重曹でパスタがラーメン風に!?科学の力でモチモチ食感を探る

ケン博士
サイエンストレーナーの桑子研です。このサイトで科学を一緒に楽しみましょう。

重曹でパスタがラーメン風に!?科学の力でモチモチ食感を探る!

「重曹を入れたお湯でパスタを茹でると、モチモチして中華麺みたいになる」

そんな話をきいたので、気になって調べてみました!「麺の科学」という文献にあたると、確かなようです。

麺の科学 粉が生み出す豊かな食感・香り・うまみ (ブルーバックス 2105)

ここでは素麺(そうめん)について述べられていました。方法は次のとおりです。

水1Lあたり重曹おおさじ1杯(約15g)を入れて、素麺を茹でます。

中略

重曹は温度が低い段階で入れるようにしましょう。沸騰水に投入すると、急激な炭酸ガスの発生が起こるため危険です。水の段階で入れておけば、少しずつ発生するので問題ありません。

パスタでも同じことができるようです。この現象のカギは アルカリ性 にあるようです。

1. かん水とアルカリの関係

まず、中華麺とパスタの違いを考えてみます。

パスタ … 小麦粉と水だけで作られる

中華麺 … 小麦粉に かん水(アルカリ性の水溶液)が加えられている

 つまり、中華麺の特徴的なコシや弾力は アルカリ性 によるものなのだそうです。では、実際にアルカリ性がどんな働きをするのか、グリコの公式サイトでも似たようなことが書かれています。

🔗 グリコの解説ページ

グルテンのドウの中にある強い結合の数が酸性では切れて減るんだけれど、アルカリ性では新たに結合して増えるんだ!この結合が多いほどかたくてのびにくいドウができるんだ。

グルテンとは小麦粉に含まれるタンパク質のこと。ここには 「アルカリ性だと結合が強くなる」 とありました。結合が強くなる=コシが生まれる! ということで、どうやらパスタを中華麺風にするカギは アルカリ性の水 にありそうです。でも結合ってなんなんだ?ということでさらに調べてみました。こちらのサイトに次のような記述がありました。

重曹は、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)の略称で、室温の水に溶いた状態では、pHが8程度であるが、加熱していくと、65℃で炭酸ガスを放出し、炭酸ナトリウムに変化する。炭酸ナトリウムは強塩基と弱酸の塩であるため、pHが11を超え、溶液は強い塩基性となる。この条件では、グルテンに含まれるグルタミンはグルタミン酸(図1)に、アスパラギンはアスパラギン酸に変化し、グルテン組織構造が強化される。

参考サイト 「工学院大学 素麺の歯ごたえアップ!

工学院大学 応用化学科. (n.d.). そうめんの科学 [The Science of Somen]. https://www.kogakuin-applchem.jp/laboratory/foodchemistry/somen

とありました。「麺の科学」の著者の先生が書かれたサイトでした。再び麺の科学にあたって読み進めていくと、以下のようなことがわかりました。

1 重曹(NaHCO3)を入れた水を加熱すると、65℃で炭酸ナトリウムに変化して(化学反応)、水溶液を強アルカリ性にする。

2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2 + H2O

2 アルカリ性溶液の中で、小麦粉のタンパク質を構成するグルタミン、アスパラギンからアンモニアが分離して、グルタミンはグルタミン酸に、アスパラギンはアスパラギン酸に変化する(脱アミド)。アンモニアがこの反応で発生して、中華麺特有の匂いがする。

3 グルテンの塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン)と、グルタミン酸やアスパラギン酸がイオン結合し、グルテンの構造がより強くなり、麺が固くなる。

なるほど、そういうことなのかという印象です。実際にやってみました。

水1.5Lの中に大さじ1.5の重曹を入れました。

温めていくと二酸化炭素の泡が発生します。

パスタを投入・比較ように、水だけで茹でるものも用意しました。

重曹水で茹でている方は泡がたくさん出てきます。

こちらは水だけで茹でている方です。

左が水、みぎが重曹水で茹でたもの。色が違うのに気がつきますね。少し濃いです。

中華麺をアルカリ性の条件下で茹でると、カルコンという黄色を示す物質ができからだとのこと。匂いがまた独特で右側の重曹水の方はラーメンの麺の匂いがしました。どちらも食べてみたところ、確かに重曹水の方がもちもち食感で、また少し苦味がありました(重曹を入れすぎたか?)

実際にこの凄技について、チャンハウス(フジテレビ)にて解説しました。こちらをご覧ください。

パスタ麺が中華麺に変身!?重曹でできる科学実験の紹介(チャンハウス)

3. ターメリックを使ったカラフル実験!?

さて、もう一つ面白い話を発見しました。ターメリック(ウコン)を使うと 麺の色が変わる という実験です。📖 『ぶっ飛び!科学教室』(化学同人)によると…

ぶっ飛び! 科学教室: 科学オタクが贈る とっておきのネタと実験

• お湯に ターメリックをスプーン1杯 入れて、そこに パスタ を茹でると オレンジ色 に!

中華麺 を茹でると… 赤色 に!

なぜ? それはターメリックが 酸性・アルカリ性に反応する から。

• パスタ(ほぼ中性)→ オレンジ色

• 中華麺(アルカリ性)→ 赤色

これは理科の実験にも使えそうですね!次回、実際に重曹パスタを作ってみた結果をレポートしたいと思います!ぜひ、みなさんも試してみてくださいね! 🍜✨

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