亀さんが電気を運ぶ?生徒の発想から生まれたユニークな電流・電圧・抵抗のモデル集

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

電気は目に見えない――だからこそ生まれた、生徒たちのユニークな発想

電流、電圧、抵抗。これらはすべて目に見えません。だからこそ理科の授業では、水路や坂道などの「見えるもの」に置き換えてイメージする「モデル化」がよく行われます。しかし面白いことに、電気の世界には「これさえ覚えれば完璧」という万能モデルが存在しません。

単元ごとに「ここではこのモデルが説明しやすい」と使い分けられているのが実情です。今回は、そんな電流・抵抗・電圧のモデルについて考える授業を行い、生徒たちの自由な発想からたくさんの面白いアイデアが飛び出しましたので、ご紹介したいと思います。

電流・抵抗・電圧のモデルを考える授業を行いました。電気関係のモデルは全体を貫くような、これが良いという決まったものがなく、単元ごとにこのモデルが説明しやすいと紹介されることが多いところです。生徒の想像力をもとに、色々なアイデアが出てきました。ここで出てきた面白いものを紹介しようと思います。

水路とスポンジモデル――抵抗の変化を「詰まり具合」で表現

こちらは水路とスポンジを使ったモデルです。抵抗がスポンジで、スポンジの大きさが変化することで、抵抗が変化していき、水流が変化していくという説明ですね。うまく説明ができている部分もありそうです。

水路を流れる水を電流、水路の断面積の狭さを抵抗と考えるこのモデルは、実は電気抵抗の公式ともよく対応しています。導線の抵抗は、断面積が小さいほど大きくなるという性質があるのですが、スポンジで水路を詰まらせるほど水が流れにくくなるイメージは、まさにこの関係を直感的に表しているのです。生徒が思いついたアイデアが、教科書の数式の意味と自然につながっているというのは、なんとも嬉しい発見ですね。

亀さんモデル――エネルギーを運ぶキャラクターという発想

こちらは亀さんモデルです。亀がエネルギーVを運んでいて、抵抗の部分でそれを離すのだそうです。後で書き直していましたが、甲羅を亀が離しているというものに改良されていました。なんとも可愛いイラストですね。

このモデルの面白いところは、電子や電流そのものではなく、「エネルギーを運ぶ主体」としてキャラクターを登場させている点です。実際の電気回路でも、電子自体が移動する速さはとてもゆっくりですが、電子が持っているエネルギーは回路全体にほぼ瞬時に伝わっていきます。亀がのんびり歩いていそうなのに、エネルギーはしっかり届けているというイメージは、案外この「電子の動く速さ」と「エネルギーが伝わる速さ」の違いを直感的に捉えているのかもしれません。

ビー玉釘モデル――パチンコから見えてくる立体的な発想

こちらはビー玉釘モデルです。パチンコ玉みたいで面白いですね。釘の数が増えると抵抗が増えるというモデルです。立体的な水路モデルにも通じる面白いモデルです。

釘の数が多いほど玉が通りにくくなるというこのイメージは、実は金属の中を電子が移動する様子とも似ています。金属の中では、電子は原子とぶつかりながら進んでいて、このぶつかる頻度が高いほど電流が流れにくくなります。これが抵抗の正体の一つです。ビー玉が釘にぶつかりながらジグザグに落ちていく様子は、電子が原子とぶつかりながら進む姿を、思いがけずリアルに再現していると言えそうです。

足踏みモデル――教科書にも登場する定番の考え方

私はこちらの足踏みモデルが好きです。抵抗が踏んでいる量、水が電流、電圧が水圧です。電気回路の本にも載っているようなモデルですね。

このモデルは、水圧を電圧、水の流れを電流、そして足で踏んで水を止める力を抵抗として表す、いわば「水流モデル」の応用版です。ポンプで水を押し上げる力が電圧に対応し、蛇口をひねる(または足で塞ぐ)ことが抵抗の調整に対応するというイメージは、多くの教科書や参考書でも定番として紹介されています。生徒たちが自分の力でこの定番モデルにたどり着いたというのは、それだけ本質を捉えた発想ができていた証拠と言えるでしょう。

モデルは「万能」ではないからこそ面白い

どの説明にどのモデルが良いのか。モデルで全てが説明できるのか。こうした問いについても、生徒たちと一緒に考えさせてみるのも良いかもしれません。実は科学の世界では、一つの現象に対して複数のモデルが使い分けられるということは珍しくありません。例えば光も「粒」として考えるモデルと「波」として考えるモデルがあり、状況によって使い分けられています。電気のモデルも同じで、「万能な正解」がないからこそ、それぞれのモデルの得意なところと苦手なところを比べて考えることが、科学的な思考力を育てる良いトレーニングになるのです。生徒たちのユニークな発想は、まさにその第一歩だったのではないでしょうか。

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