パスカル電線で磁場を「見る」!電流が生み出す見えない力の正体

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

電流と磁場の関係を生徒たちにどのように教えていますか? 「右ねじの法則」や「フレミングの左手の法則」など、覚えるべき法則は多いものの、目に見えない磁場の存在を実感させるのはなかなか難しいですよね。

今回ご紹介するのは、パスカル電線を使った直線電流の周りにできる磁場を観察する実験です。パスカル電線とは、内部に10本の電線が並列に接続されており、見かけ上は1Aの電流でも、まるで10Aが流れているかのように振る舞う特殊な電線です。少ない電流でも強い磁場を発生させることができ、より鮮明に磁場の様子を観察することができます。

パスカル電線で「見えない力」を視覚化!直線電流が作る磁場観察実験

準備するもの

  • パスカル電線: 直線電流の磁場観察用として、長さ10mのものが理想的です。
    パスカル電線に関する詳細はこちらをご覧ください

え!危ない!?大電流を使った右ねじの法則の確認実験(パスカル電線)

  • 電源装置U(直流): 20Vの電圧が供給できるもの。必要に応じて、複数台(今回は2台)あると、より大きな電流を流すことができます。
  • 厚紙: パスカル電線を通すためのもの。実験台に固定できる程度の大きさ・厚さがあると良いでしょう。
  • 方位磁針: 複数個あると、磁場の方向を同時に観察できて効果的です。
  • 砂鉄: 磁場の形を可視化するために必要です。
  • 導線: 電源装置とパスカル電線を接続するために使用します。
  • スタンドとクリップ: パスカル電線を固定するため。
  • (必要に応じて)バナナプラグコード、ワニ口クリップ: 配線を容易にするため。

実験の手順

それでは、具体的な実験手順を見ていきましょう。

  1. パスカル電線の設置:

    まず、パスカル電線を電源装置U(直流)に接続します。今回は20Vの電圧を印加しました。実験台に立てたスタンドに厚紙を固定し、その中央にパスカル電線を通します。パスカル電線がまっすぐに伸びるように調整してください。

  2. 方位磁針での磁場観察:

    厚紙の周りに方位磁針をいくつか置きます。この際、パスカル電線を中心に円状に配置すると、磁場の方向をより分かりやすく観察できます。

コンパスをおいて電流を流すと、

このようにコンパスが動いて電流が流れると磁場が生じる様子が観察できます。紙面裏から表と紙面面から裏の二通り行うことができます。

電源装置を二つに重ねてて直列接続をしてから、

砂鉄を巻いて、軽く板を叩くと、

模様が出てきます。

よくみると、

このように回転していることがわかります。最後に次にコイルの周りにこのようにコンパスをおいて実験をすると、このように中央の磁場もわかります。

この実験を通して、生徒たちは以下の重要な理科の知識を深めることができます。

  • 電流と磁場の関係: 電流が流れると、その周りに磁場が発生すること。
  • 磁場の方向: 直線電流の磁場は、電流の向きに対して右ねじの法則に従って同心円状に発生すること。
  • 磁場の強さ: 電流の大きさが大きいほど、発生する磁場も強くなること(パスカル電線の効果)。
  • 磁力線: 砂鉄が描く模様が、磁力線の可視化であること。磁力線はN極から出てS極に入り、途中で途切れることなく閉じていること。
  • コイルの磁場: コイルに電流を流すと、コイルの内部に一様な磁場が発生し、外部には棒磁石のような磁場ができること。

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