生卵とストローが教えてくれた「衝撃を逃がす」物理学 〜ワールド・カフェで対話が進化する〜

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

椅子の上から生卵を落として、それでも卵が割れない仕組みを作れ。

そう言われたら、あなたならどんな工夫を思いつきますか? 今回は、そんな一風変わったお題を使って高校3年生に「ワールド・カフェ」という話し合いの手法を体験してもらう特別授業を行いました。カフェのような自由な空気の中で、初対面の生徒同士が自然と打ち解け、思いがけないアイデアが飛び出す様子をご紹介します。

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ワールドカフェを使った特別授業!

この授業の風景がExciteニュースに取り上げられました(2014-02-08)

先日高校3年生に「ワールド・カフェ」について学ぶ授業を行いました。ワールド・カフェとは、アメリカではじまった会議の手法の1つです。カフェのような自由な雰囲気の中で、初めての人同士でも自然にコミュニケーションをとることができるようになっており、様々な工夫があります。

今回はそんなワールド・カフェの効果や運営方法を生徒に伝えるために、実際にワールド・カフェを体験して、ワールド・カフェにはどんな工夫があるのかを考えさせるようにしました。

今回ワールド・カフェで話し合うテーマは、

卵を守れ!

についてです。

卵を守れ!とは?

椅子の上にたった状態で生卵を肩の高さから落としたとき、その卵が割れないように、

・ストロー10本
・セロテープ1m

を使って工作をするというものです。ストローとセロテープの使い方は自由です。ストローを卵につけてもいいし、またストローを地面においてもかまいません。

じつはこのお題、単なる工作クイズではなく、立派な物理の実験でもあります。卵が割れるかどうかを決めるのは「衝撃力」の大きさで、これは物理でいう力積(りきせき)という考え方と関係しています。同じ高さから落としても、着地までの時間を少しでも長く引き延ばすことができれば、卵にかかる力は小さくなります。ストローをクッションのように配置したり、着地の瞬間にすこしだけ潰れる構造を作ったりするのは、まさにこの「時間を稼いで衝撃を和らげる」という発想そのもの。宇宙船が地球に帰還するときのパラシュートや、車のエアバッグとまったく同じ原理が、生卵と割り箸ならぬ「卵とストロー」の中に隠れているのです。

場所は教室ではなく、カフェですから、学校の食堂を利用しました。生徒が食堂に入ると目につくのが、楽しげな看板と、それぞれのテーブルにおかれた模造紙、付箋、カラーペン。中央に置かれたお菓子、おもちゃのマイク。そして、お菓子です。

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ワールドカフェで用いた道具。お花を置くんです。意味があるんです。

入ってきたと同時に生徒には自由に席についてもらいました。今回の授業の参加人数は、48名でしたので、4名で1つのテーブルを作り、12班を用意しました。

まずは席替えから始まる「見えない実験」

はじめはどうしても知り合いどうしで席についてしまいますので、ここからシャッフルをします。シャッフルの方法は「バースデーリング」というプロジェクトアドベンチャーを使いました。

バースデーリングは、一切話をしないで、ジェスチャーだけで1つの輪を作るというものです。だいたい大人がやるとこの人数だと1分30秒はかかるのですが、今回は1分10秒くらいで並びおえることができました。このワークを使って、誕生日順に4人ずつ班をきりわけて、席についてもらいました。

言葉を使わずに情報をやり取りするこの遊びは、実は「非言語コミュニケーション」という立派な研究テーマでもあります。私たちは会話の内容そのものよりも、表情やジェスチャー、視線といった言葉以外の情報から驚くほど多くのことを読み取っているのです。生徒たちが誕生日順に並べたのも、指の本数や表情の工夫を瞬時に読み取り合った結果。まさに人間同士の「無線通信」が成立した瞬間だったといえます。

ワールド・カフェのスタート

まず概略を説明し、それぞれのアイテムの使い方についてルールを話しました。テーブルにおかれた模造紙は、公開の場で、いろいろなアイデアを書くために使います。

また付箋は個人用のもので、個人のメモに基本的に使います。おもちゃのマイクは、話をする人はそれを持って話さなければいけないというものです。

お菓子は自由に食べて構わないと伝えました。そして「卵を守れ!」のルールを説明したあと、ワールド・カフェがスタートしました。

ワールド・カフェのススメ方は次のような感じで進みます。

1 テーブルホストを中心に自己紹介をしてから、それぞれのアイデアについて話し合う。(20分)

この時テーブルホストはこちらから指名をしました。運営者である教師は時間をはかったり、盛り上がっていないテーブルにいって「すすんでいますか?」などの声掛けをおこなっていきます。

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2 アイデアの交換をする。テーブルホスト以外のメンバーは立ち上がり、他のテーブルにいって新しいグループをつくって話し合います。ここでそれぞれのテーブルで話したアイデアを交換・共有します。(20分)

このステップこそがワールド・カフェの真骨頂です。まるでミツバチが花から花へ飛び回って花粉を運ぶように、生徒たちが席を移動することで、アイデアという「花粉」がテーブルからテーブルへと運ばれ、思いもよらない組み合わせが生まれていきます。一つの班だけで考えていたら絶対に出てこなかった発想が、他の班の視点と混ざり合うことで進化していくのです。

3 元のグループにもどって、他のテーブルで話し合ったことを共有し、ストローをつかって制作をします。(20分)

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そして最後に発表会、みなでできた作品を、実際に落として実験をしていきました。そのところ2班の生徒の卵がうまく割れずにできました!

生まれたアイデアの数々

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いろいろなアイデアがお披露目されました。

卵をストローで包むものや、

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羽がついているものなど。

鳥かごのように下に置くタイプのものを作った班もあります。

ストローで卵を包むタイプは、ぶつかる瞬間に少しずつ潰れて衝撃を吸収する「クッション型」。羽をつけたタイプは、落ちる速度そのものを空気抵抗で遅くしようとする「減速型」。鳥かごのように下に置くタイプは、着地の面積を広げて力を分散させる「分散型」。同じ道具を使っているのに、これほど異なる発想にたどり着くのは、まさにワールド・カフェで生まれた対話の力といえるでしょう。

これらの卵を2mの高さから落としていきます。

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※ 割れた卵はこちらで調理をして食べました!

非常に盛り上がりました!

生徒たちの声

生徒の感想には次のようなものがありました。

・それぞれが異なった意見をもち、大変だが、良いところをつまんであわせ、総合的に班の人たちが納得できる良い作品ができあがるなと思った。 ・自分の意見を言えるようになっていました。 ・卵が割れてしまって悔しかった。みんなで話し合ったから、卵を割らないように、という単純なことが楽しかった。 ・中学の時同じクラスでもほとんど会話してなかった人とも一緒にお話ができてよかったです。 ・いろんな考えを出しあうのがとても楽しかった。 ・普段の授業では使わない脳をつかった気がする。 ・グループのメンバーの数だけちがう意見があった。 ・他者と自分では物事の見方がまったく異なることがわかりました。ジェスチャーだけで誕生日順に並んでみて、言葉の大切さを改めて感じました。 ・絆が深まった。 ・人と話をするときは目を見ることが大切。 ・自分が思っていることとちがうことを相手が考えていても、しっかりきくととてもいいアイデアだったので、きくのは大切だと思った。自分のことはいう内容をいか論理的に説明できるか、がムズカシイけど、自分でも気づくことがあって楽しかった。 ・同じ目標をもって話し合うと盛り上がる。 ・自分の説明のへたさ。絵も書けないので苦戦した。皆考えることが違ったり、一人で色々な意見を言える人などがいた。 ・こんなに卵について話し合ったことはなかったので楽しかった。

普段の授業ではなかなか知り合いとか仲の良い生徒としか話をしないようです。ワールド・カフェには上記のように様々なツールをつかって、コミュニケーションを活発にとる工夫をとっています。

みなさん、この記事をよんで、そんな工夫、何個みつけることができましたか?

ワールドカフェに興味をもった人はこちらの本をおすすめします!

ワールド・カフェをやろう! 香取 一昭, 大川 恒

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