東大物理で解き明かす!ジェットコースターが落ちない秘密「円運動」[第1問(2)(3)]

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

ジェットコースターがぐるんと一回転!逆さまになっても落ちないのは、なぜだか考えたことはありますか?実はその秘密は、今回挑戦する「円運動」という物理現象に隠されています。

「東大の物理」と聞くと難しそうですが、実はジェットコースターや遊園地のコーヒーカップと同じ、身の回りの法則から成り立っています。今回は、東大の入試問題を題材に、スリリングな円運動の世界を解き明かしていきましょう!

東大物理2015を解く! 第1問Ⅰ(1)(2)(3)Ⅱ(1)(2) (3)(4) (5)(6)

今回の問題:振り子の円運動

まずは問題を見てみましょう。天井から吊るされたおもりが、ぐるりと運動するお話です。

第1問 (2) 糸にかかる力はどれくらい?

おもりが一番下に来た瞬間、糸にはどれくらいの力がかかっているのでしょうか?これを解くには、物理学の最強タッグ、「運動方程式」「力学的エネルギー保存の法則」を使います。

ステップ1:力のバランスを考える(運動方程式)
まず、おもりが最下点にいるとき、どんな力が働いているか見てみましょう。

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働いているのは、糸がおもりを上に引っ張る「張力 T」と、地球がおもりを下に引く「重力 mg」の2つです。おもりは円運動をしているので、必ず円の中心に向かって引っ張る力、「向心力(こうしんりょく)」が必要です。この問題では、「張力 T」が「重力 mg」に勝った分が、向心力として働きます。

これを運動方程式(力のバランスシート)で表すと、次のようになります。

ma = T − mg

この式を「式A」と名付けておきましょう。この式の a(加速度)は、円運動の加速度の公式 a=rv^2を使って、

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と書き換えられます。張力Tを求めるには、最下点での速さv’が分かれば良さそうですね。

ステップ2:エネルギーの変化を追う(エネルギー保存則)
次に、速さv’を求めるために、エネルギーに注目します。一番高い位置(①)から一番低い位置(②)に移動するとき、エネルギーはどのように変化するでしょうか?

①(最高点)のエネルギー:速さは0なので、運動エネルギーは0。高さLの位置エネルギー mgL だけを持っています。

②(最下点)のエネルギー:高さを基準(0)とすると、位置エネルギーは0。速さv’の運動エネルギー1/2mv’^2だけを持っています。

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(①のエネルギー)=(②のエネルギー)

この「エネルギー保存の法則」から速さv’を計算すると、v’=2gLとなります。

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ステップ3:合体させて答えを出す!
さあ、いよいよ大詰めです。ステップ2で求めた速さv’を、ステップ1で作った「式A」に代入します。

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これをTについて解くと、T = 3mg という答えが出てきます。

この問題のポイント!

この問題の面白いところは、答えが「3mg」になる点です。これは、おもりがただぶら下がっている時(張力はmg)の3倍もの力が糸にかかっていることを意味します!ブランコを漕いでいて、一番下に来た時にぐっとお尻が椅子に押し付けられる感覚、あれがまさにこの力の正体です。

このように、「運動方程式」と「エネルギー保存則」を組み合わせるのは、円運動の問題を解くための王道パターン。ジェットコースターのループなど、身の回りの多くの現象もこの組み合わせで説明できるのです。

(3) 最下点での加速度は?

この問題は(2)が解ければボーナス問題です!円運動の加速度の公式 a=rv^2に、先ほど求めた最下点での速さ v’=2gLを代入するだけ。

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答えは 2g となります。地球の重力加速度の2倍の加速度で、おもりは向きを変え続けているのですね。

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