ビーズ不要!「偏光板」と「セロテープ」だけで作る、光のティッシュの芯万華鏡
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
キラキラと色が移り変わる万華鏡。でも、もしその万華鏡に「ビーズ」が一切入っていなかったら…?
「え、じゃあ何が光ってるの?」
今日は、トイレットペーパーの芯とのぞき穴の「黒い板」、そして「セロハンテープ」だけで作れてしまう、信じられないほど美しい「偏光板(へんこうばん)万華鏡」をご紹介します。この色の秘密は、光そのものが持つ「クセ」にあるんです!まずは、この不思議な万華鏡がどんな風に見えるか、ご覧ください。 こんなにきれいな幾何学(きかがく)模様が、ただ筒を回すだけで現れます!

こうなったかとおもいきや、

このようになったり。少し和風な感じもまた素敵ですよね。
みなさんは偏光板をしっていますか?
この万華鏡の秘密は、「偏光板(へんこうばん)」という不思議な黒いフィルムにあります。高校の授業では、「光は“横波”だ」ということを確かめる実験で登場する、おなじみの透明な板ですね。
光は、実は「波」として進んでいます。例えるなら、上下、左右、斜め…あらゆる方向に振動しながらまっすぐ進む「騒がしい波」です。 偏光板は、そんな光に「並んでもらう」ための、目に見えない“すだれ”のようなものです。
「タテ方向のすだれ」を光が通ると、タテ方向に振動する光だけが通り抜けられます。 その直後に「ヨコ方向のすだれ」を置いたら、どうなるでしょう? タテ方向の光はヨコのすだれを通れず、結果として光が遮られて真っ暗になります。
偏光板には向きがあって、2枚の偏光板を重ねて回転させると、光を通したり(すだれの向きが揃う)、遮ったり(すだれの向きが直角になる)することができる不思議な板なのです。ホームセンターなどで、大きいものが1000円位で売られています。
この性質は、私たちの生活にも役立っています。 光は水面などで反射をすると、振動の方向が揃うことがあります。ギラギラした反射光ですね。カメラのレンズに偏光板(PLフィルター)をつけると、この反射光だけをカットして、水の中がよく見えるようになるんです。
なぜセロテープが「虹色」を生むのか?
「偏光板が光を通したり消したりするのはわかった。でも、なぜ色が付くの?」
ここで登場するのが、第二の秘密兵器、「セロハンテープ」です。実はセロハンテープには、「通っていく光の振動方向を『ねじる』」という、すごい性質が隠されています。さらに面白いことに、ねじる角度は光の「色」によって微妙に違うのです。
この万華鏡は、セロテープを貼った偏光板と、もう一枚の偏光板を重ねています。 「すだれ」を通って並んだ光がセロテープを通ると、赤色はAの角度に、青色はBの角度に…と、色がバラバラの方向にねじられます。
その光が、出口にあるもう一つの「すだれ」にたどり着いたとき、ある色は通り抜け、ある色は遮られます。結果として、特定の色が強められたり、消されたりして、私たちの目には美しい「虹色」として届くのです!
セロテープの貼り方や重ねる枚数を変えるだけで模様が無限に変わるのは、この「光のねじれ方」が変わるからなんですね。
そんな不思議な偏光板をつかって万華鏡をつくってみました。 有名なものですが、トイレットペーパーの芯と、ラップの芯を合わせて作ったエコで、きれいな万華鏡です。
科学のレシピ
用意するもの:
偏光板、トイレットペーパーの芯、ラップの芯、セロテープ、ハサミ、カッター、カッティングミラー(鏡のシール)、ペンライト
手順:
1 ラップの芯の中心をカットします。カッティングミラーを長方形に3枚カットして、ラップの芯におさまるように、三角形の筒を作ります。(これが万華鏡の鏡になります)

2 ラップの芯の片一方の窓(のぞき穴)に、偏光板を1枚貼り付けます。
3 もう一枚の偏光板(こちらは光が入る側)に、適当にセロテープを貼りつけまくります。この貼り付け方によって模様が変化するので、たくさん、いろんな角度で貼り付けてみましょう。
4 トイレットペーパーの芯を半分に切り、片方に半紙やトレーシングペーパーなどの光をうっすら通す紙を貼りつけます。その上から、3で作った「セロテープを貼り付けた偏光板」を貼り付けます。(これが色の元になります)

5 ラップの芯(鏡の筒)と、トイレットペーパーの芯(色の元)を合わせたら完成です。

遊び方
まずは蛍光灯に向けて、トイレットペーパーの芯の部分をゆっくり回しながら覗いてみましょう。

模様がころころと変化していきます。

中にビーズなどが入っていないのに、こんなに複雑な色と形が生まれるなんて、本当に不思議ですよね。もっときれいに見るのなら、色の元の部分(トイレットペーパーの芯)の下からLEDライトやスマホのライトをあてて見てみましょう。

ライトの当て方をいろいろと変えると、単に明るく綺麗になるだけではなく、 光が万華鏡の中で反射しあい、面白い模様ができあがりますよ!!

幾何学模様って、ホントきれいですね。光の性質そのものが作り出すアートが、人の心を動かします。
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