時間内に成功させる!唾液とデンプン反応実験の極意」

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

中学2年生の消化に関する単元で登場する、「唾液がデンプンにどう反応するのか」を確かめる実験。やってみるとわかるのですが、これがなかなかに忙しいんです。タイマー片手にあれもこれもやらなきゃいけないし、グループで協力しないと本当に時間が足りなくなる。しかも、正確にやらないと結果が出づらくて、「結局何が起こったの?」という残念な空気が流れてしまうことも…。

そんな中、先輩のY先生からこの実験の進め方について詳しく教わる機会がありました。そこには、授業時間内にきちんと結果を出すための工夫がびっしり。実際にやってみたところ、生徒たちは「本当に色が変わった!」と驚き、しっかりと消化酵素の働きを実感してくれました。

ここでは、その工夫の数々を、授業準備の手順とともに紹介します。

準備するもの

・ 紙コップ(人数分)、試験管(班人数+2本)、ビーカー、試験管立て、試験管ばさみ(1本)、加熱器具、沸騰石、チューブののりを溶かしたデンプン溶液(直前に用意すること 50mL用意する)、
・試薬  ヨウ素液、ベネジクト液

チューブのりを水に溶かしておきます。実験の直前に行うことが必要だとのことです。

準備 100mLビーカーに40mLくらいデンプン溶液を入れて各班に渡す(10個用意)。また紙コップ(205mLの小さなもの)に水を1/4くらいいれておく(全員分)。

① 紙コップの水を口に入れて、口に含み、そのまま1分待ち、だ液と混ざった水をコップに戻す。
② 各自の試験管に、5mLくらいデンプン溶液を入れる。指2.5本分くらい。

そこに唾液を2mL入れる。(このさい指0.5本分くらいなので、)あわせて指3本になるように入れる。その後紙コップに残った唾液入りの溶液は捨てる。なお紙コップは捨てない。

③ 対象実験用に、5mLのデンプン溶液を入れた試験管(色なし)に水を2mL入れたのものを1本用意する。


④ ②と③の試験管(5本)を40度くらいのお湯にいれて(教師が10個分を用意)10分間おく(ガス給湯器を使うと楽)。


10分後

⑤ 一人一人が唾液の入った試験管から溶液を半分紙コップに戻す。

⑥ 対象実験用の水の入った試験管も半分をもう一つの試験管(色なし)に入れておく(班で1本)。

⑦ ④の紙コップに入ったものと⑤の試験管1本について、ヨウ素液をたらしてみる。


⑧ ④の試験管と、⑤の試験管1本について、ベネジクト液を少量(3〜4滴。色がわかる程度)、沸騰席2・3粒を入れます。試験管の周りを必ず拭いておく(割れるのを防ぐ)。試験管ばさみを使って熱して、色の変化を観察する。

熱する時の注意
※ 突沸がおこり、熱湯が飛び出すことがあるので、口を誰もいない方向に向けて熱すること。こちらに沸騰石をいれないで加熱した場合どうなるか?ということを動画で撮影しました。なお沸騰石をいれたとしても熱湯が飛び出ることはあります。ご注意ください。

熱していくと

このように色が変化していきます。左側はデンプン+水の場合、右側はデンプン+唾液の場合です。

班のものを写させてもらいました。人によっていろいろな色になりました。左から4本目までがそれぞれの唾液で、右側が対照実験用の試験管です。

•結果が出なかった班には「何が違ったと思う?」と問うて、変数(温度・時間・唾液の量)に注目させる
•消化酵素は熱で壊れること、特定の条件でしか働かないことを確認させると理科的な理解が深まる
•実験結果を表にして整理→考察の流れをとらせることで探究的な授業になります

◆まとめ
この実験は、「消化酵素=目に見えないけれど確かな変化をもたらす存在」ということを体感的に学べるとてもいい題材です。ただ、段取り次第で成功率も、授業の満足度も大きく変わります。Y先生から学んだ工夫はどれも生徒理解に直結するもので、今後もぜひ継続して取り入れていきたいと思いました。

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