蝋燭だったため、強い揺れに伴って大規模な火災が発生し、江戸の街に甚大な被害をもたらしました。

人々の不安から生まれた「ナマズ絵」と鹿島大明神

この未曾有の大災害の直後、江戸の街ではある不思議な絵が大流行しました。それがナマズ絵です。

古くからの言い伝えで、日本の地下には巨大な大ナマズが住んでおり、それが暴れることで地震が起きると信じられていました。このナマズを抑え込んでいるのが、茨城県の鹿島神宮に祀られている鹿島大明神(武甕槌大神)です。

展示されていた絵には、地震の原因となったナマズを、怒った鹿島大明神が懲らしめている様子がユーモラスに描かれています。科学的な原因がわからなかった時代、人々はこうした絵を描き、流通させることで、やり場のない怒りや不安を解消しようとしたのかもしれません。

科学の視点で見る地震と生き物

現代の科学では、地震の原因はナマズではなく、地球の表面を覆うプレートの運動であることが解明されています。しかし、「ナマズが暴れると地震がくる」という伝承には、実は科学的な興味をそそる側面もあります。

一部の研究では、ナマズなどの魚類や動物が、地震の前に発生する微細な電磁気の変化や、人間には感じられない初期微動(P波)に敏感に反応する可能性が指摘されています。江戸時代の人々がナマズを地震の象徴とした背景には、もしかすると生き物が見せる不思議な行動への観察眼があったのかもしれません。皆さんも博物館に足を運んだ際は、ぜひ当時の人々が自然現象をどう捉えていたのか、そのストーリーに耳を傾けてみてください。

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