木炭とアルミホイルで作る不思議な「木炭電池」
今回は、「木炭電池」の作製をご紹介します。特別な器具はほとんど必要なく、準備も比較的簡単。それでいて、電池が「できる」という驚きと、その原理に触れる喜びを生徒たちに提供できます。私自身も、予備実験のたびに「おおっ!」と声を上げてしまうほど、そのシンプルさから生まれる化学反応の不思議さに魅了されています。
木炭電池を作って「化学反応」を実感!
この木炭電池の実験は、身近な材料で電気を取り出すことができるため、生徒たちの「なぜ?」という探究心を刺激するのに最適です。酸化還元反応によって電気が生まれるという、化学の重要な概念を視覚的に体験できます。
1. まずは動画でイメージを掴もう!
2. 準備はシンプル!必要なものリスト
この実験に必要なものは、どれも手に入りやすいものばかりです。
- 木炭: (バーベキュー用などでOK。表面積が広いものが良い)
- 食塩水: (水に食塩を溶かしたもの。濃度は適当で構いませんが、濃い方が反応しやすい傾向があります)
- キッチンペーパー: (木炭とアルミホイルの間に挟むセパレーターとして)
- アルミホイル: (電極として。厚手のものが扱いやすいかもしれません)
- クリップ(目玉クリップなど): (木炭にリード線を接続するため)
- 電子オルゴール: (低い電圧でも音が鳴るため、この実験に非常に適しています。Amazonなどで手軽に入手可能です。)
3. 実験手順と「なぜ?」の深掘り
それでは、実際に木炭電池を作ってみましょう。
- キッチンペーパーを食塩水に浸す: キッチンペーパーを食塩水にしっかりと浸し、余分な水分を軽く絞ります。これが電解液の役割を果たします。
- 木炭にキッチンペーパーを巻く: 食塩水で湿らせたキッチンペーパーを、木炭の周囲にしっかりと巻きつけます。
- アルミホイルを巻く: キッチンペーパーの上から、さらにアルミホイルを隙間なく巻きつけます。このとき、アルミホイルが木炭に直接触れないように、キッチンペーパーが間に挟まっていることを確認してください。
- クリップを木炭に取り付ける: 木炭の露出している部分に、目玉クリップなどをしっかりと取り付けます。これが木炭側の電極になります。
- 電子オルゴールを接続する:
- 電子オルゴールの黒いコードを、アルミホイルに接続します。
- 電子オルゴールの赤いコードを、木炭に取り付けたクリップに接続します。
すると、わずかですが電子オルゴールが鳴り始めるはずです!
4. 実験のポイントと化学的考察
木炭電池の反応は、主に以下のようになります。
- 負極:アルミホイル(アルミニウム:Al) アルミニウムが酸化され、電子を放出します。
反応式: - 正極:木炭(炭素:C) 木炭は導電体として機能し、食塩水に溶けている酸素(空気中から溶け込んだもの)が電子を受け取り、水と水酸化物イオンを生成します。
反応式:
全体の反応: 負極から放出された電子が外部回路(電子オルゴール)を通り、正極で酸素の還元反応に使われます。これにより電流が発生し、オルゴールが鳴ります。食塩水は、イオンを介して電荷を移動させる電解液の役割を果たします。
この反応は、空気中の酸素を利用しているため、炭が乾いてから行う方が電圧が高く出やすいという観察結果も、酸素の供給がスムーズになるためと考えられます。
- 実験後のアルミホイルの「穴」:
実験後のアルミホイルを蛍光灯にかざしてみると、ポツポツと小さな穴があいていることに気づきます。これは、アルミホイルが電気化学反応によって**一部溶けている(酸化している)**証拠です。この目に見える変化は、生徒にとって「化学反応が本当に起こっているんだ!」という感動を与え、化学への興味を一層深めることでしょう。
身近な材料から生まれる化学の感動を!
このように、木炭電池の実験は、身近な材料で「電池ができる」という驚きだけでなく、その背後にある酸化還元反応や電子の移動といった化学の重要な概念を体感できる素晴らしい機会です。生徒たちが「化学って面白い!」と感じる瞬間を、ぜひ先生方も一緒に体験してみてください。予備実験で先生自身が感動する姿を見せることも、生徒の学びを深める大切な要素になるはずです!
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