電気マン・宅配人・走れメロス。中学生が本気で挑んだ電流・電圧モデル化の記録

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「電流って、いったい何が流れているの?」——この問いに、あなたはどう答えますか?教科書の言葉で説明するのは簡単です。でも、自分の言葉で、自分だけのモデルで説明できたとき、はじめて「わかった!」という感覚が生まれます。今回の授業では、中学生たちがその挑戦に挑みました。

モデル化とは何か——科学者も使う「例え」の力

授業のはじめに、こんなことを伝えました。「モデルとは、複雑なものをわかりやすく表す道具のこと。正解は一つじゃない」と。

実は、科学者たちもモデルを使いながら自然現象を理解してきました。原子の構造だって、最初は「ブドウパンモデル」、次に「太陽系モデル」と変わってきました。モデルは更新されるものであり、「完璧でなくてもいい、現象を説明できることが大切」というのが科学の考え方です。

今回の課題は、電池・電流・電圧・豆電球の関係を、自分だけのモデルで説明することです。授業で学んだことをまとめると、次のようになります。

・回路には何か(電流)が流れている。
・電流が豆電球に流れると、光を放つ。
・身の回りの電気製品は、電気が来ると光る・熱が出る・モーターが動くなど、電気エネルギーを別のエネルギーに変えている。
・電球を光らせた後も、電流の大きさはその前後で変わらない。
・電流を流そうとするはたらきを「電圧」という。

挑戦1 電流・電圧を何かで例えて、わかりやすく表してみよう(モデル化)

「電気マン」がお金を運ぶ——関所モデル

ある生徒は、「電気マン」がお金(=エネルギー)を電池でもらい、関所(=豆電球)まで届けるモデルを考えました。ポイントは、電気マンは関所を通過しても消えないというところ。電流が豆電球の前後で変わらないという性質をうまく表現できています。シンプルながら、なかなか良いモデルです。

血液循環モデル——理科と生物が融合!

こちらは「人体モデル」です。心臓の血圧が電圧、赤血球が電流、酸素がエネルギーに対応するという、生物と物理を融合させた大胆な発想です。実はこれ、科学的にもなかなか鋭い視点です。血液循環と電気回路は、ポンプ(心臓・電池)がエネルギーを供給し、管(血管・導線)を通じて末端(臓器・電球)にエネルギーを届けるという構造がよく似ています。「酸素がエネルギーだとすると肺は何をしているのか?」という疑問も生まれますが、それこそがモデルを深める問いになりますね。

水路モデル——教科書の定番、その理由とは

こちらは、教科書にもよく登場する水路モデルです。水の流れが電流、水の高さの差(水圧)が電圧に対応します。高いところから低いところへ水が流れるように、電圧の高い側から低い側へ電流が流れるという関係をわかりやすく示せます。万能ではありませんが、電圧と電流の関係を直感的につかむには優れたモデルです。

電気マンがたくさん——電子のイメージに近いモデル

導線の中に電気マンがたくさんいて、電池でエネルギーVを受け取り、電球に届けるというモデルです。「たくさんの電気マン」は電子のイメージそのもので、実際の物理現象にも近い発想です。電流とは、無数の電子が一斉に動く現象ですから、このモデルは案外、教科書よりリアルかもしれません。

会社員が電車に乗るモデル

電流が「会社員」、電車が「電圧」というユニークなモデルも登場しました。豆電球に着くと人が降りていく——エネルギーが消費されるイメージはわかります。ただし、人が降りてしまうと、電流(人の数)が減ってしまうという矛盾が生まれます。豆電球の前後で電流は変わらないはずなので、ここが改善ポイントになりそうです。モデルの「穴」を自分で発見できることも、立派な学びです。

挑戦2 電池1個・抵抗2個 直列接続・並列接続に挑戦!

自分のモデルを使って、直列・並列回路を説明する挑戦です。ここからがいよいよ本番、モデルの真価が問われます。

直列モデル


滑り台とボールを使ったモデルでは、電圧に相当するボールの数が合わないという問題に直面しました。直列回路では、各抵抗にかかる電圧の合計が電源の電圧と等しくなります。これをモデルで正確に表すのは、思ったより難しいのです。

宅配会社モデルでは、電池の部分でエネルギーという「荷物」を受け取り、各抵抗に届けていきます。信号がスイッチを表すというアイデアも光っています。ただ、「会社(電池)の荷物の数」と「各抵抗に渡す荷物の数」が合っているかどうか、電圧の整合性が課題として残りました。


「走れメロス」をモデルに使った生徒も!メロスが山賊(=抵抗)にお土産(=エネルギー)を届けていくという発想は独創的です。街(電池)のお土産の数は何個なのか、やはり電圧の配分が気になるところです。


一方、「一人の宅配人が2つのエネルギーを運び、それぞれの豆電球に1つずつ渡す」というモデルは、直列回路で電球が暗くなる理由をスパッと説明できています。エネルギーを分け合うから、それぞれが暗くなる——なるほど、とうなずける説明です。

並列モデル——「電圧問題」という壁に全員ぶつかる


並列回路では、各電球にかかる電圧は電源と同じになります。つまり「荷物を2人で分けても、それぞれが電源と同じ量の荷物を持っていなければならない」という状況になります。これをモデルで表現するのが、今回最大の難関でした。


2人の宅配人がそれぞれ荷物を運ぶモデルに改良しても、電池の荷物数と各電球の荷物数が合わない「電圧問題」はなかなか解決しません。滑り台モデルの生徒も同じ壁にぶつかっていました。

モデルの「壁」こそが、本当の学びの入口

「うまく説明できない」「矛盾が出てくる」——それこそが、深く考えている証拠です。実は、プロの物理学者が使うモデルでも、すべての現象を完璧に説明できるものはありません。モデルの限界に気づくことが、次のより良いモデルへの第一歩なのです。
電流はうまく説明できても、電圧の説明で詰まってしまう——この「壁」こそが、今回の授業の最大の収穫かもしれません。ここに抵抗の概念が加わると、さらにモデルは深化していきます。続きはこちらをご覧ください。

電流・電圧・抵抗のモデル化について

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