微積でスッキリ!電磁誘導で発生した熱は一体どこからやってくるの?
微積でスッキリ解ける!物理のジュール熱を“積分”で考えてみよう
高校物理では「微積を使わないで説明する」という方針のもと、教科書がつくられています。これは数学の進度の関係もあり、生徒が“まだ積分を習っていない”ことが前提になっているからですね。でも、物理って実は「微積があればもっとわかりやすい」と感じる場面がたくさんあるんです。
このコーナーでは、「微積を使うと理解しやすい!」そんな物理の場面を一つずつ掘り下げていこうと思います。
今回は前回求めたコの字型回路で、速度が初速度v0から止まる(v=0)になるまでに、
電流が回路に流れることによって、抵抗から発生するジュール熱がどこからやってきたのかについて考えてみましょう。
■ ジュール熱はどこから?
まず、考えてほしいのはこれ。
「回路に流れる電流によって発生したジュール熱って、一体どこからやって来たの?」
高校物理の教科書では、エネルギー保存の視点からこの問題を解きます。でも今回は、微積を用いて“積分で求めてみる”ことにチャレンジしてみましょう。
■ 微積でジュール熱を求めるプロセス
ジュール熱Qは、電力×時間で求められます。
Q = Pt
ジュール熱Q=電力×時間
ここで、P(電力)は時間とともに変化するので、積分が必要になります。
ただし今回の場合は、電力P自体も変化していきますので、時間で積分をする必要がでてきます。電力P=IVについては、IとVはコの字型回路の場合、どちらも変化していくので、一定のものである抵抗値Rで置き換えを行います(オームの法則V=IR)。
P=RI2
コの字型回路に流れる電流はI=Blv/Rなので、
となります。ここで、前回のある時刻の速度は次の式で示されるので、
これを先ほどの式に代入すると、
これを時刻0から時刻∞まで積み上げて積分をすれば、熱量Qを求めることができます。計算をしてみましょう。
ここで、y=e−xについて、xを∞にするとy=0、またxを0にするとy=1になるので、同様に考えれば、
「微積って難しそう…」という生徒も、こうして“意味のある使い方”を経験することで、少しずつ慣れていきます。今回は0から∞まで積分しましたが、「ある時刻tまでの熱量は?」という問いにしてみると、さらに広がりますね。このシリーズでは、他の物理項目もどんどん微積でスッキリさせていきます。どうぞお楽しみに!
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