実験は「答え合わせ」じゃない!驚きと発見を生む科学的な考え方とその授業法
「物理の実験」と聞くと、皆さんは何を想像しますか?教科書に載っている公式が正しいかどうかを、ただ確認するだけの作業だと思っていませんか。もしそうなら、それはとてももったいないことです。それだけならやらなくてもいいかもしれません。実は、科学の本当の面白さは「答え合わせ」などではなく、その先にあるのです。
「正解の確認」ではありません
実験において、もっとも避けるべきなのは、「〜の法則(原理)の検証をする」ことです。あらかじめ答えが決まっていて、それをなぞるだけの実験は、まるで結末を知っている映画を見せられているようなものです。
本来、実験とは傾向や関係性を見出すものであるべきで、目の前の現象をじっと観察し、データを取り、そこから「あれ?もしかしてこれとこれは関係があるんじゃないか?」と気が付いたり、考えたりすることが大切です。この「発見のプロセス」こそが、科学の心臓部と言えます。
「仕事の原理」に見る、自然界の不思議なバランス
「仕事」についての実験を例に挙げてみましょう。滑車やてこなどの道具を使った実験をしてみると、ある面白いことに気づきます。重いものを持ち上げる時、道具を使えば小さな力で済みますが、その分、長い距離を動かさなければなりません。色々なパターンで試していくうちに、生徒たちは「力と移動距離を掛け算した値は、道具を使っても使わなくても、実は大体同じになるのではないか?」という法則性に自らたどり着くことができます。

そこで初めて、力と移動距離の積(力と変位の内積)に重要な意味があると考え、これを「仕事」と名付けます。そして、道具を使っても仕事の量は変化しないという「仕事の原理」を認めよう。となります。ただ公式を暗記するよりも、ずっと深く、納得感を持って理解できるはずです。
教科書を「終わらせる」ことより大切なこと
科学的な思考や手続きを学ぶことこそが、理科の醍醐味です。しかし、先生の中には「実験ばかりしていたら教科書の内容を最後まで終えることができない」と不安に思う方もいらっしゃいます。
ですが、教科書には膨大なコラムや付随的な情報が詰め込まれています。そのすべてを均一に教える必要はありません。生徒たちの成長にとって本当に必要なエッセンスを見極め、重要な部分を重点的に教えていく「割り切り型」の姿勢も大切ではないでしょうか。
また中学では探究の過程を特に重視しますが、その探究の過程も1つの実験について全て行う必要はなく、今回は実験計画に力を入れようなど、先生が重みをつけて構成を考えていき、年間を通して探究の過程全体を学んでいけばいいと思います。また、今圧迫しているもの、たとえば膨大な問題演習についても、すべてを学校の授業内で完結させる必要があるのか、今一度問い直してみるといいかもしれません。
たとえばですが受験を終えた途端に生徒のやる気がなくなった場合、それは今までの授業が受験対策に特化していた可能性があります。受験が終わったとしても、生徒が意欲を失わない、自分のためになっていると思える授業を目指したいですね。
数学の影に隠れた「科学の物語」を見つけよう
多くの高校生が「物理学は数学的な体系が先に出来上がっていて、それを使って現象を計算していくものだ」という誤解を抱いています。しかし、歴史を紐解けば、常に先にあるのは「現象」であり、それを説明するために科学の方法が生み出されてきました。
物理は冷たい数字の羅列ではなく、自然界との対話です。計算の技術を磨くだけではなく、現象の背後にあるルールを見つけ出す科学の方法を身につける学習を、これからも伝えていきたいと思います。
5月のイチオシ実験!
キーンと冷えるドライアイス!気温が上がってくるこの時期・ドライアイスを使った昇華・凝結・等速度直線運動の実験はいかが?

液体ゼロ!ドライアイスが消えるまでの3時間を科学する(昇華・凝結・等速度直線運動)
テレビ番組監修・イベント等のお知らせ
- 4月30日(木)「THE突破ファイル」(日本テレビ)の科学監修を担当しました。
- 5月8日(金)理科教育ニュースを担当しました。
- 6月14日(日) 千葉大学インスタレーション「探究」にて講師を務めます
- 6月26日(金) 千葉大学の公開研究会(中学理科について授業公開予定)
- 7月18日(土) 教員向け実験講習会「ナリカカサイエンスアカデミー」の講師をします。お会いしましょう。
書籍のお知らせ
- 『大人のための高校物理復習帳』(講談社)…一般向けに日常の物理について公式を元に紐解きました。特設サイトでは実験を多数紹介しています。※増刷がかかり6刷となりました(2026/02/01)

- 『きめる!共通テスト 物理基礎 改訂版』(学研)… 高校物理の参考書です。イラストを多くしてイメージが持てるように描きました。授業についていけない、物理が苦手、そんな生徒におすすめです。特設サイトはこちら。

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- 楽しい実験…お子さんと一緒に夢中になれるイチオシの科学実験を多数紹介しています。また、高校物理の理解を深めるための動画教材も用意しました。
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