創ることで学ぶ探究活動 ― 「科学グッズ開発ゼミ」
中学生が理科教材を自分たちでつくる、「科学グッズ開発ゼミ」。このユニークな探究活動は、4月から12月にかけて全19回行われました。参加したのは、教材づくりに興味をもつ生徒16名。それぞれが自らテーマを設定し、試行錯誤しながら世界に一つだけの教材を作り上げていきました。
前半では、良い教材とは何かを学び、教材会社ナリカの方から実際の開発現場についてお話を聞く機会もありました。後半では班に分かれて本格的に開発に挑戦。「光の道筋が見える光学台」や「位置エネルギー測定器MRT」、「CMYウォーターキューブ」など、個性と工夫に満ちた教材が次々と誕生しました。発表会では、実際に来場者に体験してもらう形式でプレゼンを行い、自分たちの開発した教材をわかりやすく紹介しました。
活動の最後には、アンケートやインタビュー、教材紹介動画の制作を通じて、自分たちの学びを振り返りました。そこから見えてきたのは、教材づくりを通じて得られたたくさんの「力」です。
たとえば、自分で課題を見つけ、考え、工夫して乗り越える力。仲間と協力しながら進める中で育ったコミュニケーション力。理科の知識だけでなく、数学や技術など他の教科とのつながりを感じながら、より深く学びを広げた力。そして何より、「理科っておもしろい!」という気持ちが、活動を通じてどんどん大きくなっていきました。また、教員や教材会社の方との対話も生徒の思考を広げる大きなきっかけに。「答えを教えない先生」「使う人の目線からのアドバイス」など、大人との関わりが生徒の自立と成長を後押ししました。
もちろん、時間の使い方や準備の工夫など、今後に向けた課題も見えてきましたが、それもまた大切な学びのひとつ。次年度は、さらに工夫を加えて、より深くて楽しい探究活動になるよう取り組んでいきます。
教材を「自分でつくる」ことは、ただの工作ではありません。理科の本質をとらえ、学びを自分の言葉で再構成する創造的な営みです。その過程で、生徒たちは問題を発見し、解決し、仲間と対話しながら学びを深めていきました。「科学グッズ開発ゼミ」は、知識を“使える力”へと変える、まさに探究的な学びの実践でした。
参考 生徒アンケート結果より
Q1 教材作りで苦労をしたことについて教えてください。
• 作ることは難しく試行錯誤が大切であった。
• 作るためには(作りたい内容を)理解していなければならず、通常の授業より難しく感じた。
• 授業では用意されたものを使うが、自分で作ると「どんな形が望まれているか」から考えなければならず、難しかった。
• オリジナル性を出すこと、みんなで協力してアイデアを出すことが難しかった。
• どんなものを作ろうか決まらなかったり、アイデアが思い浮かばなかった。
• どうすれば正解に近づけるかが日々不透明な状態で、難しかった。
• モノコード制作で音の小ささが問題となり、原因解明や解決策探しに苦労した。
• 自分たちが作りたい形にどう実現させるか考えるのが難しかった。
• 「良い所はなにか?」を考えるのに苦労した。
• 色がしっかり付かず、原因を特定し、改善策を試行錯誤した。
• 内臓の詰め方がわからず、参考資料を探して対応した。
• 集団で作る中で、完成像の共有や意思疎通が必要で苦労した。
Q2 創ることによって得た学びについて教えてください。
• 教科書に載っているものでも、全然改良する余地があるという驚きがありました。
• 自分達で調べ、検証し、まとめる力。屈折や減法混色に対する理解。
• 魚の内臓の作りや色について知識が深まった。
• 理科の授業でサラッとやってる実験でも裏で開発した人のアイデアや工夫が感じられるようになった。
• 音の知識が深まった。
• 色の三原色への理解の深み。
• 教科書にある教材や実験道具に目を向けてみると、一つ一つに実験を円滑にわかりやすく進める工夫や、試行錯誤があることを知り、教科書の実験に対する考え方が変わった。
• 位置エネルギーに対する関心が大きくなった。実験で理論値を出すために様々な対策をすること。
• 作るということは理解していなければできないことなので、普通の授業の内容をより深められると思った。
• 正しい知識がないと教材が作れないので、知識を自ら覚えるようになり、結果として主体的な学びになった。
• 教材開発を通して実験をより深く理解し、新たな視点を得た。
Q3 教師の関わり方について、印象に残っていることがあれば教えてください。
• 結構率直な疑問をぶつけて下さったのでありがたかったです。また、「現場の声」のようなものを聞けたのも良かったと思います。
• 自分の馬鹿げた考えにも真面目に取り組んでくださったので嬉しかったです。
• 答えを知っていないからこその途中の考えが大事だと思うから、たくさんの知識をもっている人の考えを聞けると普通とは違う視点からモノを深めることができたと思う。
• アドバイスから試行錯誤して作ることができた。
• 客観的な視点を持つ、実際に使用する人の立場に近い人の意見で参考になった。
• 自分たちの考えと先生の考えを上手く呑み込んでいってできたのでそこは良かったのかなと思った。
• 非常に接しやすく、先の見えない状態で始めたこともあってとても支えになっていました。
• たまに頂くアドバイスで改善点がはっきりとしたためとてもありがたかった。
• 客観的な視点や実際の先生が使ったときにどう思うかなどの適切なアドバイスをしてくれて良かったと思う。
• 先生からの助言もありつつ、「自分で挑戦する」ということができたので、個人的には良かったと思います。
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