触らずに止める!電気ブランコに隠された「電磁ブレーキ」の魔法(大人のための高校物理復習帳)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
※ このページは、拙著『大人のための高校物理復習帳』に出てくる実験と連動をしたページです。
揺れているブランコを、触らずに止める—。
もしそんな「魔法」が使えたら、驚きませんか? しかも、使うのは「電池」ではなく、ただの「銅線」だけ。今日は、理科室で定番の「電気ブランコ」実験に隠された、アッと驚く裏ワザをご紹介します。これは、物理が「魔法」に見える瞬間ですよ!
みなさんは電気ブランコを作ったことがありますか?
「電気ブランコ」って知っていますか? 電池と磁石を使って、コイル(銅線を巻いたもの)をブランコのように動かす、電磁石の実験です。これは、電流が磁場から力を受ける「フレミング左手の法則」を確認する、理科の定番ですね。
作り方は簡単です。銅線を空き缶に50回くらい巻きつけて、コイルを作ります。

(※詳しい作り方:コイルの入り口と出口の銅線は、吊るせるように長めに残しておきます。この両端を使ってコイルを棒などに吊るし、ブランコのようにします。両端に電池をつけて電流を流しながら、100円ショップなどで売られている磁石を近づけると…あら不思議!コイルが磁石から力を受けて動き出します。)
これはコイルが「電磁石」になったことで起こる現象で、「電気」を「運動」に変える(モーター)の基本的な仕組みです。
さて、今日ご紹介するのは、この装置を使った裏技的な面白い実験です。なんと電池を使わないで、ゆれているブランコに触らずに止めてしまうという実験です。
科学のレシピ(触らずに止める裏ワザ)
① まずは電気ブランコに何も接続をしないで(電池は使いません!)、ブランコをゆらします。
② ゆれたままの状態で、コイルの両端の銅線(ワニ口クリップなど)を接続します(ショートさせます)。
③ 様子を見る。
実験結果
なんと、突然ブランコが止まります!!こちらの動画を御覧ください。
ワニ口同士をつないだ瞬間、すっと突然コイルが止まったのがわかりますね。


揺れているのに・・・。

銅線をつなぐと・・・。

ピタッと止まる!!

繋いだままゆらしてみても・・・。

すぐに止まる!
なぜ? 魔法の正体は「電磁ブレーキ」
なぜこんなことが起こるのでしょうか?通常の「電気ブランコ」は、「電気」を「運動」に変える(モーター)の実験でした。今回の裏ワザは、その真逆です。「運動」が「電気」を生み出している(発電機)のです!
コイルが磁石のそばを(運動して)横切ると、コイル内部の磁場の変化をさまたげようとして、なんと自動的に「電気(誘導電流)」が発生します。これを「電磁誘導」といいます。そしてここからがキモです。両端をつないだことで、その発生した電気がコイルの中をぐるぐる流れます(これが「渦電流(うずでんりゅう)」の一種です)。
電流が流れると、コイルは「電磁石」になりますよね? この電磁石が、ブランコの動きを「邪魔する向き(止める向き)」に、磁石との間で力を発生させます。これが「電磁ブレーキ」の正体です。ブランコが動こうとすると、それを止める電気が生まれ、ブレーキがかかる。動こうとする力が強いほど、ブレーキも強くなる。だから、あんなにスッと止まってしまったのです。
子供に見せても、目を丸くして「なんで!!」「手品だ!」と驚く実験です。「電気」と「磁石」と「運動」が、実はお互いに深く結びついていることが、これ以上なくドラマチックにわかる瞬間です。IHクッキングヒーターや、電車のブレーキにも使われている、この強力な「電磁ブレーキ」の原理。ぜひご自宅でもお試しくださいね。
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