カルデラに盾状火山!? 科学で読み解くプロメテウス火山の秘密(ディズニーシー物理学)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

ディズニーシーのシンボル、あの雄大な「プロメテウス火山」。アトラクションに乗ったり、美しい風景の一部として眺めたり…でも、「ただの大きな飾り」だと思っていませんか?実はあの火山、科学の目でよーく見ると、地質学的なこだわりが満載の「生きた教材」だったのです!

「なんでこんな形なの?」「この火山、実際にある火山に似てる?」

先日、ディズニーシーを訪れたときにゴンドラから撮影した写真を見返していると、そんな科学的な視点がムクムクと湧き上がってきました。ちょうど火山について研究されていた方の解説があったので、それをもとに、プロメテウス火山に隠された科学のストーリーを紐解いてみましょう。

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見た目は「円錐形」。でも噴火のタイプが違う?

プロメテウス火山は、美しい円錐形をしています。これは、いわゆるコニーデ型火山と呼ばれるタイプです。 こうした形状の火山は、浅間山のように“美しい三角形”を描くのが特徴で、これは粘り気が「中くらい」のマグマが噴火を繰り返して作られます。

ところが、プロメテウス火山をよく見ると、山体の一部には粘り気の「弱い」溶岩が流れ出た跡が残されています。そして、噴火の様子も、実際の噴火様式は“ストロンボリ式”に近いです

ストロンボリ式噴火とは? 科学の「矛盾」

“ストロンボリ式”というのは、火口から定期的に「ドカン、ドカン」と小規模な爆発が起こる噴火様式のこと。日本では伊豆大島の三原山がこのタイプにあたります。ハワイのキラウェア火山やマウナロア火山もこのタイプです。これらの火山は、爆発とともに溶岩が「さらさら」と流れ出すことが多く、粘り気の低い玄武岩質(げんぶがんしつ)のマグマが特徴です。

…ここで、理科の知識がある人は「あれ?」と思うはずです。 玄武岩質のマグマは非常に流れやすいため、実際にはなだらかなお皿を伏せたような山、つまり「楯状火山(たてじょうかざん)」になるはず。つまり、理屈でいえばプロメテウス火山は、ハワイのような「なだらかな山」にならないとおかしいんですね。なぜ、浅間山のような「とがった円錐形」なのでしょうか?

なぜ円錐形? 科学と「物語」の融合

ここで出てくるのが、「見た目重視」というテーマパークならではのアプローチです。 なだらかな山よりも、美しくそびえる火山のシルエットこそが、冒険の舞台としてふさわしいからでしょう。科学的な正しさ(楯状火山)よりも、観る者の心をつかむ「演出」としての形状(円錐形)を選んだのです。また溶岩のイメージはドロドロしたイメージが一般的に強いため、皆がイメージしやすい溶岩を流したものと思われます。

ミステリアスアイランドは「カルデラ」だった!

そして火山の北側に広がるアトラクションエリア「ミステリアスアイランド」。 このエリア全体が、まるでカルデラのように、火山活動によって中央部が陥没してできた「くぼ地」に見えませんか?火山が単なるオブジェではなく、ちゃんと地質学的なストーリーを持って存在していると考えると、なんだか一気にロマンが深まりますね。

見どころは山頂だけじゃない!足元の「地質学」

プロメテウス火山のすごさは、これだけではありません。足元や壁にも注目してみてください。地層の様子や、

それが大きな力で曲げられた「褶曲(しゅうきょく)」によって傾いている様子も見られます。

さらには柱状節理(ちゅうじょうせつり)まで見られます。まずこちらが実際の柱状節理。瀬戸内海の女木島(おにがしま)で私(桑子)が撮影してきたものです。

柱状節理というのは、溶岩が冷え固まるときに、体積がキュッと縮んで五角形や六角形の「鉛筆」のようにヒビが入る現象です。そして、こちらがディズニーシーの柱状節理。

本物そっくりに、忠実に再現されていて、とても面白いですね!理科が苦手な方でも、こんなふうに「身近な場所」を入り口にしてみると、自然と知識が広がっていきます。次にディズニーシーに行くときは、ぜひ火山の形や足元の岩石にも注目してみてください。科学を“遊び”ながら学べる、そんな新しい楽しみ方がきっと見えてきます。

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