食卓の科学!パッパ!「塩ふり」が “だるま落とし” と同じ原理ってホント?(慣性の法則)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
キッチンは実験室!塩振りに隠された「慣性の法則」
「物理なんて学校の授業だけの話」なんて思っていませんか? 実は、毎日の食事を作るキッチンこそ、科学の不思議であふれた最高の実験室なのです。例えば、料理の仕上げに塩を振るあの動作。何気なくやっているその動きの中に、かのアイザック・ニュートンが発見した「慣性の法則」が見事に隠れているのをご存知でしたか?

「動き続けたい!」塩たちの主張
料理番組などで、シェフが高い位置から塩やコショウを「パッパッ」とリズミカルに振る姿、かっこいいですよね。 実はあの動き、単なるパフォーマンスではなく、理にかなった科学の活用例なのです。スローモーションで見てみましょう。
まず、塩が入った瓶を下にサッと素早く振り下ろします。このとき、瓶も中の塩も一緒に下へ向かって加速します。次に、手首を返して瓶の動きを「ピタッ」と急停止させます。ここがポイントです! 瓶は手で止められて止まりますが、中にいる塩たちは違います。 「え?私たちはまだ下に進みたいんですけど!」 と、今まで動いていた勢いそのままに、運動を続けようとするのです。


これが、「運動している物体は、等速直線運動を続けようとする」という、慣性の法則の一つです。 その結果、下に進み続けようとした塩だけが、止まった瓶の穴から勢いよく飛び出していく……というわけですね。
つまり、塩を振る動作は、「進み続けたい塩」と「急に止まった瓶」の間に生まれる“動きのズレ”を巧みに利用していたのです。
この原理は、大工さんの道具でも使われています。カンナの刃の調整や、トンカチの頭が緩んだとき、柄(え)の底をコンコンと叩きますよね? 柄を叩いて急に止めると、重たい金属部分は「まだ下に進みたい!」と慣性で動き続けるため、勝手に奥へと食い込んで固定されるのです。
次にキッチンで塩を振るとき、「今、私は慣性の法則を操っている…!」と意識してみてください。いつもの料理が、ちょっと知的な実験タイムに変わるかもしれません。
「止まっていたい!」もうひとつの慣性の法則
さて、先ほどは「動き続けたい」という慣性のお話でしたが、実はもう一つ、対になる法則があります。 パーティーなどで見かける、食器を乗せたままテーブルクロスだけをスッと引き抜くマジック。あれも魔法ではなく科学です。
これは「静止している物体は、力を加えない限りずっと静止し続ける」という性質を利用しています。 食器たちは「ここに留まっていたい!」と思っているため、摩擦が起きないように素早くクロスを引き抜けば、食器はその場に残るのです。
お家でできる!慣性の法則・面白実験
学校の授業で定番の「だるま落とし」も、この「留まろうとする性質」を利用した遊びです。
一番下のコマを素早く弾き飛ばすと、上に乗っているコマたちは「動きたくないよ〜」とその場に留まろうとするため、ストンと真下に落ちて着地します。この「その場に留まろうとする力」をもっとダイナミックに、そして美しく観察できる実験をいくつかご紹介しましょう。
一瞬の芸術!水風船の空中分解
水風船を空中で割ったらどうなると思いますか? 中の水は、風船という「殻」がなくなっても、一瞬だけボールの形のまま空中に留まるのです!まるで時間が止まったような不思議な光景、ぜひ動画でご覧ください。
指先だるま落としに挑戦
さらに、コインとビンを使った「指先だるま落とし」もおすすめです。 ビン口に乗せたカードを弾き飛ばし、上のコインだけをビンに落とす実験です。意外と難しいのですが、コインが吸い込まれるように「ストン!」とビンの中に落ちた瞬間の快感はたまりません!
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